黒っぽい体に鮮やかなオレンジ色の嘴が特徴のムクドリです。
秋には大量の群れが電線に止まって「ギャー、ジュルジュル」と、騒音とも言える耳障りな鳴き声
発したり、電線から落下する大量の糞で車の屋根を汚されたりで、あまり印象の良くない野鳥です。
しかし農業的見ると、バッタや蛾の幼虫など、農作物にとっての害虫を主食にしていることから
人間にとって有益な役割を果たしている鳥でもあります。
5~6月がこの鳥の繁殖期で、木津川の土手や田畑では地面で昆虫などを採食している群れの
中に、巣立って間もない若鳥の姿が見られます。
画像は、上が若鳥で下が成鳥のものですが、成鳥の顔つきがどこか貧相な感じがする
のに対して、若鳥は同じ種類の鳥とは思えないほど凛々しい顔付きをしています。
江戸末期、文政年間に長崎のオランダ商館付きの医師として着任し、日本に近代医学を伝えた
シーボルトは、一方では熱心なプラントハンターでした。
彼はアジサイには特に深い関心を寄せ、植物に関する著書「日本植物誌(フローラ・ヤポニカ)」で、
日本のアジサイとして紹介していたのが、このシチダンカ(七段花)です。
ところが、明治時代に入ってもこのアジサイの所在は全くわからず、この花を見たと
いう情報や標本も存在しないことから、長い間「幻の紫陽花」と呼ばれていました。
昭和34年、神戸市立六甲山小学校の職員が、六甲山ケーブルの沿線で偶然に発見し、
採取して話題となりましたが、シーボルトがこの花を発見してから実に130年という長い歳月
を「幻の花」であり続けたのです。
この花は、その後、神戸森林植物園で挿木によって増やされ、現在では各地の庭園などに植えられています。
イチジクは城陽市の特産品の一つで、生産農家は約120軒、年間生産量は400 トンにもなります。
城陽市のイチジク栽培そのものは、70年ほどの歴史がありますが、現在のように大規模な栽培が
行われるようになったのは、国の農業構造改善事業による米の減反政策が始まった昭和46年頃からです。
転作作物として採用されたイチジクは、肥沃な土質や豊富な水などの条件が栽培に適しているのか
甘さも香りもバツグンで、完熟したものにはとろけるような味わいがあります。
さて、一口にイチジクといっても種類は日本で栽培されているものだけで約10種類ほどありますが、
城陽市で栽培されているものは、ドーフィンと呼ばれる品種が主流です。
6月に入ると葉腋に緑色の花嚢が一個ずつ付き、中には小さな花が多数入っています。
この花は雌花で、受粉しなくても熟すると夏果となりますが、秋果は人工的に他の品種の花粉を受粉させる
必要があります。しかし、一般的には雄花を付けないこの品種は夏果のみを収穫しています。
ここで収穫された夏果にも種はありますが、未受粉のため発芽はしません。
自然樹形の場合、樹高は3m以上にも伸びるので、手入れが容易で収穫量も多い樹形に剪定されています。
それが、この「一文字仕立て」と呼ばれるものです。
最初に分岐した枝を水平に誘引しておくと、芽が均等にふくイチジクの性質を利用したもので、そこから、垂直に
分岐した枝を人間の背丈ほどに揃えておくと、脚立などを使わず、楽に歩きながら摘果できるという方法です。
市内の放棄耕作地に生えていた花です。
野草の図鑑にもあまり載せられていませんが、ヨーロッパ原産の帰化植物で、ヒレハリソウという
和名が付けられています。ヒレハリソウというと馴染が薄いと思いますが、昭和40年代頃には
健康食品としてブームとなった「コンフリー」と言えば知っている人も多いのではないでしょうか。
当時は、鉄分やビタミンCがホウレンソウの5倍以上も含まれ、葉は刈り取っても短期間に次から
次へと生え出す理想的なハーブ野菜として人気がありました。
またコーカサスの長寿村ではこのコンフリーが常食され、血液の浄化や老化の抑制に結び付い
ているというような話も、実しやかに流布していたようです。
ところが、2004年6月14日、厚生労働省は、海外でこのコンフリーを摂取することが原因で
肝障害(肝静脈閉塞疾患)が起こり、肝硬変や肝不全を起こす例が多発していることを理由に
コンフリー又はこれを含む食品の摂取を控えるよう注意を呼び掛け、食品としての販売を
禁止しました。これにより、健康食品は一転して有毒植物になってしまいました。
可愛い花に纏わる悲しいエピソードです。
ヒレハリソウ (ムラサキ科 ヒレハリソウ属) 多年草 別名コンフリー
ウツギの花は西日本では既に終盤を迎えています。
この花の別名が「卯の花」であるところから、平均的な開花時期は5月ということでしょう。
さて、空木(うつぎ)の名前ですが、これは茎の中心が空洞になっている形状に由来しています。
単に「空木(うつぎ」と言えばユキノシタ科の本種を指しますが、同じユキノシタ科・ウツギ属の仲間
にはヒメウツギ、マルバウツギ、バイカウツギなどがあります。
しかし、タニウツギ、ツクバネウツギなどは、名前はウツギでもスイカズラ科に分類される植物です。
見分け方としては、花弁が合着せず、1枚1枚離れている(離弁花)ならユキノシタ科、
合着して一個の花冠を形成している(合弁花)ならスイカズラ科ということになります。
ウツギ <ユキノシタ科 ウツギ属> 落葉低木
今朝、新聞を取りに出た時の事です。
我が家の庭先の植木に”珍客”が訪れていました。
体長1㍍ほどのアオダイショウです。大きいものでは2㍍にもなるので、この蛇としては
中位のサイズだと思います。
最近、住宅地ではほとんど見かけなくなりましたが、かつては人家の天井裏や土蔵に棲みつき、
ネズミを捕食する有益な生き物として、家守(いえもり)、巳さん、などと親しみをもって呼ばれて
いました。言わば、人間とアオダイショウの間には「良い関係」が保たれていたに違いありません。
最近、見る機会が少なくなった原因としては、餌となるイエネズミがほとんど居なくなったことや
昼行性であるため、個体数を急激に増やしている天敵のカラスや、シマヘビなどによる捕食、
密閉度が高く、侵入しにくい住宅への変化などが挙げられます。
京都府のRDBでは、このような減少傾向から「要注目種」に指定しています。
アオダイショウ <ナミヘビ科 ナメラ属>
生長した個体は緑がかった褐色ですが、幼蛇はマムシに間違われやすい斑紋があります。
毒蛇マムシへの擬態かもしれません。
木登りは得意で、ネズミなどの小型哺乳類の他、鳥の卵や雛を好んで食べます。
飲み込んだ卵を割るために、高い所から落下するという話がありますが、これはどうも
眉唾ものです。
全長40㍉ほどの小型のトンボですが、体長の割には腹部の幅が広く扁平な体形をした
その名も「ハラビロトンボ」です。
特に♀の腹部は極太で、何とも愛嬌のある体形をしています。
水田地帯に多く見られますが、幼虫は他のトンボに比べて乾燥に強く、休耕田の水たまりなどで
水が干上がっても暫くは生き延びることができます。
画像の個体は♀ですが、羽化して間もない♂の成虫も初めはこれと同じ体色で、やがて黒化し
シオカラトンボのように腹部背面に青白い粉が吹き出てきます。
体色の面ではこのようにシオカラトンボによく似た特徴がありますが、シオカラトンボとは別属の
ハラビロトンボ属に分類されています。
ハラビロトンボ <トンボ目 トンボ科 ハラビロトンボ属>
公園に植栽されたハクチョウゲの花にアオモンイトトンボが翅を休めていました。
全長約30㍉、腹部の直径は約0.8㍉、正に糸のように細く、胸部側面がパステルカラーの
美しい緑色をした小型のトンボです。
もちろんトンボの仲間なので、花の蜜を吸っているわけではありません。主食は蚋(ぶよ)
などの小さな昆虫を空中で捕食して生活しています。
よく似た種類のイトトンボで、アジアイトトンボというのがいますが、腹部最後尾の3節の
色分けによって見分けることができます。
このアオモンイトトンボの場合は第8節と9節が青い色をしていていますが、アジアイトトンボ
では、第9節と10節が青い色になっています。
したがって、腹部の先端(第10節)が黒ければアオモンイトトンボ、青ければアジアイトトンボ
ということになります。
尚、♀の体色は♂と同色のものと、オレンジ色をしたものがあります。
アオモンイトトンボ <トンボ目 イトトンボ科>
正面から顔を撮ってみました。翡翠のような複眼が中々綺麗です。
ヨコヅナサシガメは、桜などの樹木の幹を棲み家にしている、カメムシの仲間です。
中国や東南アジア原産の外来昆虫で、昭和初期に九州で棲息が確認され、その後、次第に
北へ棲息域を広げ、現在では関東地方でも普通に見られるようになっています。
サシガメの名前が示すように、刺すカメムシで、桜の葉を食草にするイラガの幼虫などを捕えて、
体に長い吻口をブスリッと刺し込み、体液を吸い取る獰猛な肉食性昆虫です。
イラガの幼虫は桜の葉を食害する上、毒毛が刺さると激しい痛みや湿疹を伴う炎症を
起こすので、これを退治してくれる虫は、考え様によっては益虫ですが、不用意にこの虫に
触れて、この吻口で掌などをブスリッとやられると相当な痛みがあり、刺された人の話では
ムカデに噛まれた時より酷いそうです。
私は、子供の頃にクワガタムシを採りにいって、巣穴に潜んでいたムカデにやられたことが
ありますが、痛みは相当酷いものでした。このヨコヅナサシガメに刺されるとそれ以上の痛み
があると言いますから、くれぐれも、掌の上で歩かせて遊ぼうなどとは考えないで下さい。
ヨコヅナサシガメ <カメムシ目 サシガメ科>
吻口は、普段は二つ折になっています。
吻口を伸ばして攻撃態勢をとったところ
普段はゆっくりと移動していますが、動きの速い獲物を襲う時は意外に素早い動きを見せます。