8月頃に、直径1.5㎝位の淡黄色の花が垂れ下って咲きますが、花は雌雄異株または同株、
まれに両性花と3種類が混在しています。雌花は花の後、花床が膨らみ、球形の赤い実をつけます。
秋に赤い実を付ける植物は多いのですが、サネカズラは実の美しさから光栄なことに美男にたとえられ
「ビナンカズラ」とも呼ばれています。
サネカズラ<モクレン科 サネカズラ属> 別名 ビナンカズラ
生育には多くの水分が必要で、山の渓谷沿いや日当たりの少し悪い場所で見られます。
5~6月に淡緑色の4枚の花弁と萼片を持った花を疎らに付けますがあまり目立ちません。
(花はリンク先、wakadoriさんの「ちゃれんじゃーのひとりごと」の記事をご覧下さい)
どちらかというと花よりも美しい朔果と紅葉がこの木の見せ処です。
朔果はピンク色で、縦横とも8~10㍉のサイコロ形、熟して4つに裂けると赤い仮種皮に包まれた種子が
顔をのぞかせます。
マユミを漢字で書くと「真弓」で、この材を使って弓を作ったそうですが、普通に山で見られるものでは
それほどの太さを持ったものは見られません。
マユミ<ニシキギ科 ニシキギ属>
京都の秋を彩るイロハモミジの紅葉にはまだ早いのですが、
山では一足早くハウチワカエデの色付きが見られます。
このカエデは、名前でも分かるように、葉の形が天狗の持つ羽団扇に似ています。
また、あまり一般的ではありませんが、メイゲツカエデ(名月楓)という呼び名もあって、
これは、秋の名月の下で紅葉の落ちるのが見られるという意味から、
紅葉のライトアップが流行っている今と比べると随分優雅な観賞法です。
ところでカエデは現在「楓」という漢字が使われていますが、これは本来マンサク科の「フウ」を意味し
本種を含むカエデ科とは植物学上、全く別の植物です。
大きな違いとして、カエデ科の葉が対生するのに対して、マンサク科フウ属の葉は互生します。
にも関わらず、この字が使われるのは、葉の形が似ていることによります。
これとは別に「鶏冠木」という漢字も使われますが、これは赤く紅葉した葉をニワトリの
鶏冠に見立てたものです。
語源をさらに日本の上代まで遡ると、万葉名では「かへるで」(蛙手)で、おそらくこれが転訛して
カエデとなったものと思われます。
(参考)「我がやどに もみつかへるでみるごとに 妹をかけつつ 恋ひぬ日はなし」
大伴田村大嬢(万葉集)
ハウチワカエデ<カエデ科 カエデ属>
画像を見て、なぁ~んだ柿のヘタかと思われそうな形、
先月UPしましたツルニンジンの近況報告です。
型破りの花は果実もまた型破りでした。
花冠の筒状部分は脱落して、中央の淡紫色の5角形の部分が
花の姿の名残りを留めています。
子房は大きく膨らみ、横から見ると、全体は扁平な球形で
萼片の位置は中間のやや下から延びています(半子房下位)
コシロノセンダングサは、コセンダングサの変種で、中部以西に広く分布する北アメリカ原産の帰化植物です。
明確な違いは、コセンダングサが筒状花のみの貧相な花なのに対して、コシロノセンダングサの花が
筒状花の周りに4~6枚の白い舌状花をやや不規則に付けている点です。
この様な変異が突然変異なのか、交雑によるものなのかは不明確ですが、生息環境には明らかな違いがあり、
コセンダングサが比較的、痩せた土地に育つのに対して、コシロノセンダングサはやや肥沃な土地を
選ぶようです。
沖縄や四国の南岸にはシロノセンダングサというこれより少し大きな花を咲かせるものがありますが、
これは園芸種が逸出して野生化したものです。
コシロノセンダングサ<キク科 センダングサ属> 別名シロバナセンダングサ
やや不規則に並んだ舌状花には独特の趣があります
人知れず咲く小さな可愛い花・・・
私はこの花の持つ雰囲気と「コシロノセンダングサ」という名前の響きが好きです。
井出町野外活動センターの駐車場で見つけました。
葉の形を見ると、どうやらオトギリソウが果実になったものの様です。
果実に関心がなかった性もありますが、オトギリソウの果実を見るのはこれが初めてです。
このオトギリソウの果実をつけたまま全草を刈り取り天日で干したものは、
生薬名で小連翹(しょうれんぎょう)と呼ばれ、煎じた液には止血・鎮痛・打ち身・腫れものなどに
効果があるといわれています。
弟切草(おとぎりそう)の名の由来は、家の秘伝であった薬効のあるこの草のことを他人に
しゃべった弟を、兄が切り殺したという言い伝えによるものです
オトギリソウ<オトギリソウ科 オトギリソウ属>
キク科の植物は種類が多く、同定に山野草ファンを悩ませ、「キク科は聞くな!」などとよく言われます。
そのキク科ファミリーの一角を占める、アザミの仲間も同様で、地方固有種や変種などもあって、
同定の難しい植物のひとつです。
画像のアザミは花と葉の大きさや形、地域から見て関西以西の山地に多いヒメアザミではないかと思われます。
別名をヒメヤマアザミと呼ぶそうですが、図鑑によって「別名ナンブアザミ」と表記されているものもあります。
しかし、ナンブアザミは中部以北の変種で、私の愛用している「山渓カラー名鑑・日本の野草」では別種に
位置付けられています。
ヒメアザミ<キク科 アザミ属> 別名ヒメヤマアザミ
オミナエシ(女郎花)よりも剛強な雰囲気から、オトコエシ(男郎花)と呼ばれます。
それぞれ、「女郎花」「男郎花」の漢字が使われ始めたのは、平安時代頃からのようで、
それ以前には「美人部為」「佳人部為」などの漢字が使われていました。
いずれにしても、かなり古い時代からこれらの植物を美人・美男子に見立てた名前が与えられていたようです。
今や準希少種となったオミナエシに比べ、山野にごく普通に生えている背丈1㍍程の多年草です。
黄色い花が目立って秋の七草にも数えられるオミナエシの影に隠れて、あまり知られていませんが
純白の花が群生する姿は清楚な美しさに満ちています。
オトコエシ<オミナエシ科 オミナエシ属>
薬用植物として、解熱や利尿に効果があり、葉はお浸しや和え物にして食べるなど身近な山菜として
利用することができます。
漢名を「敗醤」と言いますが、これは花を花瓶に生けておくと腐った醤油の様な臭いが水に残る
ことによります。