この様な形を”円錐形花序”と言いますが、花冠の大きさが4㍉程の小さな花が多数集まってできています。
今回はこの個々の小さな花の様子を少し詳しく観察してみることにしましょう。
ニワトコ<スイカズラ科 ニワトコ属>

花冠の筒部は短く、先端は5深裂して反りかえっています。
雄蕊は5個あり、花のサイズからするとやや大きめの葯は、離れて眺めると花弁の様に見えます。
雌蕊は極端に短く、先端が濃紅色で少し目立ちます。萼片は5個ありますが、画像では写っていません。

この時期、山歩きで一番目に付くスミレと言えば、やはりこのタチツボスミレです。
日本全国の2000㍍以下の山岳地帯から海岸近くまで広く分布するす多年草で、韓国の済州島などを除けば
全くと言っていいほど、国外での繁殖が見られない日本の固有種です。
葉は典型的なハート型で、花は普通、淡紫色をしていますが、ピンク色に近いものなどの変異が見られます。
近似種として、コタチツボスミレやナガバノタチツボスミレなど、葉の形が多少違うものもあるようですが、
タチツボスミレも開花期と結実期では、葉の形に変化が見られるところから、見分けることは少し困難です。
タチツボスミレ<スミレ科 スミレ属>
これは木津川市加茂町の当尾の里付近の山野で自生が見られるワサビの一種です。
昔はこの辺りの農家で栽培されていたようですが、現在流通している、肥大化した根の部分
を摺りおろして使うワサビではなく、茎や葉や花を湯がいて食べる「葉ワサビ」です。
ワサビは一般に清流にしか生えず、栽培が難しいとされていますが、このワサビはやや湿った半日陰の
土壌に育つため、栽培されていた当時は畑に植えられていたそうです。
流通の変化によって、安曇野や静岡の根ワサビが主流となった現在では、市場から姿を消しましたが、
それ迄、京都や奈良でワサビと言えば、この葉ワサビであったそうです。
現在では岩船寺前の茶店で山菜として売られているぐらいで、この付近でも栽培している農家は
ほとんど無いとのことでした。
品種としては、土でも育つユリワサビなどの系統ではないかと思います。
21日は夜中から午前中にかけて、強い風が吹き荒れていました。
しかし午前9時頃には、少し風も弱まってきたので、木津川市の岩船寺界隈の
渓流へ出かけました。
足元がじめじめと湿っていて、水たまりも多いこの渓流を歩くには、登山靴よりも
膝まであるゴム長靴が便利です。
画像のショウジョウバカマは、川の中に足を漬けてしか撮れない状況でしたが
膝まであるゴム長靴のお陰で、撮影には全く問題ありませんでした。
このショウジョウバカマですが、ユリ科の多年草で、今の季節に、この様な渓流沿いや、
やや湿り気の多い林下でよく見かけ、色鮮やかな花は、この時期にはよく目立ちます。
根生葉は沢山あり、ときに古い葉が地面に着いた所から新しい苗ができるという
珍しい特性をもっています。
この葉は6月頃に咲く、同じユリ科のノギランに極めて似ているので、この花が終わってしまうと
ほとんど見分けがつきません。
ショウジョウバカマ<ユリ科 ショウジョウバカマ属>
職場近くの宇治川の土手に咲くヒメウズの花が盛りを迎えていました。
白い花弁に見えているのは萼片で長さ約5㍉ほど、花弁も5枚で、2.5ミリと目立たない小さな花です。
草丈は10㎝程で、うつむき加減の白い小さな花は清楚で可愛いものですが、少し泣かせ、
毎年撮ってはいますが、上手く撮れたという記憶はありません。
生育する土壌は礫を含む通気性の良い場所で、木の下などの半日陰の水分条件に恵まれた所が多いようです。
花後はキンポウゲ科特有の種子を稔らせますが、夏草が伸びてくる頃には、その陰で見えなくなってしまいます。
和名のウズは鳥帽(トリカブト)のことで、小さなトリカブトということです。
ヒメウズ<キンポウゲ科 ヒメウズ属>
シロバナホトケノザは2年ほど前に木津川の堤防下で一度見たことがあります。
今回、この花に出会ったのも木津川堤防の下にある茶畑の傍で、前回の発見場所から50㍍ほどの所でした。
これはホトケノザの白花変種(albiflorum)で、花に赤い色素が欠落しているだけでなく、葉や茎の色も
薄い緑色をしています。
全国各地に見られ、「シロバナホトケノザ」という正式な和名や学名もありますが、除草剤などの影響による
変異とも言われています。
しかし、木津川堤防は植生保護のため、除草剤は使われておらず、改修が行われた際にも表土を保存し
工事が終わった後には再び保存した表土を張り付けているほどです。
除草剤原因説が証明されるには、実際に除草剤を使って、使わなかったグループとの発生率の違いを
見る必要がありそうですが、今までそういった実験が行われたという話は聞いたことがありません。
シロバナホトケノザ<シソ科 オドリコソウ属>
珍しくスッキリ晴れた日曜日の今日、朝早くから滋賀県今津町弘川にあるザゼンソウの自生地へ行ってみました。
ここのザゼンソウは国内自生地の南限と言われていますが、その規模の大きさはかなりのものです。
発見されたのは1981年(昭和56年)で、地元の中学生が理科学習の野外観察時に見つけたもので、
それ以来、現在まで大切に保護されて数を増やしてきたそうです。
しかし農村都市とはいえ、少しづつ都市化が進む高島市の住宅地のすぐ傍ですから、当時はかなりの
驚きであったに違いありません。
1986年(昭和61年)には環境庁の自然環境保全基礎調査で「特定植物群落」に指定され、
現在は滋賀県環境保護条例によって、「緑化環境保全地域」となっています。
花の名は、葉がのびないうちから咲く花序を、法衣を被った僧侶が座禅を組んだ姿に見立てたもので、
外側の暗紫色の部分を仏像の光背に見立てて、仏炎苞と呼び、その中心部の棒状のものが花序です。
葉は花後に40㌢位まで伸びますが、切断すると強い悪臭を放つそうです。
またこの花は、外気温が0℃以下でも花穂の温度を20℃前後に保つために、花穂に発熱細胞と温度センサー
という、特異な機能を備えていることが知られています。
ザゼンソウ<サトイモ科 ザゼンソウ属> 別名ダルマソウ