秋が深まると新聞によくこんな写真が載せられていますが、「百舌の速贄」と
呼ばれるものです。
モズは今頃の時期になると捕えた獲物を、このように枝に突き刺したり、木の股に
挟んだりする習性があります。
これは獲物の少ない冬場に備えての保存食とも言われますが、この速贄を再びモズが
食べている姿をあまり目にしたことがありません。
また縄張り標識とする見方もありますが、この行動の目的については本当のところ
よく判っていないそうです。

里山では楓の紅葉に先立ちニシキギの葉が鮮やかに紅葉しています。
この木は紅葉が美しいことで、庭木としてもよく植えられていますが
特に園芸種ということではなく、里山などでもごく普通に生えているのが見られます。
和名の「錦木」はおそらく紅葉の際立った美しさを錦にたとえたものでしょう。
枝にコルク質の翼が発達している特徴から、葉が落ちた後も、それがニシキギで
あることがすぐに分かります。
果は約8㍉の狭倒卵形で、熟して弾けると橙赤色の仮種皮に包まれた種子が
1個顔を出します。
このような果の特徴は、同属のマユミ、ツリバナ、マサキなどに共通しています。
ニシキギ <ニシキギ科 ニシキギ属> 落葉低木
シソ科の1年草で、山道の片側だけから陽があたるような場所に生えるため、
花は片方だけを向いて咲きます。和名はその姿が薙刀に似るところから。
漢名の「香需」の「需」の字は正確には草冠が付きます。
精油成分を多く含み、葉を揉んでみると強い芳香がします。
全草を乾燥させたものは生薬名で「香需」とよばれ、精油成分によって血行を促進し、
解熱、発汗、利尿などに効果があるそうです。
※中国産の薬草、「香需」は、これとはまた別の植物だそうです。
ナギナタコウジュ <シソ科 ナギナタコウジュ属>
今年は猛暑の影響で、松茸をはじめとする、キノコ類がたいへん豊作だそうです。
当然ながら、毒キノコも豊作で、昨日のニュースではツキヨタケによる食中毒事故が
報じられていました。おそらく食用キノコのヒラタケなどと一緒に生えていたので間違って
食べてしまったものと思われます。
キノコと言えば、まず食べることが頭に浮かびますが、日本に自生するキノコは約5,000種類ぐらいあって、
その内の約10%ほどが有毒種(毒キノコ)と言われています。
まずは危険な有毒種を覚え生態や色、形を楽しむことから始めることが大切です。
キノコの専門家でもない一般人がこういった事故に逢わないためには、「自生しているキノコは食べない」
が基本で、特に初心者は観賞、観察、撮影くらいに留めるべきでしょう。
一般に書店に出ている図鑑に載っているのはせいぜい300種ぐらいなので、これを見ただけで
安易に食毒を判断するのは極めて危険なことと言わなければなりません。
ムラサキアブラシメジモドキ <フウセンダケ科 フウセンダケ属> 腐生菌
小型のキノコですが、紫色の鮮やかな、非常に美しいキノコです。里山の落ち葉の
積もった場所でよく見かける種類です。一応、食用キノコですが、これもムラサキシメジなどの
類似した有毒種が何種類かあるようです。うっかりと手は出せません。
ところでキノコはその種類にかかわらず、森の自然が豊かに再生されていく上で非常に
重要な役割をはたしています。
例えば、ここに取り上げた腐生菌や木材腐朽菌は、林に降り積もった落ち葉や、倒木を
栄養にして分解し、無機質(土)に戻す役割を担っています。
林床がきれいになるので、若木が育ちやすく、また分解の過程で発生する二酸化炭素は
森の植物の光合成を助けます。
もしキノコのこうした働きがなければ、林床は倒木や落ち葉が積もり重なるばかりで
若木の育ちにくい環境が出来上がってしまいます。
コウヤボウキはキク科の木本で、一応は樹木ですから一度咲いている場所さえ見つければ
毎年、その場所で花を咲かすので、花を探す上では比較的楽なパターンといえます。
このコウヤボウキは近くの野外活動センターにあるダム湖の周辺で咲いていたものですが、
今年は他の秋花もそうなんですが、咲き始める時期がかなり遅くなっている気がします。
時期を見計らってはくるのですが、これが3度目の正直、やっと咲いたという感じです。
頭花は本年枝の先に1個着けますが、これは13個ほどの深く5裂した筒状花を円柱形の総苞弁が
下部で束ねているような構造になっています。
筒状花の裂片は強く反り返り、まるでリボンのような可愛い雰囲気を醸し出していますが、
少しピンクがかったとはいえ、小さくて白い花は注意していないと見過ごしてしまうかも知れません。
和名は「高野箒」で、和歌山県の高野山金剛峯寺でこの枝を束ねて箒に使っていたことから。
コウヤボウキ <キク科 コウヤボウキ属> 落葉小低木
ダム湖の畔に、しゃがんで 構えていると背後にただならぬ気配が・・・
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ギャラリー?に囲まれちゃったよう・・・で.す・ね・・
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ハ~イ!ギャラリーの方達です
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失礼しましたぁ~
通称「おねだり鴨」さんでした。もうこちらがカモにされちゃいそうで~す
山地の日当たりの良い粘土質の斜面や道端に咲く、リンドウ科の2年草です。
花の雰囲気は、先日UPしました同じリンドウ科のアケボノソウと似ていますが
アケボノソウが湿り気のある日陰に生えるのに対して、センブリは明るい中湿の
地面で、他の植物との競争の少ない場所に良く生えます。
茎の高さが80㌢位にもなるアケボノソウに比べ、茎の高さは高いものでも、せいぜい
20㌢程度で、あまり高くはなりません。
低いものでは5㌢位の茎の先に花を着けているものも見られます。
古くから胃腸薬としてよく知られ、全草を乾燥させたものを煎じて服用します。
和名は「千振り」で、服用に際して苦みが強く千回振り出してもまだ苦いという
ところからきているようです。
センブリ <リンドウ科 センブリ属> 2年草
背丈が低いので、下をよく見て歩かないと見過ごしてしまいそうです。
花冠は白色で5深裂しますが、稀に4裂したものも見られます。
各裂片に紫色の縦筋がはいっているのが特徴です。
枝の先以外にも、対生する針型の葉の脇にもこのように花が着きます。
後で気づきましたが、この花冠は5裂ではなく4裂しています。
イシミカワは蔓性の1年草で、河川敷や山の道端によく生えています。
花は他のタデ科の花と同様に2.5㍉ほどの小さな花が、皿のような苞葉の上に房状に付きますが
花冠がなく、顎と蕊だけの薄緑色なので、咲いていても、ほとんど気づきません。
関心が薄かったせいもありますが、私もこの植物の花は未だ見たことがありません。
しかし秋になって果実が熟し、美しい藍色になると、にわかに目に付くようになります。
この植物の存在に気づくのも丁度その頃です。
イシミカワとは面白い名前ですが、名前の由来がよく分かりません。
漢字も「石実皮」、「石見川」、「石膠」と色々意見が分かれますが、一般によく使われ
ているのは、「石実皮」で、「皮が石のように見える実」とか説明されています。
しかし、それなら「石実皮」ではなく、「石皮実」となっていいはずなんですが・・・
イシミカワ <タデ科 イヌタデ属>
果実は、苞葉と呼ばれる丸い皿型の葉の上に房状に付きます。
藍色の皮は顎が肉質に変化したものです。
葉は三角形で、葉柄は苞葉の裏の基部から出ます。
日当たりのよい山や草地に生える1年生の寄生植物です。
発芽すると同時に蔓を伸ばし、近くに生えているキク科、マメ科などの草に絡みついて
そこから寄生根を出して寄主の植物から栄養と水分を吸収しています。
寄生することに依って栄養を採っているため、自ら光合成を行うの必要がないのか、
葉は鱗片状に退化しています。画像の花の基部に見えている葉は、寄主のヨモギの葉です。
茎は直径2㍉ほどで、茎全体に赤紫色の斑点が散らばっています。
花は茎の中間に数個が固まって付き、花冠は3.5~4㍉の釣鐘型で、先は5裂します。
これは在来種ですが、最近は茎が細くて黄色い、アメリカネナシカズラが多くなっています。
ネナシカズラ <ヒルガオ科 ネナシカズラ属> 蔓性 1年草
山麓近くの木陰に生える蔓性のリンドウです。
今の時期に低山歩きをしていて、花冠が下を向いて咲いているリンドウがあれば
ほぼこれだと思って間違いありません。
蔓性といっても、それほど長い蔓を伸ばして高い木に登るわけではありません。
せいぜい笹やツツジなどの小低木に絡む程度です。
近くに絡む手ごろな小木が無い場合は地面を這って伸びます。
花の色は基本的には淡紫色ですが、薄く赤味のかかったものや、白色に近いものなど
多少の変化がみられます。
10月末頃から熟す果実は派手な赤色をした液果で、残存する花冠の上に付き出し、
花よりむしろこちらの方が目立ちます。
ツルリンドウ <リンドウ科 ツルリンドウ属> 蔓性 多年草
最初は雄蕊は開いていて、雌蕊の柱頭は2つに分かれゼンマイ状に巻いています。
雄蕊はこの後、閉じてきて雌蕊に接し、花粉をつけます。
これは最初に自家受粉を避けながらも、昆虫による受粉ができない場合、最終的に自家受粉での
結実を可能にするリンドウ科に特有のシステムです。
葉は対生する卵状披針形で、3脈が深くて目立ちます。
山道や沢沿いの湿った場所に生えるリンドウ科の2年草です。
私の所では毎年、隣町にある野外活動センターのダム湖の外周で見られますが、
これが今年は少し残念なことになりました。
先週末にその花が開花し始めたので、2~3日様子を見ようと思っていました。
しかし日曜日にいざその場所に行ってみると、80㌢ほどある茎の中間から全て切り取られて
しまっているのです。
おそらくは山野草や自然保護などに全く関心のない人の行為だろうと思いますが、
山野草の持ち去りが、野外活動のマナーに反することぐらいは社会通念上、誰もが
分かっていて当然のことだと思います。知らないで済まされることではないでしょう。
もちろん、この場所は国立公園ではないので、法律的に植物の採取は禁止されてはいませんが
ルールがないからといって、基本的なマナーを守らない人がいるのは全く困ったものです。
今回、幸いなことに、外周を外れた沢筋のものは被害を受けていませんでした。
アケボノソウ <リンドウ科 センブリ属> 2年草
茎は直立して枝分かれし、高さ50~80㌢になります。茎の先に枝を分けて、有柄の白い花を
咲かせます。花冠は深く5裂しますが、稀に4裂のものも見られます。
遠目には目立たない白い花ですが、各裂片には黄色い蜜腺が2個と、濃紫色の斑点が多数あります。
和名は「曙草」で、黄色い蜜腺を夜明けの月に、濃紫色の斑点を星に見立てたものです。
葉は対生し、卵状楕円形で先は尖ります。いかにもリンドウ科らしい雰囲気の葉です。