ヤマアイは日本最古の染料植物で、「藍」の名前はありますが、タデ科のアイのような藍色の色素
インディゴを含んでいません。
しかし採取したものを乾燥させておくと青色が濃くなってきます。この性質を利用して、絞り汁を
青色の染料として使っていたものと思われます。
当時の染色法は、摺り染めと言われるもので、ヤマアイを使った青摺りの衣で知られるものに
大嘗祭などの神事に使われた小忌衣(おみごろも)があります。
当時の染色技術の詳しいことは知りませんが、この深みのある緑の葉を見ていると、
どこか万葉集や源氏物語など古代ロマンに通じるものを感じさせられます。
ヤマアイ<トウダイグサ科 ヤマアイ属>
雌雄異株で、画像は雄花です。萼片と花弁が夫々3枚づつ、雄蕊は多数あります。
雌株は雄株に比べて地味な形をしている上、数も少ないので残念ながら今日は確認できませんでした。
セツブンソウはその可憐な姿から人気が高く、乱獲が進んだ結果、環境省のレッドデーターブックで
絶滅危惧種(VU)とされてきましたが、現在では準絶滅危惧種(NT)に格下げ?されているようです。
しかし何れにしても貴重な山野草の希少種であることには変わりありません。
可愛い山野草を見て、持ち帰りたい気持ちは分からないでもありませんが、山野草はそれに出会うために
フィールドに出かけ、豊かな自然の風景の一つとして見なければ何の意味も無いのではないでしょうか。
このセツブンソウは少し遅いのですが、名前は旧暦の節分頃から寒さを凌いで咲き始めることから、
この名前が付けられています。
落葉広葉樹の林下に小群落を作って咲きますが、白い花弁に見えているのは萼で、黄色い雄蕊の様な
形をしているのが退化した花弁で、蜜腺になっています。
その内側に多数あるのが雄蕊で、葯は淡紫色、雌蕊は2~5個位の複数があります。
セツブンソウ<キンポウゲ科 セツブンソウ属>
川堤の少し日陰になった場所ではヒメオドリコソウの花が咲き始めました。
オドリコソウを縮めたような形からこの名が付けられたそうですが、どちらかというとホトケノザによく似ています。
花はホトケノザが頭頂部から立ち上がるように咲くのに対し、ヒメオドリコソウの花は頭頂部には付かず
その下の葉陰から外を覗くような咲き方で、生息環境もホトケノザが明るく日差しの良い所に咲くのに対し、
ヒメオドリコソウは半日陰に繁殖します。
ヨーロッパ原産の帰化植物で、日本では明治26年に東京の駒場で最初に発見されたのを皮切りに
関東甲信越地方の河川域を中心に広がって雑草化し、最近では私の住んでいる京都府の南部などでも
普通に見られるようになりました。
画像のように上部の葉が紅紫色に染まることが特徴で、花よりも葉の美しさに目を奪われます。
このヒメオドリコソウやホトケノザは「蟻散布植物」と言われるもので、
種子を拡散するのに、蟻に種子を巣まで運ばせるという少し変わった生態をもっています。
種子には蟻の好む脂肪酸や糖類などを含むエライオソームと呼ばれる物質が付着していて、蟻はこの物質に誘引
されて集まり、種子ごと巣まで持って帰ります。
蟻は巣に持ち帰った種子の内、エライオソームだけを食べ、種は不要なゴミとして巣の外へ排出するので
種子の拡散という植物の目的はここで達成されるわけです。
ヒメオドリコソウ<シソ科 オドリコソウ属> 帰化植物 一年草
今日は少し暑いぐらいのバカ陽気の一日、
職場の昼休み、すぐ近くにある宇治川堤を覗いてみました。
セイヨウカラシナの花がたくさん咲いて、かなり春めいた雰囲気が漂っています。
この花は遠目には、菜の花と呼ばれるアブラナとよく似ていますが、アブラナほど
太く柔らかい茎や、縮れた豊かな葉もありません。言ってみれば菜の花モドキです。
しかし、このセイヨウカラシナも様々なアブラナ科の野菜などと何代にも渡って複雑な交雑を繰り返した交雑種で
正確に言えば「セイヨウカラシナを母種とする交雑種」なのです。したがって葉の形や花の付きかたなどは
個体によってまちまちで、とんでもない交雑種もみられます。下の画像のものは近くで栽培されているアブラナと
よく似た特徴を備えた個体です。
アブラナ科の植物は開花直前から自家受粉や、同じ種類からの受精を抑制する物質が現れるため
同じ種属間では種ができにくいのです。この性質を植物学用語で自家不和合性と呼んでいます。
このため自然界ではどんどん交雑が進んでいきますが、野菜の人工交配では2種類の親品種を隔離された場所で
並べておけば、確実に交配品種を作ることができます。
しかしここで1つの疑問が出てきます。親品種のどちらにも自家不和合性があるのに、
どうして親品種の種が採れるのか?
これには当然ながら裏技があります。
タネ明かしをしますと、自家不和合性は開花直前に現れるので、それ以前の蕾を先の尖ったピンセットで開いて
蕾の中の雌蕊に開花した花の花粉を受粉させれば交配に必要な親品種の種採りができます。
ただし、これは大変な人手を要する作業で、これからの季節に種苗会社では研修中の新入社員や
アルバイターなどを総動員しています。
この作業は交雑を防止するため、ビニールハウスの側面が細かい網になった網室と呼ばれる施設の中で行われます。
こちらは近くで生花用に畑で栽培されているアブラナです。ここでもセイヨウカラシナとの交雑があり
栽培に苦労されているとのことでした
上から見下ろすと全く目立たず、見過ごしてしまいます。
花の数もジンチョウゲやミツマタに比べて少なく、葉腋に5~6個といったところです。
雌雄異株で、雄花は雌花よりやや大きいそうですが、単独ではよく分かりません。
果実は長さ約8㍉の長楕円形でクコの実に似ていますが、辛くて弱い毒性があります。
オニシバリの名は樹皮が丈夫で鬼でも縛れるだろうという意味から、
夏に落葉するところからナツボウズの別名もあります。
オニシバリ<ジンチョウゲ科 ジンチョウゲ属>
早春の明るい落葉樹林で、束の間の陽光を浴び、1㌢程の小さな白い花を咲かせるオウレンです。
薬用植物として知られるオウレンは葉の形から、何種類かに分類されています。
これは葉の形が菊に似たキクバオウレンと呼ばれるものだと思いますが、花のよく似たもので
多くの小葉に分かれたセリのような葉を持つセリバオウレンもあり、花だけでは見分けは難しいようです。
ここでは間違いを避けるため、2種をまとめてオウレンとしました。
この花もキンポウゲ科なので、外側の白い花弁に見えているのは当然、花弁ではなく萼ということになります。
花には雄花と両性花があり、多くの植物図鑑では、雌雄異株とされていますが、稀に雄花と両性花が
同じ株に花を付けるケースもあるので、雌雄異株とは断定できません。
オウレン<キンポウゲ科 オウレン属>
雄蕊だけを持つ雄花、全体が真っ白に見えます。
一般に雌花と呼ばれる両性花、中心の赤いのが雌蕊で既に熟しています
淡路島には灘黒岩水仙卿という有名な水仙の名所があります。
伝えられているところによりますと、今から180年ほど前、付近の漁民が漂着した球根を
海に面した斜面に植えたところ、どんどん繁殖して現在のように500万株にも及ぶ大群生地
が出来上がったそうです。
しかしこんな特殊な例を除けば、一般的に暖地の海岸や河原で、多少野生化したものが見られるものの
真の自生ではなく、広く普及した栽培種の逸出と考えられます。
原産地はヨーロッパの地中海地方から北アフリカにかけての地域で、ニホンズイセンと呼ばれるものの起源は
これが14~15世紀頃中国から園芸種として輸入されたとする説と、海流に乗って漂着したものが
沿岸住民によって育てられたとする説があります。
植物性ウイルスなどによって芽条変異をおこし易く、それが好ましい変異であるものは残され
我が国でも様々な古典的園芸品種が生まれました。
画像の八重咲き水仙なども、そういった突然変異によって生まれたもので
花弁の形状からは、ニホンズイセンの特徴を多く残しています。
冬眠中らしいのですが、頭隠して尻かくさずの状態・・・
落ち葉を除けて見ると、何とも奇妙な姿の昆虫が現れました。
ヒメツチハンミョウです。体長約25㍉、全身は艶のある黒藍色で、腹部は丸くて大きく膨れた甲虫です。
頭部と胸部は蟻にそっくりの形をしているので、アリガタハネカクシの一種と勘違いしやすいのですが
これが実は全く別種のツチハンミョウ科(ハンミョウ科とは別)に属する甲虫です。
この仲間は翅は退化していて、地表をうろついていることが多く、越冬した雌は春先に土中に大量の卵を
まとめて産み付けます。
孵化した幼虫はノアザミなどの茎をよじ登って花に辿りつき、吸密に訪れるハナバチ類の毛につかまって
その巣に運ばれます。ハナバチの巣に入った幼虫は、ハナバチの卵や貯蔵された蜂蜜などを食べて育ちます。
関節部から分泌する体液にはカンタリジンという猛毒物質が含まれ、皮膚に付くと激しい炎症を起こすので
手で触れる場合は特に慎重に対処する必要がありそうです。
ヒメツチハンミョウ<甲虫目 カブトムシ亜目 ツチハンミョウ科>
前翅の長さが腹部の半分位、一見はハネカクシの仲間に似ています。
頭部と胸部は蟻にそっくりです。
指で軽く突っつくと死んだふりをすることもあります。
今日の花は、ムラサキ科キュウリグサ属のキュウリグサです。
花の大きさは直径3㍉ほどの極小花、ワスレナグサとそっくりな形をしていますが、ワスレナグサも
ムラサキ科の花なので当然と言えば当然です。
麦作の伝来と共に我が国に帰化したと考えられる史前帰化植物の1つです。
和名の由来は、葉を揉むと胡瓜によく似た香りがすることから、同じムラサキ科の植物で
ハナイバナがありますが、こちらは揉んでもこの香りがしません。
また花の中心部に少し目立った黄色いリング状の部分があるのも、キュウリグサと
ハナイバナを見分ける重要なポイントです。
キュウリグサ<ムラサキ科 キュウリグサ属> 2年草
拡大して見ると、葯は5本、雌蕊は短いのか、この画像では見えていません
今年はこの日が日曜日になったので、少し早目に義理チョコを頂きました。
では今日の画像は、そのチョコをUP・・・ではありません。
これはムクロジ科で蔓性の一年草、フウセンカズラの種子です。
中心にくっきりとハートマークが見えています。
もう少し大きくしてみました。偶然とはいうものの見事なハートです
早春に咲く野の花はどれもが取るに足りないような小さなものばかり・・・
このタネツケバナも、そんな花の1つです。
タネツケバナ<アブラナ科 タネツケバナ属>
春になって苗代に蒔く種籾を水に漬ける頃に咲く花ということで、
タネツケバナと呼ばれています。
昔は農作業をする上で、この花は大切な花暦にもなっていた様です。
しかし、最近は気候変化で1月の中旬位から咲いている所が多いようです。
マクロで大きく撮っていますが、実際の花の大きさは3~5㍉の極小花です。
棒状の部分は種子の入った鞘
この水掻きを付けたような葉が特徴ですが、これが単葉か複葉かというのが議論されています。
羽状複葉とか、複葉の様な単葉とか見る図鑑によって少し違った表示がされています。
花はアブラナ科に共通する4枚花弁の十字状花で、一株で10~20個の花が次々開きます。
1つの花に対して、雌蕊が1本と雄蕊が4本が見られます。
種子の入った鞘を割ってみました。この鞘も実際の太さは0.8㍉程度です。
今では全国的に分布するありふれた雑草なので、ほとんどの方はご存じだと思います。
花冠は瑠璃色で、中々美しい花です。
今日はこの花の肉眼では中々見にくい部分までクローズアップしてみました。
オオイヌノフグリ<ゴマノハグサ科 クワガタソウ属> ヨーロッパ原産 帰化植物
花弁が4枚で、中に雌蕊が1本と雄蕊が2本あります。この花は一日花で、夕方には花を閉じ、地面に落下しますが、
開花している間に昆虫などによる受粉ができない場合は、自家受粉で種子をつくる事も可能です。
花冠のさらに奥まで進むと繊毛状の細毛が中心に向かって生えてているのが分かります。
中国原産の栽培種で、日本に渡来したのは古く平安時代です。
この時代から庭木として広く植栽され、九州地方の一部で野生化したものがあるそうですが、
普通は自生しません。
花は普通、梅と同じ頃に咲きますが、早咲きの寒木瓜は11月頃から咲き始めます。
果実は9~10月頃に熟し、食べると甘酸っぱい味がしますが、熟する前のものは梅酒の様に
ホワイトリカーに漬け込み、薬膳酒「木瓜酒」を作ることもできます。
効能としては、風邪を引いた時の咽喉の炎症を和らげるのに効果があるそうです。
味の方はカリン酒に比べると今一つです。
名前の由来は果実の形が瓜に似ていることから、語呂の悪い「ボケ」は、もっか→もけ→ぼけ、
と訛化したというのが有力ですが、本当のところはよく分かっていません。
ボケ<バラ科 ボケ属> 落葉低木・栽培種
ハコベは何処でも普通に咲いているので、特に珍しい花ではありません。
言ってみれば、ほとんどの人が知っているごくありふれた花です。
今日は一般的には道端の雑草と思われている、このハコベを少し詳しく見ることにします。
画像で見て頂いていますハコベはミドリハコベという種類です。
コハコベと共によく見られる種類で、この2種を総称して単にハコベと呼ばれる場合もありますが、
コハコベは茎が少し紫色をしているうえ、萼の長さが花弁と同じ位長い等、別種であるのは明らかです。
肉眼では見にくいのですが、花柱は3本、雄蕊は4~7本位あります。
全体に大型のウシハコベというのも見かけますが、こちらは花柱が5本あることで見分けられます。
ハコベの仲間には、この他、山地で見られるミヤマハコベ、イワツメグサや高山帯で見られる
シコタンハコベなどがあります。
ミドリハコベ<ナデシコ科 ハコベ属>
花弁は、一見10枚有るようにみえますが、よく見ると深く2裂したものが5弁であることが分かります。
再びシダを探しての山歩きをしています。
種類は色々見られますが、さて名前は?となるとシダに限ったことではありませんが、
これが中々大変なんです。
複数の図鑑サイトから検索していますが、慣れない素人の私にはどのシダも同じように見えてしまいます。
同定には、慎重に特徴を比較しながら気の遠くなりそうな作業が続きます。
要はやる気と根気・・・なんちゃって
もし名前が間違っていたらこっそり教えてくださいね(笑)
ノキシノブ<ウラボシ科 ノキシノブ属>
とてもなじみ深いシダです。平地でも古木や廃屋の屋根に着生しているのを見かけます。
ヒメノキシノブやミヤマノキシノブなどもありますが、低山で見るものは本種が多いようです。
ヒカゲノカズラ<ヒカゲノカズラ科 ヒカゲノカズラ属>
お寿司屋さんのネタ箱を飾るのに使われることがあります。
トラノオシダ<チャセンシダ科 チャセンシダ属>
比較的に明るい石崖などに生えています。チャセンシダに似ていますが、中軸が緑色をしています。
チャセンシダは中軸が黒くなっています。
ノコギリシダ<イワデンタ科 ヘラシダ属>
名前が示すように、鋭い鋸歯が規則正しく並んだ、端正でカッコいいシダです。
イブキシダ<ヒメシダ科 ヒメシダ属>
ケブカフモトシダ<コバノイシカグマ科 フモトシダ属>
PART2からの移動です。前回、同定に至りませんでしたが、種名が判明しました。