フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

Pierre Pachet << L'amour dans le temps >> (1)

2009年06月10日 | Weblog
 [注釈]

 * Disgra^ce : コーツィのこの作品は読んだことがないので、『愛を失う』というタイトルはほんの仮のものに過ぎません。
 * ce que le chagrin avait mis en mouvement : 「悲しみが姿を変えたもの」すぐあとには、une e’trange transmutation と言い換えられています。
 * les habitudes et une paralysie : habitudes との関係からいうと、une paralysie は「倦怠」としてもいいかもしれません。
 * ce sentiment nouveau n’est pas plus fort pour moi que le sentiment me^me de ce que je suis : ne...pas plus que に気をつけて下さい。ex. Il n’est pas plus bavard qu’avant.「彼は昔と変わらず無口だ」le sentiment me^me de ce que je suis 「自分が何ものであるかというという感覚」
 * qui donne la mesure insatialbe de... : mesure は、grandeur や valeur のことですから、ここでは「(欲望の)深さ」となるでしょうか。

 [試訳]

 ピエール・パシェ『時の中の愛』
 愛 / 悲しみ
 
 私が親しくなった女たちはそれぞれに、この自分について何かを教えてくれた。その意味で、彼女たちのおかげで私はましな男になれたのだ。J.M. コーツィ『愛を失う』

 ここのところ、と彼は考えた。何度も、強くこんな気がしてならない。私に生気を吹き込んでいるエロスの力は、姿を変えた悲しみの後を追わせているだけではないのか。悲しみは今でも疼き、くすぶっているのだ、と。けれどもこの奇妙な変化(それを観察し、理解したいのだが ) によって、悲しみは、無関心や無気力や感覚の麻痺ではなく、生きようとする、女性の気を引こうとする、この身を捧げようとする力強い意欲を育んでいる。

 一人の女性と長年生活をともにし、からだの、思考の、深い信頼の絆( 習慣や倦怠によってそうした絆が、それでも弱まることはある。それについては後に話すことにしたい)によって強く彼女と結ばれていた私は、その死に揺すぶられた。以来、枯れることのない井戸のように、いつもふとしたことで悲しみは呼び起こされる。私は思う。この新しい感情は( あるいは形と方向を変えた古くからの感情 )、私が何ものであるかという感覚と同じように強いものではなく、日々の、気分の、さまざまな仕事のどんな変化にも従うものではないだろうか。
 私を今支配し、私の生きる意欲の、あらたな対象に向かおうとする欲望の果てしなさを示しているのが、このあらたな感情の強さであるのだろう。
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 生まれて初めて、薬を長期にわたって(といっても2週間ほどですが)、服用していますが、肩の痛みは無くなりません。どうも長期戦になりそうです。みなさん、労りのお言葉ありがとうございます。
 ウィルさんの外国語学習意欲は見習わなければなりませんね。ぼくは、ドイツ語をはじめなければと思いはじめてもう何年経つでしょうか。耄碌し始める前には実行に移さなければなりません。いつか洗濯物を干しながらリートなどを口ずさみたいものです。
 さて、次回は、s'ajustaient trop exactement. までとしましょう。
 smarcel