[注釈]
* … passion du vide : ここの de は、「動作名詞の補語」というやつで amour de la patrie 「祖国への愛」, crainte de la mort 「死への恐怖」などの用例があります。
* Peut-e^tre l’expression (...) de ce qui n’avait jamais cesse’ (...) de le tourmenter というつながり方をしっかり読み取って下さい。
* Son attention n’e’tait-ce pas la me^me disponibilite’ vide... : 妻の喪失を埋め合わせるように女性に気を惹かれるのも、passion du vide のなせる業ではないのか、と自問しているのです。また、disponibilite’ の形容詞形 disponible には libre の意味があることにも注意して下さい。。ex. Si vous e^tes disponible samedie prochain, venez nous rendre visite.
* rien n’e’tait plus oppose’ que l’uniformite’ (...) et la singularite’ …? : 「…以上に~のものはない」という、意味の上では最上級表現となる比較級です。ex. Rien n’est plus fascinant que ce passage. それから、une vie (...) qui n’avait jamais cesse’ d’e^tre attaque’e par la conscience du rien とあるように、uniformite’ とは、生涯を通じてどこまでも虚無の意識に囚われることです。こうした内面のあり方と、一回一回が特別な出来事である、女性たちとの出会いは、なるほど両立しがたいものでしょう。
[試訳]
あらたな感情、あるいは昔からの感情。あらたな感情というのは、それが喪失の大きさと結びついているものであるからと言えるだろうか。こんなにも身近な、近しいという以上のものを失って、私は当然のことながら自身の核の一部を失ってしまったのだろう。その自身の一部をもう一度見つけ出そうとしながら、それを私に返してくれる、それを再び蘇らせてくれる人を、私は求めているのかもしれない。けれども昔から馴染みの感情ということも出来る。妻を失うことによって、それ以前からあった情念がより感じられるようになったのだろうから。結婚生活もその情念を満たすことはなかった。ただそれで情念の炎は小さくなりはしたけれど。どんな情念というのだろうか。
一種空虚な情念、虚無を求める情念。この身を飲み込んでしまうような、いきいきとした情熱の見かけをしながらも、それは憂愁という装いで自分を苦しめ続けて来たものの表れではないであろうか、と彼は考えた。それはつまり、内面の虚無を、自分に係り、重くのしかかり、自分の命を脅かして来た虚無を見通してしまったのだ。通りがかりの女性に度々気をとられる。彼女たちの魅力が自分に呼びかけ、自分とは無関係とは思えないのも、その同じ虚無が、自由になり、目覚め、あれこれの気掛かりに捧げられた一生の最期に戻って来たのではないだろうか。実は生涯、虚無の意識によって苛まれ続けていたのだ。奇妙な考えだろう。天候次第でしばしば閉じ込められていた憂愁が絶望的に常に広がっていたと考えることと、出会った魅力的な女性のひとり一人の姿、顔かたちが、それぞれににこやかで、ひとつひとつが思いがけなかったこととは、まったく両立しないのではないか。けれども、まさにこのこと二つながらに、余りに見事に呼応し、正確に重なり合うのだった。
…………………………………………………………………………..
明子さんの言うように、抽象化された名詞表現を、文脈に沿ってどこまで具体的に読めるか、がこうした文章理解のポイントとなります。試訳を読んでもらった上でまた質問などあれば遠慮なく書き込んで下さい。
次回は、seuls les re^ves savant entrouvrir. までとしましょう。
smarcel
* … passion du vide : ここの de は、「動作名詞の補語」というやつで amour de la patrie 「祖国への愛」, crainte de la mort 「死への恐怖」などの用例があります。
* Peut-e^tre l’expression (...) de ce qui n’avait jamais cesse’ (...) de le tourmenter というつながり方をしっかり読み取って下さい。
* Son attention n’e’tait-ce pas la me^me disponibilite’ vide... : 妻の喪失を埋め合わせるように女性に気を惹かれるのも、passion du vide のなせる業ではないのか、と自問しているのです。また、disponibilite’ の形容詞形 disponible には libre の意味があることにも注意して下さい。。ex. Si vous e^tes disponible samedie prochain, venez nous rendre visite.
* rien n’e’tait plus oppose’ que l’uniformite’ (...) et la singularite’ …? : 「…以上に~のものはない」という、意味の上では最上級表現となる比較級です。ex. Rien n’est plus fascinant que ce passage. それから、une vie (...) qui n’avait jamais cesse’ d’e^tre attaque’e par la conscience du rien とあるように、uniformite’ とは、生涯を通じてどこまでも虚無の意識に囚われることです。こうした内面のあり方と、一回一回が特別な出来事である、女性たちとの出会いは、なるほど両立しがたいものでしょう。
[試訳]
あらたな感情、あるいは昔からの感情。あらたな感情というのは、それが喪失の大きさと結びついているものであるからと言えるだろうか。こんなにも身近な、近しいという以上のものを失って、私は当然のことながら自身の核の一部を失ってしまったのだろう。その自身の一部をもう一度見つけ出そうとしながら、それを私に返してくれる、それを再び蘇らせてくれる人を、私は求めているのかもしれない。けれども昔から馴染みの感情ということも出来る。妻を失うことによって、それ以前からあった情念がより感じられるようになったのだろうから。結婚生活もその情念を満たすことはなかった。ただそれで情念の炎は小さくなりはしたけれど。どんな情念というのだろうか。
一種空虚な情念、虚無を求める情念。この身を飲み込んでしまうような、いきいきとした情熱の見かけをしながらも、それは憂愁という装いで自分を苦しめ続けて来たものの表れではないであろうか、と彼は考えた。それはつまり、内面の虚無を、自分に係り、重くのしかかり、自分の命を脅かして来た虚無を見通してしまったのだ。通りがかりの女性に度々気をとられる。彼女たちの魅力が自分に呼びかけ、自分とは無関係とは思えないのも、その同じ虚無が、自由になり、目覚め、あれこれの気掛かりに捧げられた一生の最期に戻って来たのではないだろうか。実は生涯、虚無の意識によって苛まれ続けていたのだ。奇妙な考えだろう。天候次第でしばしば閉じ込められていた憂愁が絶望的に常に広がっていたと考えることと、出会った魅力的な女性のひとり一人の姿、顔かたちが、それぞれににこやかで、ひとつひとつが思いがけなかったこととは、まったく両立しないのではないか。けれども、まさにこのこと二つながらに、余りに見事に呼応し、正確に重なり合うのだった。
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明子さんの言うように、抽象化された名詞表現を、文脈に沿ってどこまで具体的に読めるか、がこうした文章理解のポイントとなります。試訳を読んでもらった上でまた質問などあれば遠慮なく書き込んで下さい。
次回は、seuls les re^ves savant entrouvrir. までとしましょう。
smarcel