見える大きさは見る距離で変わる

2005年09月16日 | メンタル・ヘルス

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 さて、ここまでで、自分に事実ある能力と長所・価値をちゃんと認めるというワークをやってきました。

 これで、かなり自己承認=自信がついてきたのではないかと思います。

しかし、それでもまだ「確かに少しくらいならできることやいいところはあるけど、大したことないし、そんなことで自信を持ったら、なんか独りよがりみたいでカッコ悪いじゃないか?」と思っている方もいるかもしれません。

 ここまで来たら、「独りよがりではいけない」とか「カッコ悪い」とかいうのは、「走らなきゃ車じゃない。スタンドで給油のために停まっていたり、修理のために工場に入ったりするのは許されない」といっているのに似ていると気づいていただけますね?

 それでもまだ、「少しくらいなら……あるけど、大したことない」という気分は残るかもしれません。

 もう一つ、そういう気分を解消する技をやってみましょう。これは、「わざ」です。

 「十円玉のワーク」といいますが、まず、手元に十円玉を用意してください。

 それを右手の親指を人差し指ではさんで、左目を閉じて、右目で見てください。

 まず、30センチくらいの距離で、その大きさをよく感じてみましょう。

 それからゆっくりとひじを伸ばして目から離していきます。

 さあ、見える大きさはどうなったでしょう? 当然、小さくなりましたね。

 でも、それは小さくなったんですか?

 そうではありませんね。見え方が小さくなっただけで、実際の大きさは変わっていないんですよね?

 でも、小さくなったように見えた。

 さあ、勘のいいみなさんは、もうわかってきたかもしれませんが、「考えるとするとでは大違い」なのです。

 続けてやってみましょう。

 今度は十円玉をゆっくりと目に近づけていきます。

 十円玉は、どんどん大きく見えてきますね。

 目のそばまで持ってくると、まるで世界が十円玉でいっぱいのような気がしてきます。

 つまり「視界」がいっぱいになると「世界」がそれでいっぱいのような気がする、というのが人間の視覚の法則です。

 そして、心にもその法則はほとんどそのまま当てはまるのです。

 さあ、直観力や洞察力のあるみなさん、このワークは何を目指しているのでしょう。

 そうです。自分の能力や長所を集中的に見て、自分にはものすごく大きな――まるで世界中(つまり視界)いっぱいになるくらいの能力と長所がある、という気持ちになることを目指しているのです。

 でも、たくさんの人がこの逆をやっています。

 自分のできないことやダメなところに目を集中して、その結果、当然ながら落ち込んでいるのです。

 とても損なことをしていますね。

 気持ちはよくわかります。私もかつてやっていましたから。

 でも、考えて見ましょう。

 いいところに目を向けているのと、悪いところに目を向けているのと、どちらが元気になりますか?

 いいところですよね。

 では、元気があるのと元気がないのと、どちらが悪いところを改善できる可能性が大きくなりますか?

 もちろん、元気があるほうですね。

 では、「視界」がいっぱいになると「世界」がそれでいっぱいのような気がする、というのが人間の視覚の法則です。

 では、まず自分の能力や長所を集中的に見て、自分を認め、ほめてあげて、元気になって、その後で、もし余力ができたら、悪いところも改善することにしませんか?

 フルスピードで走るのは、ガソリンを入れてからにしよう!

 これは、何千人もの若者や社会人を指導してきて、ほぼ90%以上の確率で、有効だと思う手順です。

 たまに、自分の悪いところを集中的に見て、「オレはダメだ、ダメだ」とネガティヴなセルフ・トークを連発して、それで自分を叱咤激励して奮起する人もいますが(このタイプも昔は割に多かったのですが)、時間と労力の点から見て、あまり効率的ではないようです。

 なので、よかったら、まず自分の能力や長所を発見して、評価して、自分に絶賛のセルフ・トークをしてあげてみませんか? 

 「すごい! おまえはすごくがんばってる! おまえの努力はすばらしいぞ!」といったふうに。

 もちろん、叱咤激励が効く方は、それでやっていただいてけっこうです。