「持続可能な国づくりの会」のメンバーとの読書会のために岡沢憲芙『スウェーデンの挑戦』(岩波新書)を読み直しています。
これは1991年に出た本で、「スウェーデン神話」について、こう書かれていますが、これは「神話」というより、15年以上たった今もほとんどの項目が「事実」であるようです(うらやましい! *項目ごとの改行と、←の後のコメントは筆者です)。
「戦後、特に六〇年代以後、国外で熱っぽく語り継がれてきたスウェーデン神話を構成しているのは、例えば次のような印象である。
①市民の生活水準が世界でも最も高い国の一つらしい。
②胎児から墓場まで手厚い社会福祉が完備した豊かな福祉国家らしい。
③超福祉国家でありながら国際競争力を持つ優良企業があり、安定成長が続いているらしい。
④労働紛争の少ない平和的・協調的な労働市場があり、労働者の権利が手厚く保証されているらしい。
⑤積極的な労働市場政策で産業構造の転換がスムーズに行われるので、企業の国際競争力が高いばかりでなく、失業者も少ないらしい。 ←失業率はやや高くなっていて、それが昨年秋、社民党が政権を失った主な原因らしい。
⑥慎重審議を基礎にした合意形成優先の妥協政治が定着しているので、意思決定過程に暴力が入り込む余地はないらしい。
⑦分配過程は社会主義的平等原理で貫かれており、すべての市民が同じ生活水準を享受できるらしい。
⑧言論・集会・結社の自由をはじめあらゆる自由が保証されている自由の国らしい。
⑨非同盟・中立主義の平和国家で、国際政治の場では常に民族自決権を支持し、小国の利益を擁護する反覇権主義の国であるらしい。 ←非同盟・中立主義はEUへの加盟によって変わったが、依然として反覇権主義という点では一貫しているらしい。」
そして、『スウェーデンに学ぶ「持続可能な社会」』(小澤徳太郎、朝日選書)によれば、こうした「福祉国家」を確立した上に、
⑩世界でもっとも「持続可能な社会・緑の福祉国家」に近づいている、しかも政府主導で意図的・計画的に近づいている国らしい、のです。
この本では、なぜスウェーデンではそういうこと――「経済大国」ではなく「生活大国」――が可能になったのか、歴史的なプロセスがわかりやすく書かれています。
読んでいると、同時に、なぜ戦後日本は、「生活大国」ではなく「経済大国」を目指し、いちおう成功したかに見えた後、「バブル崩壊」から「失われた10年」を経て「格差社会」=持続不可能な社会に向かいつつあるのか、わかってくるような気がします。
そこで決定的なのは、残念ながらリーダーの英知の差だと感じます。
さて、4月7日、新聞には、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書の記事がありました。
ごく一部、近未来予測を拾ってみると、
2020年代(気温上昇幅 0.5~1.2度程度)
・ 数億人が水不足による被害にさらされる
・ サンゴ礁の白化現象が広がる
・ 生き物の生息域が変化し、森林火災の危険性が増す
・ 洪水と暴風雨の被害が増える
・ 栄養不足、下痢、呼吸器疾患、感染症による負担が増える
・ 熱波、洪水、干ばつにより病気になったり、死亡したりする確率が増える
・ 感染症を媒介する生物の分布が変わる
・ 北米では、河川の流量が減り、現在のような水需要は満たせなくなる
2050年代、2080年代とさらに深刻になっていくことが予想されています。
被害を最小限にとどめるには、最大限の努力が必要で、それには「経済大国」「経済成長」という社会の方向性を根本的に転換する必要があると思われます。
地球全体はそういう状況にあるといわれているのですが、昨日8日に投票があった第16回統一地方選挙の前半の状況を見ていると、こうした予測を踏まえて日本の方向転換をうったえている候補は、私の知るかぎり、ほとんど(まったく?)いなかったようです。
つまり、この件に関して、日本の現在のリーダーたちの英知が決定的に不足しているのではないか、と推測されます。
本当に困ったことです。
一日も早く、新しい英知あるリーダーを育成-誕生させたいものだ、と思うのです。
↓記事に共感していただけたら、お手数ですが、ぜひ2つともクリックしてメッセージの伝達にご協力ください。
人気blogランキングへ