筆者の授業を受けている学生で、授業後話に来てくれる諸君の中に就職活動で悩んでいる人がたくさんいて、なんとか多少でもヒントになることを伝えてあげたいと思いつつ、お互いに十分な時間がありません。
そこで、ふと思いついて、このブログで時々参考になりそうなことを書くことにしました。
いわば「岡野のネット版課外授業」です。
ノーマン・ヴィンセント・ピールのことは、少し前の記事で紹介しました。
『人生が驚くほど逆転する思考法』(三笠書房、知的生き方文庫)を読んでいて、なかなかヒントになる一節に出会いましたので、紹介したいと思います。
教え子諸君、君たちならできる! 君たちは宇宙エネルギーの塊なんだから。へこたれるな!
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ひとつ、例を紹介しよう。ペンシルヴァニア州東部の小さな農村に住む青年の話だ。
その小さな村の高校を卒業したばかりのウォルター・ハーターは、ごく一般的な青年にすぎなかった。子供の頃複雑骨折した脚を、ほんのわずか引きずっていることを除けば、家庭が貧しくて大学進学をあきらめざるをえないごくふつうの青年だった。
農業に携わっている人なら誰もが認めるように、ウォルターの住む地域も他と同じく、どんな職種の仕事といえどもなかなか見つからない状態だった。
けれどこの年若い青年の心には、夢とそれを実現させる方法とがうずまいていた。
夢と方法──この二つが一緒になると、目標は設定されやすい。
目標が設定されれば、プラス・ファクターへ通じる扉も開きやすい。
ウォルターの場合、めざす目標は、行ったことも見たこともないニューヨークで仕事をつけることだった。そんな目標が達成できると彼に信じこませられるものは、プラス・ファクター、それ以外にはない。
ウォルターは電話局に行くと、ニューヨークの電話帳を借りてきた。そして中心部にあるいろいろな業種の商店を調べ、ある有名なチェーンストアに的をしぼった。
電話帳にはマンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ロングアイランド、ブロンクスに散らばるチェーン店、つごう三九三店舗の住所がのっていた。これだけあればひとつくらいは仕事があるにちがいない、そう思った。ウォルターはすべての店舗一つひとつに手紙を送ることにした。
どんな援助も期待できず、うしろだてもない十代の若者にとって、.それは途方もない試みだった。ウォルターは、どのチェーン店のどんな仕事でもいいから雇ってほしいと書いた。タイプライターは持っていなかったので、三九三店舗すべての支配人に手書きで書いた。一日十五通を自分に課し、くる日もくる日も書きつづった。
返事は来なかった。一通も来なかった。
拒否の仕方にもいろいろあるが、いちばん辛いのはなんの音沙汰もないことだろう。しかし、何かがうしろからウォルターの背中を支え、押していた。ウォルターは負けなかった。考えあぐねた末、ウォルターは、故郷を離れてニューヨークで運をためしていいかと両親に相談した。はじめ両親は、知りあいもないのに……と心配したが、最終的には同意して、二、三日すごせるだけのお金をかき集めてウォルターに手わたした。二人は息子がすぐ帰ってくると思っていた。
マンハッタンについたウォルターはタイムズスクウェアに行くと、手紙を出したチェーン店の大型店舗のひとつを探し出し、支配人に会いたいと申し出た。
支配人は言った。
「たとえそのような手紙を受けとっていたにしても、ここにはない。人事課のほうに回されているはずだ」
ウォルターは人事課がどういうものかもわからなかったが、とにかく教えられたとおりにパーク街の大きなビルに入っていって受付で名前を名のった。ウォルターが案内されたのは、大きな机の向こう側にいかめしい顔をしてどっしりとすわっている男性のところだった。すべての実権を握っているといった感じの人だった。
その人はウォルターを長い間じっと見つめていたが、やがて立ちあがると机の上に置いてある手紙の束を指さし、ほほえんで言った。
「君の就職願いだ。全部で三九三通ある。いつかやってくると思っていたよ。君には事務の仕事をやってもらいたいと思っている。午後からでも始めてくれるかい」
信じられないかもしれない。でもほんとうの話なのだ。ウォルター・ハーターは、支配人の地位にまで出世した。そして他の職に移っても、終始主導性と忍耐力を失わず、常にある種の「勢い」のようなものを身につけていた。プラス・ファクターである。
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