お正月もそろそろ終わりです。
ネット授業を本格的に再開したいと思います。
みなさん、また「アイデンティティ確立のための上り坂」*です。がんばってください。
さて、釈尊が亡くなった後、大まかにいって百年後くらいに、規律や教義の解釈の違いによって、仏教の教団がまず上座部(じょうざぶ)と大衆部(だいしゅ部)と呼ばれる2つの部派に分かれてしまいます。
それを仏教史上は「根本分裂」といっています。
上座部(テーラーヴァーダ)というのは、仏教教団の長老たちが上座にいたことからつけられた名前で、現代まで東南アジアに伝わっている仏教はこの流れを継いでいます。
大衆部(マハーサンギーカ)というのは、参加した人数が多かったためにこう呼ばれたものです。
専門的にいえばいろいろ難しいことがあるようですが、大まかにいえば、よかれ悪しかれ保守的な上座部と革新的な大衆部ということいえるようです。
仏教教団が2つに分かれる前後に、有名なアショーカ王という人が、ほぼインド全土にあたる非常に広い地域を統一しています。
統一するには戦争をせざるをえなかったわけですが、アショーカ王は、やがて戦争すること、つまり人を殺すことの問題に非常に深く悩み反省をして、やがて仏教に帰依をします。
それが一つの大きなきっかけになって、インド全体に仏教が広まっていくわけですが、広まっていくにしたがって、次第に先ほどいった2つの派が教義の解釈の違いによって、さらにいくつにも分裂をしていき、紀元前100年頃までに20ほど派ができたといわれています。
先にもお話したとおり、「人を見て法を説け」ということわざがあるように、ゴータマ・ブッダは、話を聞く相手の理解力とか状況とかを見てお話をされたようです。
ですから、まとまった体系的な説き方はしなかったし、本も書かなかったわけです。
ところが、インドの知的なエリートたちは古代から現代に到るまで、非常に理論好きで、後の人たちが釈尊の語ったことを元に自分たちの洞察もつけ加えながら、だんだんに組織的な仏教の教学を作っていきます。
解釈の違いによって20の部派に分かれたので、「部派仏教(ぶはぶっきょう)」と呼ばれます。
また、その理論を「アビダルマ」というので、「アビダルマ仏教」と呼ばれることもあります。
「アビ」というのはサンスクリット語で「何々に対して」という意味です。
「ダルマ」は――ダルマさんのダルマはここからきています――もともとは保持するものという意味で、そこから真理とか法とか、ものごととか、いくつかの意味が出てきているのですが、ここでは「ものごと」とか「存在」という意味です。
とにかく仏教的な「存在の分析」といえるような非常に詳細で哲学的な学説が形成されていくわけです。
その代表的な文献としては、『阿毘達摩倶舎論(あびだつまくしゃろん)』(略して『倶舎論・くしゃろん』)があり、日本でも奈良時代から唯識と並んで仏教の基礎的な学問とされてきました。
こうした学説は、もちろん一面では発展ともいえますが、厳密で詳細であるだけに、専門家にしかこなせないものになってきます。
ブッダの時代から、仏教の中には出家・僧の流れと在家・一般人の流れがあります。
アビダルマのような複雑な仏教教学は、やはり出家のいわばエリートのお坊さんにしかこなせないことになってくる。
それから一日のうちの相当長い時間を瞑想に使うこともプロのお坊さんにしかできません。
そうなると、在家というか、お坊さんになっていない人間は、仏教という流れでいえば、おまけで救われないことはないというか、覚れないことはないのだけれども、でも本流はやっぱり出家です。
それが極端になると、やっぱり出家しなければ覚れないという感じにだんだんなっていく傾向があったようです。
それに対し、紀元1世紀頃に、「出家したエリートしか覚れない・救われないというのはまちがっている。それは、迷いのこちらの岸から覚りの向こう岸へ渡るのに、ごく少数の人間しか乗せられない小さな乗り物=小乗だ。我々はみんなが乗れる大きな乗り物=大乗なのだ」と批判する勢力が興ってきます。
6世紀から8世紀にかけて日本に伝わり、やがて定着して日本人のものになっていった仏教は、朝鮮半島、中国を経て大きく変化も発展も――見方によっては歪曲も――したかたちのものですが、大まかな分類でいうと、この「大乗仏教」に属しています。
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やはり、あまりにも教学が煩瑣になりすぎると、ピントがぼけてしまうような気がします。
また、仏教が一部の僧のエリート集団だけのものとなり、権威主義にも陥りやすい。
「仏教は、坊さんだけのものではなくみんなの救われる普遍的な教えである」と主張したところに、大乗仏教の本質があるんですね。
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でも、慶応、早稲田のほかにも、たとえば法政もありますよ。社会学部と文学部では、私が教えています。よかったら、どうぞ。
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