ライム・パーク Lyme Park の庭園見学、昨日の続きです。

イギリスの庭園設計は、だいたい2つの大きな傾向に分かれるようです。私も詳しくはないのですが…。
ナショナルトラストなどの史跡庭園を見ると19世紀以前に造園された庭園の保存や、一からの修復再現されたものは「フォーマル・ガーデン formal garden」がほとんどです。
フォーマル・ガーデンというのは、もうひとつの傾向の「インフォーマル・ガーデン informal garden 」と対極の、技巧を極めたデザインの庭園です。
インフォーマル・ガーデンといえば日本でもおなじみのイングリッシュ・ガーデン。イギリスではコテージ・ガーデン cottage garden といいます。
幾何学模様の花壇の配置、あるいはもっとスケールを壮大に、並木や塔やあずまや、池などをバランスよく配置して整った美しい景観を演出するデザイン庭園といったらわかってもらえるでしょうか。
ボクサス・ツリーを円錐やぼんぼりのように刈り込んで左右対称に配置した「シメトリック・ガーデン」、ボクサスやコニファー(松の一種)で造成した「ガーデン・メイズ(迷路庭園)」、イギリスのエリザベス朝時代の低い灌木をくねくね縄状に見えるように刈り込んで真ん中に花木を点々と配した「ノット・ガーデン」もその仲間です。
ライムパークの、口から水を噴き上げるイルカを抱く少年の銅像のあるバラ園。

左右対称のコテコテ花壇…。

造成中…。

日本でも見られそうですね、上のようなヨーロッパ風の造園デザイン。
極め付きは、これ。

ライムパークの案内板には、「イタリア式庭園 Italian Garden」と書いてあります。
どうやら上から眺めて楽しむデザインのようです。中には はいれません。
上からの眺望スポットにあった、中ががらんどうの切り株。夫に中に入ってもらって記念写真を撮りました。

(拾ったマツボックリを手にもってにっこり笑ってもらったバカな写真もあるのです)
樹齢数百年の巨木が景観のジャマになるので切り倒されちゃったのかもしれませんね。
「切り株詰め」、子供連れや恋人同士の記念写真スポットとして受けそうです。
すぐ左下は、私たちが車を停めた大駐車場です。

ライム・パークには何回も来ていますが、今までちょっと上のこんなところにこんなにド派手なフォーマル・ガーデンがあるなんて知りませんでした。
下に下りて同じ高さで見るより、上から見た方が見栄えがします。

人の好みはそれぞれです。
うちの夫はとても気に入ったらしいのですが、ちまちましていてどうかなぁ。
花それぞれが、空間を埋める絵の具というかモザイクのピースのように使われています。
そばに行って花の美しさそのものを楽しみたい!という気分になれないところが あまり好きになれません。
なるほど、「イタリア式」ですね。ルネッサンス風。
邸宅がパラディアン様式の傑作ですから、相性ばっちり。

ところが家に帰ってウィッキピーディアのほか、観光ウェッブサイトを見てみたら、たいていどこもこの庭園は「ライム・パークの有名なオランダ式庭園 Dutch Garden」だと書いてあるのです。
ナショナルトラストとライム・パークは現在「イタリア式」と呼んでいます。
そもそも「オランダ式庭園」というのが何か知らなかったので、調べてみました。
庭園デザイン史では、深く掘り下げた場所に作った庭園のことを言うのだそうです。上から見て楽しむ、壁に囲われた庭園のことらしいです。
一般にはチューリップなどの球根花をメインに植えた花壇のこともダッチ・ガーデン(オランダ風の庭)とよぶようです。
ライムパークは、別に掘り下げて造園しなくとも、もともとピークディストリクトの高低のある場所にありますので、自然に見下ろせる位置を選んで作ったようですね。一部、背後は壁です。
たしかに、上から見て楽しむデザインですね。
もっと高めの反対側から撮った写真です。

左右、前後対称なので全く変わり映えしませんね。
最初の写真を撮った位置の巨木の切り株が見えています。
邸宅前の芝生の部分下の壁際に沿って歩けるようになっています。

等間隔で、ベンチ、ブドウの木、ベンチ…と壁沿いに配置してありました。
夏が短いイギリスでは屋外で栽培されてるのをあまり見ないブドウですが、ちゃんとかわいい実がなっていました。

イタリア式庭園を見下ろす眺望ベンチとブドウの木、イタリア気分満点の演出でしょうか。
でも「オランダ式庭園」の記述を見つけた今、混乱!
どっちなんだ!?
ところで夫は、この庭園を、邸宅の窓からみてみたい!と言い出しました。
で、コートヤード(邸宅の中庭)に戻って、入り口のナショナルトラストのスタッフにそう言いました。
残念ながら、「イタリア式庭園」を見下ろせる角付近の部屋はすべて未公開で、現在 スタッフの休憩室や事務所スペースになっているので立ち入り禁止だとのことでした。
おそらく一般公開している場所の中では一番近いと思われる「時計の広間 Clock Hall」なるところも現在、柱時計の修復中で立ち入り禁止。
それでも案内のボランティアのお年寄りが数人相談して、「現在一番イタリア式庭園の見晴らしがきく部屋」と思われる場所に案内してくれることになりました。
閉館30分前を切っているので、「順路」は完全無視で、何人かの案内ボランティアに引き継がれて(持ち場を長く離れるわけにはいかないのでしょう。ものすごい広さです)最短距離で「戦前の使用人用、洗面所」として保存してあるらしい場所に連れてきてもらいました。

なあんだぁ…がっかり。

それにしても、ナショナルトラストのスタッフの親切には感激です。
「会員証を見せて切符売り場で入場券をもらってきてから入館してください」などといわずにさっさと中に入れてくれて、閉館前の忙しい時に丁寧にめんどくさい注文にこたえてくれました。
私も夫も満足です。
私は別に邸宅の窓から「屋敷住まいの貴族になった気分で」イタリア式庭園を見てみたい、などと思わなかったのですが。外でもコテコテの造形美は堪能できましたし。
明日は、デザイン性を廃した「イングリッシュ・ガーデン」について書きます。
昨日の記事のリンクです☟。
ライム・パークの有料で公開している庭、さまざまなテーマの広い広い景観庭園、まずは序章
↓↓↓画像をクリックしてください。はい、ありがとう。

イギリスの庭園設計は、だいたい2つの大きな傾向に分かれるようです。私も詳しくはないのですが…。
ナショナルトラストなどの史跡庭園を見ると19世紀以前に造園された庭園の保存や、一からの修復再現されたものは「フォーマル・ガーデン formal garden」がほとんどです。
フォーマル・ガーデンというのは、もうひとつの傾向の「インフォーマル・ガーデン informal garden 」と対極の、技巧を極めたデザインの庭園です。
インフォーマル・ガーデンといえば日本でもおなじみのイングリッシュ・ガーデン。イギリスではコテージ・ガーデン cottage garden といいます。
幾何学模様の花壇の配置、あるいはもっとスケールを壮大に、並木や塔やあずまや、池などをバランスよく配置して整った美しい景観を演出するデザイン庭園といったらわかってもらえるでしょうか。
ボクサス・ツリーを円錐やぼんぼりのように刈り込んで左右対称に配置した「シメトリック・ガーデン」、ボクサスやコニファー(松の一種)で造成した「ガーデン・メイズ(迷路庭園)」、イギリスのエリザベス朝時代の低い灌木をくねくね縄状に見えるように刈り込んで真ん中に花木を点々と配した「ノット・ガーデン」もその仲間です。
ライムパークの、口から水を噴き上げるイルカを抱く少年の銅像のあるバラ園。

左右対称のコテコテ花壇…。

造成中…。

日本でも見られそうですね、上のようなヨーロッパ風の造園デザイン。
極め付きは、これ。

ライムパークの案内板には、「イタリア式庭園 Italian Garden」と書いてあります。
どうやら上から眺めて楽しむデザインのようです。中には はいれません。
上からの眺望スポットにあった、中ががらんどうの切り株。夫に中に入ってもらって記念写真を撮りました。

(拾ったマツボックリを手にもってにっこり笑ってもらったバカな写真もあるのです)
樹齢数百年の巨木が景観のジャマになるので切り倒されちゃったのかもしれませんね。
「切り株詰め」、子供連れや恋人同士の記念写真スポットとして受けそうです。
すぐ左下は、私たちが車を停めた大駐車場です。

ライム・パークには何回も来ていますが、今までちょっと上のこんなところにこんなにド派手なフォーマル・ガーデンがあるなんて知りませんでした。
下に下りて同じ高さで見るより、上から見た方が見栄えがします。

人の好みはそれぞれです。
うちの夫はとても気に入ったらしいのですが、ちまちましていてどうかなぁ。
花それぞれが、空間を埋める絵の具というかモザイクのピースのように使われています。
そばに行って花の美しさそのものを楽しみたい!という気分になれないところが あまり好きになれません。
なるほど、「イタリア式」ですね。ルネッサンス風。
邸宅がパラディアン様式の傑作ですから、相性ばっちり。

ところが家に帰ってウィッキピーディアのほか、観光ウェッブサイトを見てみたら、たいていどこもこの庭園は「ライム・パークの有名なオランダ式庭園 Dutch Garden」だと書いてあるのです。
ナショナルトラストとライム・パークは現在「イタリア式」と呼んでいます。
そもそも「オランダ式庭園」というのが何か知らなかったので、調べてみました。
庭園デザイン史では、深く掘り下げた場所に作った庭園のことを言うのだそうです。上から見て楽しむ、壁に囲われた庭園のことらしいです。
一般にはチューリップなどの球根花をメインに植えた花壇のこともダッチ・ガーデン(オランダ風の庭)とよぶようです。
ライムパークは、別に掘り下げて造園しなくとも、もともとピークディストリクトの高低のある場所にありますので、自然に見下ろせる位置を選んで作ったようですね。一部、背後は壁です。
たしかに、上から見て楽しむデザインですね。
もっと高めの反対側から撮った写真です。

左右、前後対称なので全く変わり映えしませんね。
最初の写真を撮った位置の巨木の切り株が見えています。
邸宅前の芝生の部分下の壁際に沿って歩けるようになっています。

等間隔で、ベンチ、ブドウの木、ベンチ…と壁沿いに配置してありました。
夏が短いイギリスでは屋外で栽培されてるのをあまり見ないブドウですが、ちゃんとかわいい実がなっていました。

イタリア式庭園を見下ろす眺望ベンチとブドウの木、イタリア気分満点の演出でしょうか。
でも「オランダ式庭園」の記述を見つけた今、混乱!
どっちなんだ!?
ところで夫は、この庭園を、邸宅の窓からみてみたい!と言い出しました。
で、コートヤード(邸宅の中庭)に戻って、入り口のナショナルトラストのスタッフにそう言いました。
残念ながら、「イタリア式庭園」を見下ろせる角付近の部屋はすべて未公開で、現在 スタッフの休憩室や事務所スペースになっているので立ち入り禁止だとのことでした。
おそらく一般公開している場所の中では一番近いと思われる「時計の広間 Clock Hall」なるところも現在、柱時計の修復中で立ち入り禁止。
それでも案内のボランティアのお年寄りが数人相談して、「現在一番イタリア式庭園の見晴らしがきく部屋」と思われる場所に案内してくれることになりました。
閉館30分前を切っているので、「順路」は完全無視で、何人かの案内ボランティアに引き継がれて(持ち場を長く離れるわけにはいかないのでしょう。ものすごい広さです)最短距離で「戦前の使用人用、洗面所」として保存してあるらしい場所に連れてきてもらいました。

なあんだぁ…がっかり。

それにしても、ナショナルトラストのスタッフの親切には感激です。
「会員証を見せて切符売り場で入場券をもらってきてから入館してください」などといわずにさっさと中に入れてくれて、閉館前の忙しい時に丁寧にめんどくさい注文にこたえてくれました。
私も夫も満足です。
私は別に邸宅の窓から「屋敷住まいの貴族になった気分で」イタリア式庭園を見てみたい、などと思わなかったのですが。外でもコテコテの造形美は堪能できましたし。
明日は、デザイン性を廃した「イングリッシュ・ガーデン」について書きます。
昨日の記事のリンクです☟。
ライム・パークの有料で公開している庭、さまざまなテーマの広い広い景観庭園、まずは序章
↓↓↓画像をクリックしてください。はい、ありがとう。