韓国大統領に李明博氏当選。
大阪生まれの66歳。絵に描いたようなサクセスストーリー中の人物だ。
苦学して大学を卒業。韓国の一大企業グループ「現代」の「現代建設」に入社。
36歳で社長に登りつめる。あだ名が「コンピューター付きブルドーザー」(コムドーザー)。というやり手。
政界入りは1992年。1度選挙違反で挫折するが、2002年ソウル市長に。
建設会社の社長経験者らしく、ソウル中心部の清渓川の復元事業を断行。その名声を高めた。
私は今、韓国の2大財閥のサムスンと現代の創業者達の苦難の成功物語を描いた韓国ドラマ『英雄時代』を見ているが、李氏の経歴は、そのまま、日本植民地時代に貧農から身を起こした、「現代」グループの創業者のものと重なる。
李氏の経済政策は、規制を緩和し、法人税を下げ、企業の投資を活発にし、それをテコに、若者の失業率を減らし、人々に仕事と収入を、というものだが、
それは、日本でも小泉構造改革として、取られた政策だが、肝心の本当に改革しなければならない、「官のムダ使い」や「大企業優遇偏重」に手がつけられなかったために、更なる「格差」「2極化」を生んだが、果たして李氏の手腕は?
ノ・ムヒョン政権が、「働く人々」の期待を受けながら、経済政策に有効な手立てを打てなかったのはなぜかは、私にはわからないが、ブレーンが素人集団であった、というような、批評を読んだことがある。
また、今度の李明博氏への圧倒的支持は、2年前の、日本の「郵政選挙」によく似ている。
「経済をよくしてくれる」という期待を持って、人々は、支持すべきでない候補に支持を与えてしまったが、期待に反して、ということが起こると、ここからが、韓国人と日本人との違いだが、韓国人は強烈に反撃してくる。
裁判員制度、根底に「動員の思想」
元裁判官で、新潟大教授西野喜一氏の警告である(信濃毎日新聞)。
「裁判員制度」については、新聞等で目にするものの、真剣には考えてこなかった。
有権者の中から選ばれた裁判員が、裁判官と一緒に重大刑事裁判の審理にあたる「裁判員制度」は、2009年5月までに導入されることになっている。
この「裁判員制度」が、徴兵制や憲法改正の地ならしになると、西野氏は警告している。
「裁判員制度」の根底には、国民は国のために奉仕すべきだ、という動員の思想がある。
そして、今、陪審制や参審制がある国の大半には徴兵制があるか、徴兵制との長い併存の歴史があるとも。
納税、教育、勤労という憲法上の国民の義務は、どれも国民に行為を求めているが、裁判員制度が求めるのは、行為より判断。
「お前が何を考えているのか、明らかにせよ」ということである。
陪審制度のあるアメリカでは、過去の死刑判決の中に、少なくない冤罪があった。
そんな死刑確定者を死の淵から呼び戻したのは、DNA鑑定の精度があがったことだった。
『十二人の怒れる男達』という映画があったが、あれは映画であり、ドラマだ。
それだけ、陪審員になった人間のいい加減さが、現実にある、ということだろう。
今の時代のような、テレビからの情報がすべて、といった感じの状況では、裁判員に選ばれた有権者の判断は、誘導に簡単にのっていく危険性がある。
裁判員に選ばれても、その罪に対して「判断しない」という「判断」しかない。