写生自在18 ツルマギ
周衣(ツルマギ)の垂れ紐吹くや青き踏む 迦 南
牛曳いて来る娘は跣足落椿 〃
海見えず潮騒ちかし薮椿 〃
ツルマギとは辞書によればチョゴリのような衣服の上にまとう外套の
ような衣服とあり、帯でなく紐があるだけとあります。その紐が垂れ
下がって春先の風に吹かれているというのです。ただそれだけを
作者はいっているだけなのに、物が民族衣装であるために読み手
には色々の想像がが広がります。わたしにはしわくちゃの老婆の
姿が目に浮かびます。
2句目三句目は落ち椿の句ですが、牛曳きの娘は跣であるというとこ
ろに現地人の貧しさがあり作者の同情もあります。あたりに椿が繁茂し
ているために見えないけれど潮騒の音ですぐそこに海があることが分
かるというのです。簡潔な言葉遣いで気持ちの良い句です。