写生自在22 朝鮮時代
音先だてて撫子に雨降り出せし 迦 南
林檎むくや音ささやける銀ナイフ 〃
迦南の聴覚は鋭敏だったのですね。上掲2句は音を取り込んでいます。そして言われて見れば誰にも思い当たるところがあります。撫子は群生して咲いているので少しの雨にも音を増幅させ、その音を聴いて人は天を仰ぎなるほど降り出したとに気が付くのです。そういう細やかなところを表現するのが俳句の独壇場なのです。
林檎を剥くときに音が出るものかどうか、これは指先に音を感じているのだと思います。オトササヤケル ギンナイフ このフレーズがいいですね。まるで林檎とナイフが親しく会話をしているような、こういう言葉の発見を一度でもものすることができたら、それこそ俳句は止められなくなってしまいす。