以下はラフの原稿である。
私はアニメは全くと言っても良いほどに観ない人間なのだが。
宮崎駿が妙にもてはやされている事については、似非モラリズムに対する本能的な危惧、嫌悪感が常にあった。
スタジオジブリがマスメディアから異様にもてはやされている事に対しても。
先年(1918年)、安藤忠雄が設計、新装された兵庫県立美術館で開催されたプラド美術館展、ベラスケスと絵画の栄光を観に行った。
私は、近畿圏で開催される必見の美術展には必ず行く人間なのだが、この展覧会には、どうしても行かなければとの思いがあったのである。
神様が私に有難い頭脳を与えると同時に当時の私には耐えがたい苦難も与えた事は既述のとおり。
それでも私は、それらの季節を夢の様に過ごした。
私は、この美術展には、何をさておいても行かなければならないとの焦燥感の様な衝動を感じていた。
それは、若い時の私が、当然ながら金銭的には楽ではなかった事が明白なエピソードと共にあった。
20歳前後の時、私は京都で暮らしていた。
伊藤若冲の生家の数件隣に在る飲食店で住み込みで働いていたのである。
その時に、岡崎の国際美術館で、かつてないスペイン美術展が開催された。
私は、ル・クレジオの「逃亡の書」の様にして、同級生たちの誰一人として想像できない、言わば流浪の生活を送っていた。
その時に、いつも所持していた唯一と言っても過言ではないものの一つが、なけなしのお金をはたいて買った大部の大英和辞典だった。
私は、スペイン美術展を観に行くために(拝観料捻出の為に)この大型の英和辞典を質屋に入れた。
そうして観たのである。
こうして書いていても涙が出るが。
そんな私に飛び込んで来た絵画があった。
フランシスコ・スルバランの絵画だった。
絵画の中に、生と死が、見事な程に同居している。
絵画の背後に、本当に深い静寂がある絵だった。
プラド展には、当然ながら、彼の絵もあった。
だが、あの時の感動は、今はなかった。
見事な絵画ではあるが、少し拍子抜けがした。
その他の絵画が、極上の数々だった事は言うまでもない。
この時、たくさんの人たちが駅から列を成していた。
「日本は、やはり大したものだ」そんなことを同行者と話しながら向かった。
元来が、粗忽者の気味がある私は、何も知らず、彼らの列に並ぶことにした。
暫くして、その列が、この美術館の別のホールで開催されていた、スタジオジブリ展の列だった事に気が着いた。
プラド展は、その列に比べれば、何後もない程だった。
それほど混んでいなかったら、鑑賞するには、良かったのだが。
私は、危惧したのである。
「オイオイ、日本よ」列を作る場所が間違っていないか?
先ほど、ネットを検索していて、私の危惧が、この件においても正鵠を射ていた事を明らかにしている記事を発見した。
「慰安婦問題で日本は謝罪・賠償すべき」 宮崎駿監督のインタビュー記事が物議
2013年07月19日
https://www.j-cast.com/2013/07/19179774.html
https://www.j-cast.com/2013/07/19179774.html?p=2
新作アニメ映画「風立ちぬ」公開を控えた宮崎駿監督(72)が、「慰安婦問題で日本は謝罪して賠償すべきだ」などとインタビュー記事で発言し、物議を醸している。
この記事は、事務所のスタジオジブリが2013年7月10日から全国の書店で配布した無料の小冊子「熱風」7月号に載せられている。
「領土問題も折半か共同管理を提案したらいい」
冊子がほしいと要望が多いため、ジブリが18日にホームページ上でPDFにして緊急配信したところ、ネット上で、大きな話題になった。
7月号は、「憲法改正」特集を組んでおり、宮崎駿監督は「憲法を変えるなどもってのほか」と題した記事で談話を載せている。
そこで、宮崎監督は、日本は戦争中に近隣諸国に酷いことをしており、戦争放棄をうたった憲法第9条などを変えることには反対だと訴えた。そして、「選挙をやれば得票率も投票率も低い、そういう政府がどさくさに紛れて、思いつきのような方法で憲法を変えようなんて、もってのほか」と切り捨てた。
さらに、宮崎監督は、韓国や中国を想定しているらしく、慰安婦や領土についても、踏み込んだ発言をした。
「慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、きちんと謝罪してちゃんと賠償すべきです。領土問題は、半分に分けるか、あるいは『両方で管理しましょう』という提案をする。この問題はどんなに揉めても、国際司法裁判所に提訴しても収まるはずがありません」
また、宮崎監督は、「こんな原発だらけの国で戦争なんかできっこない」として、日本は、衣食住などを自ら賄うよう産業構造を変えていくことの方が大事だと主張した。そうすると、人口は3分の1ぐらいが適正で、アニメ産業も今後は成り立たなくなると自虐的な予測をしている。
こうした主張に対し、ネット上では、「私もそう思う」「正直でいいじゃん」などと肯定的に受け止める向きもある。
ジブリ「書かれていることがすべてです」
しかし、宮崎駿監督への異論は多く、「日韓基本条約は無視ですか(*^^*)」「全く現実的じゃない」「左翼系によくみられる思想だな」といった書き込みが相次いでいる。
ネット上で異論も多いことについて、ジブリの広報担当者は、「『熱風』に書かれていることがすべてです」と取材にコメントした。そうしたのは、取材が多くて事務所では対応しきれなくなったため、取材を受けないことになったからだと説明した。
事務所などにどのくらい意見が来ているかも答えられないという。
ただ、今回なぜ「憲法改正」特集にしたのかについては、東京新聞の2013年7月19日付記事にあった通りだとした。記事によると、スタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫さん(64)が、21日投開票の参院選を前に旗色を鮮明にしようと発案した。実際、鈴木さんも、「9条 世界に伝えよう」という談話を寄せている。記事では、ジブリ出版部が「参院選の投票日前に読んでほしい」と呼びかけていた。
鈴木さんは談話で、「風立ちぬ」は戦争に関わる映画ではあるものの、「戦闘シーンは出て来ません」と強調している。これに対し、映画が20日に公開されることから、ネット上では、「熱風」の特集は話題作りではないのかとの憶測も出ていた。
もし、映画に合わせた政治的メッセージなら引かれてしまうことにならないのか。
この点について、ジブリの広報担当者は、「映画とは関係なく特集を組んでおり、結びつくものではありません」と説明した。映画公開が参院選前日であることについては、「数年前から計画しており、参院選に合わせたものではありません。それは、まったくの偶然です」と言っている。
この稿続く。