以下は月刊誌WiLL2月号に、ハンパじゃない日本偉人伝、と題して掲載されている、歴史啓蒙家・小名木善行と芸人居島一平の対談特集からである。
p162-p167
日本国民のみならず世界中の人達が必読。
佐々木道誉、楠木正儀、二宮尊徳、宮沢賢治、秋山好古・真之兄弟…今の日本人にも受け継がれる偉人たちのDNAとは
道徳は暗黙のルール
小名木
はじめまして。
居島
今日、お目にかかれて光栄です。連載も拝読しています。編集部からの注文は、日本を元気にする過去の偉人を話してくれということですね。
サッカー・ワールドカップで、試合後、選手たちがロッカールームを出る際、綺麗に掃除したり、日本人の観客が客席のゴミをきちんと片付ける姿が、海外で称賛を集めました。
日本国内では否定的な意見もあるようですが……。
このような行為は、もともと日本代々受け継がれてきた行為ではないかと思うんですよ。
小名木
そうですね。心身を清めることから始めるのが、日本人ですね。
《佐々木道誉と楠木正儀》
居島
一つ思い出すのが、南北朝時代に活躍したバサラ(婆娑羅)大名、佐々木道誉(1296~1373年。生没年は諸説あり)。
小名木
「バサラ」とは、身分秩序を無視して実力主義的であり、公家や天皇といった権威を軽んじて嘲笑したり、反撥したり、奢侈で派手な振る舞いや、粋で華美な服装を好む美意識のことですね。
居島
道誉は足利尊氏の側近で、北朝方でした。
南北朝時代、京は攻めるに易く、守るに難いという土地柄で、北朝方と南朝方で目まぐるしく支配者が代わった。
南朝軍に攻められた足利軍は、京を一度明け渡し、落ち延びなければならない状況に追い込まれ、道誉の屋敷も、いずれ敵方に占拠されることは明白でした。
ところが、道誉は簡単に明け渡すことをしません。
まずは文化面に精通している出家者二人、まあ、お坊さんですよね。
それを屋敷に呼び寄せた。
さらに道誉は自身の邸宅を占拠する武将をもてなすといって、立派な畳を敷いて、掛け軸の絵にもこだわったり、さりげなく食料も残した上に、書院には王義之の書や韓愈の文集を置いた。
そして大筒に酒を用意し、出家者二人に「これで南朝の連中をもてなせ」と伝え、落ち延びていったのです。
小名木
実に粋ですね。
居島
明日をも知れぬ命なのに、悠然とそれだけの仕度を成し遂げるなんて考えられません。
南朝側の武将、細川清氏や楠木正儀(生没年不明。楠木正成の息子)は屋敷を燃やそうと息巻いてやって来たら、お坊さんたち2人が座っており、何やらゆかしい香りが漂う。
酒とお茶の支度もしてあり、調度も素晴らしい。
そのお坊さんから「まずは一献、召し上がれ」と酒を差し出された。
そのとき、正儀は「これは負けた。この屋敷を焼いてはならない」と、道誉の用意したもてなしを堪能したのです。
さらに出家者二人を「よくはたらいてくれた」と懇ろに扱い、帰したそうで。
小名木
茶の湯の世界の始まりのような話です。
居島
時は変わって、北朝のほうが盛り返し、道誉も勝者として自分の屋敷にまた戻ってきました。
ところが、そこで道誉は大変驚いた。
というのも、正儀は酒肴(しゅこう)を道誉が用意したものより立派なものに替え、返礼として秘蔵の鐙(あぶみ)と太刀一振り、それに郎党(従者)一人を置いていったのです。
道誉が撤退したときよりも兄事な飾り立てだった。
正儀はそれだけ道誉の心意気に感じ入ったわけです。
「立つ鳥跡を濁さず」ではありませんが、どうも道誉や正儀の精神が、ワールドカップの時の日本人の態度と、遠いところでつながっているような気がしてなりません。
小名木
森保一監督の「礼」と同じですね。
居島
このような礼節を日本人はどこかで忘れません。
称賛を得たいと思って行動しているわけじゃない。
心意気の問題ですよね。
小名木
会場を清掃するのも、ルールがあるからやっているわけではありません。
「お天道様が見ている」という言葉がありますが、そういうものを意識しながら、無私の心で、事に当たる。
居島
道徳は暗黙のルールによるものであって、いちいち文字に残したり、高札を掲げる必要がなかったということですね。
この稿続く。
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