お祭りに際して斎場を飾る調度品というのは欠かせないものですが、その中の一つに「幕」があります。
幕と言って最初に思い浮かぶのは「紅白幕」ではないでしょうか。慶事=紅白、というイメージがあり、今の時期ですと卒業式や入学式で目にするものでもあります。ですが、お祭りで紅白幕のみを使うようになったのはそう古いことではないようです。
地鎮祭での紅白幕
神社では横方向に縫い合わせたものを「幕(まく)」、縦方向に縫い合わせたものを「幔(まん)」と言います。
いわゆる紅白幕はこの「幔(まん)」の一種なのですが、幔には白一色の「白幔(はくまん)」、紅白・黒白・五色(青黄赤白黒)などの色で作られた「斑幔(はんまん)」、あるいは布地によって「錦幔(きんまん)」、「絹幔(けんまん)」等と様々な種類があり、用途により使い分けられてきました。
この中で黒白の幔は「鯨幕(くじらまく)」と呼ばれ、今では葬儀などの弔事に使われることが一般的ですが、実は慶事・御祝にも用いられています。
黒は平安時代は高位の文官の装束の色であったように、格式の高い色でした。なので鯨幕は古くより重儀の時のみ用いる特別なものであったようです。現在でも、皇室の慶事や大社の神事では鯨幕を用い、紅白幕は使わないという事です。