あけまして、おめでとうございます。
各社は、この1年をどう展望するのでしょうか。
今年最初の社説を見てみましょう。
朝日新聞
・ ポスト成長の年明け―すべて将来世代のために
読売新聞
・ 「危機」乗り越える統治能力を ポピュリズムと決別せよ
毎日新聞
・ 2012年激動の年 問題解決できる政治を
日本経済新聞
・ 転換期日本 変化の芽を伸ばす(1) 資本主義を進化させるために
産経新聞
・
中日新聞
・ 民の力を今、活かそう 年のはじめに考える
※ それぞれの社風が感じ取れます。
元日ですから、じっくりと読み味わってみましょう。
個人的に最も気に入った社説は、読売でした。
切り取っておきます。
「危機」乗り越える統治能力を ポピュリズムと決別せよ
世界的に「危機」が常態化しつつある。
欧州では、財政危機が金融危機に拡大し、世界経済を揺るがしている。米国も巨大な財政赤字に苦しんでいる。その影響で中国やインドでも景気が減速し始めた。
財政再建に努めないと国債が暴落しかねないと指摘されても、政治は負担増を嫌う国民を説得できていない。混迷を深める市場と、民意に翻弄される政治が、相互に危機を増幅している。
危機の根源にある欧州債務問題を鎮めることが、喫緊の課題だ。欧州は、財政赤字を削減し、国債の下落を抑えるよう、万策を講じなければならない。
経済活性化は復興から
日本は、東日本大震災から初めての正月を迎えた。
未曽有の震災は人々の心と社会に深い傷痕を残している。がれきの処理が進まず、新しいまちづくりはこれからだ。東京電力福島第一原子力発電所は、いまだに事故を完全に収束できず、全国各地での避難生活も続いている。
日本経済は、欧米の混乱に伴う超円高と株安に苦しみ、企業の生産拠点の海外移転による産業空洞化も加速している。復興を進めて経済を成長軌道に乗せたい。
それには、政治が機能不全から脱却する必要がある。民主党政権の統治能力も問われている。
野田首相は、社会保障の財源としての消費税率引き上げに道筋をつけ、成長のカギを握る自由貿易を推進し、現実的なエネルギー政策を確立しなければならない。
衆参ねじれ国会では、民主、自民、公明3党の合意があって、初めて政治が前に進む。政権を円滑に運営するには、政党間協議で合意を積み重ねる必要がある。
財政破綻もあり得る
政治を動かす「魔法の杖(つえ)」はない。次期衆院選が年内にも予想されるが、民自公3党は、党利党略を超え、合意を目指すべきだ。
今の政治に必要なのは、リーダーの不退転の覚悟と合意形成に向けた努力、国民に痛みを受容してもらう説得力である。
ギリシャの財政危機に端を発した欧州危機は、日本にとって「対岸の火事」ではない。
日本は、先進国の中で最も厳しい財政事情にある。国と地方を合わせた公的債務は900兆円弱に膨らみ、国内総生産(GDP)のほぼ2倍にも上っている。
これまで、日本には1500兆円近くの個人金融資産があり、日本の国債は9割以上が国内の機関投資家や個人投資家に保有されているため、国債の消化を海外に頼る欧米諸国と比べて危険度が比較的小さい、とされてきた。
しかし、個人金融資産は、住宅ローンなどの債務を差し引いた実体では1100兆円になる。公的債務との差は200兆円程度だ。今後、国債発行がこれまでのペースで増える一方、高齢化による貯蓄の取り崩しによって金融資産が目減りすれば、国民の資産だけでは国債を吸収できなくなる。
財政状況が深刻化し、大震災に見舞われながらも、円に対する国際的信認はなお厚い。日本には欧州並みに消費税率を15~25%に引き上げる「余地」があると思われているからだろう。
しかし、日本の国債がいったん売られると、金利が上昇して利払い費が膨らみ、債務が拡大する。消費が冷え込み、設備投資の減少など景気低迷と税収減の悪循環に陥れば、財政破綻という悪夢のシナリオが現実になりかねない。
消費税率引き上げによる財政再建を急ぐ理由は、ここにある。
野田首相は、消費税率について「2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げる」と言明している。3月末に、税制関連法案を国会に提出する方針だ。
首相は、年金や医療、介護などの社会保障制度を持続可能にするには、消費税率引き上げによるしかないことを、国民に丁寧に説明し、理解を求めてもらいたい。
社会保障と税の一体改革は、どの政党が政権を取っても、与野党で協力して実施に移さなければならないテーマだ。自民、公明両党も政権復帰の可能性を見据え、法案成立に協力すべきだろう。
負担減と給付増を求めるような大衆に迎合する政治(ポピュリズム)と決別することが、危機を克服する道である。
中国にどう向き合う
アジア太平洋地域で、荒波がその高さを増している。
軍事的膨張を続ける中国は、日本や他国を射程に収めた弾道ミサイルを配備し、次世代戦闘機の開発を急いでいる。南シナ海や東シナ海では、日米両国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との軋轢(あつれき)を繰り返している。
北朝鮮は、権力継承の過程で政情が不穏になる可能性がある。
日本の取るべき道は、アジア重視の姿勢に転じた米国との同盟を一層深化させ、南西方面の防衛力を向上させることである。
そのためには、沖縄問題の解決が避けて通れない。
米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設するという日米合意を実現するには、沖縄振興策、騒音など基地負担の軽減を通じた、沖縄県との信頼回復が不可欠だ。
担当閣僚はもちろん、野田首相も沖縄に出向き、仲井真弘多(ひろかず)知事らを本気で説得すべきである。
農業再生へのチャンス
日米同盟の強化には、経済連携を進めることも寄与する。
野田首相は、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に向け、関係国との協議に入るとの意向を示している。
アジアの活力を取り込む枠組みは日本の成長戦略に不可欠だ。
事前交渉などを経て、TPPへの参加が認められれば、新たな通商ルールづくりに関与できる。日本の国益増進に資するよう、戦略的に交渉しなくてはならない。
交渉参加には、農業関係者らが反発している。原則が「例外なき関税撤廃」では、日本の農業を守れない、という理由からだ。
だが、農業はこのままでは衰退必至だ。TPPへの参加こそ農地の大規模化、就農支援など農業改革に取り組む契機になる。国際競争力が増せば、コメに限らず、高品質の農産物の輸出も拡大しよう。
TPPはピンチではなく、再生へのチャンスと捉えたい。
安全な原発に更新せよ
日本の復興、経済成長で中心的役割を果たすのが電力などのエネルギー政策である。
福島原発の事故の影響で、各地の原発が定期検査を終えた後も再稼働できず、電力不足が深刻化している。5月までには全原発54基が停止する恐れがある。
総発電量の3割が失われる事態を回避しなければならない。
電力会社は火力発電で急場をしのいでいるが、燃料の天然ガスなどが高騰し、発電コストが上昇している。太陽光や風力の再生可能エネルギーによる発電は、総発電量の1%しかない。原発に代わる事業に育つには長年を要する。
安全が十分に確認できた原発から再稼働していくことが必要だ。政府は地元自治体の理解を得るよう尽力しなければならない。
再稼働が進まないと、停電や電力不足のリスクを避けるために、企業が海外移転を図り、産業空洞化に拍車を掛けることになる。
菅前首相の無責任な「脱原発」路線と一線を画し、野田首相が原発輸出を推進するなど、現実を踏まえたエネルギー政策に乗り出したのは、当然である。
中国など新興国では、原発新設の計画が維持されている。より安全な新型原発を開発し、技術提供や専門家育成のノウハウと合わせて輸出することは、事故を起こした日本の信頼回復に役立つ。
「原発ゼロ」を標榜(ひょうぼう)すれば、原発輸出力は低下し、技術者の海外流出にもつながりかねない。
福島原発では、事故収束から廃炉まで30~40年を要する。並行して、原発技術を継承する人材を確保、育成しなければならない。
太陽光や風力などの電源に占める比率を高めていくにしても、国内で古くなった原発を高性能で安全な原発に更新する、という選択肢を排除すべきではない。
電力の安定供給、コスト、環境への影響などを総合的に判断し、電源の最適な組み合わせを見いだすべきだ。それが今後の電力危機を回避することに結びつこう。
消費税、沖縄、TPP、原発の各課題は、いずれも先送りできない。日本が「3・11」を克服し、平和と繁栄の方向に歩を進められるか。世界が注目している。
野球は中日ファンですが・・・
各社は、この1年をどう展望するのでしょうか。
今年最初の社説を見てみましょう。
朝日新聞
・ ポスト成長の年明け―すべて将来世代のために
読売新聞
・ 「危機」乗り越える統治能力を ポピュリズムと決別せよ
毎日新聞
・ 2012年激動の年 問題解決できる政治を
日本経済新聞
・ 転換期日本 変化の芽を伸ばす(1) 資本主義を進化させるために
産経新聞
・
中日新聞
・ 民の力を今、活かそう 年のはじめに考える
※ それぞれの社風が感じ取れます。
元日ですから、じっくりと読み味わってみましょう。
個人的に最も気に入った社説は、読売でした。
切り取っておきます。
「危機」乗り越える統治能力を ポピュリズムと決別せよ
世界的に「危機」が常態化しつつある。
欧州では、財政危機が金融危機に拡大し、世界経済を揺るがしている。米国も巨大な財政赤字に苦しんでいる。その影響で中国やインドでも景気が減速し始めた。
財政再建に努めないと国債が暴落しかねないと指摘されても、政治は負担増を嫌う国民を説得できていない。混迷を深める市場と、民意に翻弄される政治が、相互に危機を増幅している。
危機の根源にある欧州債務問題を鎮めることが、喫緊の課題だ。欧州は、財政赤字を削減し、国債の下落を抑えるよう、万策を講じなければならない。
経済活性化は復興から
日本は、東日本大震災から初めての正月を迎えた。
未曽有の震災は人々の心と社会に深い傷痕を残している。がれきの処理が進まず、新しいまちづくりはこれからだ。東京電力福島第一原子力発電所は、いまだに事故を完全に収束できず、全国各地での避難生活も続いている。
日本経済は、欧米の混乱に伴う超円高と株安に苦しみ、企業の生産拠点の海外移転による産業空洞化も加速している。復興を進めて経済を成長軌道に乗せたい。
それには、政治が機能不全から脱却する必要がある。民主党政権の統治能力も問われている。
野田首相は、社会保障の財源としての消費税率引き上げに道筋をつけ、成長のカギを握る自由貿易を推進し、現実的なエネルギー政策を確立しなければならない。
衆参ねじれ国会では、民主、自民、公明3党の合意があって、初めて政治が前に進む。政権を円滑に運営するには、政党間協議で合意を積み重ねる必要がある。
財政破綻もあり得る
政治を動かす「魔法の杖(つえ)」はない。次期衆院選が年内にも予想されるが、民自公3党は、党利党略を超え、合意を目指すべきだ。
今の政治に必要なのは、リーダーの不退転の覚悟と合意形成に向けた努力、国民に痛みを受容してもらう説得力である。
ギリシャの財政危機に端を発した欧州危機は、日本にとって「対岸の火事」ではない。
日本は、先進国の中で最も厳しい財政事情にある。国と地方を合わせた公的債務は900兆円弱に膨らみ、国内総生産(GDP)のほぼ2倍にも上っている。
これまで、日本には1500兆円近くの個人金融資産があり、日本の国債は9割以上が国内の機関投資家や個人投資家に保有されているため、国債の消化を海外に頼る欧米諸国と比べて危険度が比較的小さい、とされてきた。
しかし、個人金融資産は、住宅ローンなどの債務を差し引いた実体では1100兆円になる。公的債務との差は200兆円程度だ。今後、国債発行がこれまでのペースで増える一方、高齢化による貯蓄の取り崩しによって金融資産が目減りすれば、国民の資産だけでは国債を吸収できなくなる。
財政状況が深刻化し、大震災に見舞われながらも、円に対する国際的信認はなお厚い。日本には欧州並みに消費税率を15~25%に引き上げる「余地」があると思われているからだろう。
しかし、日本の国債がいったん売られると、金利が上昇して利払い費が膨らみ、債務が拡大する。消費が冷え込み、設備投資の減少など景気低迷と税収減の悪循環に陥れば、財政破綻という悪夢のシナリオが現実になりかねない。
消費税率引き上げによる財政再建を急ぐ理由は、ここにある。
野田首相は、消費税率について「2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げる」と言明している。3月末に、税制関連法案を国会に提出する方針だ。
首相は、年金や医療、介護などの社会保障制度を持続可能にするには、消費税率引き上げによるしかないことを、国民に丁寧に説明し、理解を求めてもらいたい。
社会保障と税の一体改革は、どの政党が政権を取っても、与野党で協力して実施に移さなければならないテーマだ。自民、公明両党も政権復帰の可能性を見据え、法案成立に協力すべきだろう。
負担減と給付増を求めるような大衆に迎合する政治(ポピュリズム)と決別することが、危機を克服する道である。
中国にどう向き合う
アジア太平洋地域で、荒波がその高さを増している。
軍事的膨張を続ける中国は、日本や他国を射程に収めた弾道ミサイルを配備し、次世代戦闘機の開発を急いでいる。南シナ海や東シナ海では、日米両国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との軋轢(あつれき)を繰り返している。
北朝鮮は、権力継承の過程で政情が不穏になる可能性がある。
日本の取るべき道は、アジア重視の姿勢に転じた米国との同盟を一層深化させ、南西方面の防衛力を向上させることである。
そのためには、沖縄問題の解決が避けて通れない。
米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設するという日米合意を実現するには、沖縄振興策、騒音など基地負担の軽減を通じた、沖縄県との信頼回復が不可欠だ。
担当閣僚はもちろん、野田首相も沖縄に出向き、仲井真弘多(ひろかず)知事らを本気で説得すべきである。
農業再生へのチャンス
日米同盟の強化には、経済連携を進めることも寄与する。
野田首相は、米国主導の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加に向け、関係国との協議に入るとの意向を示している。
アジアの活力を取り込む枠組みは日本の成長戦略に不可欠だ。
事前交渉などを経て、TPPへの参加が認められれば、新たな通商ルールづくりに関与できる。日本の国益増進に資するよう、戦略的に交渉しなくてはならない。
交渉参加には、農業関係者らが反発している。原則が「例外なき関税撤廃」では、日本の農業を守れない、という理由からだ。
だが、農業はこのままでは衰退必至だ。TPPへの参加こそ農地の大規模化、就農支援など農業改革に取り組む契機になる。国際競争力が増せば、コメに限らず、高品質の農産物の輸出も拡大しよう。
TPPはピンチではなく、再生へのチャンスと捉えたい。
安全な原発に更新せよ
日本の復興、経済成長で中心的役割を果たすのが電力などのエネルギー政策である。
福島原発の事故の影響で、各地の原発が定期検査を終えた後も再稼働できず、電力不足が深刻化している。5月までには全原発54基が停止する恐れがある。
総発電量の3割が失われる事態を回避しなければならない。
電力会社は火力発電で急場をしのいでいるが、燃料の天然ガスなどが高騰し、発電コストが上昇している。太陽光や風力の再生可能エネルギーによる発電は、総発電量の1%しかない。原発に代わる事業に育つには長年を要する。
安全が十分に確認できた原発から再稼働していくことが必要だ。政府は地元自治体の理解を得るよう尽力しなければならない。
再稼働が進まないと、停電や電力不足のリスクを避けるために、企業が海外移転を図り、産業空洞化に拍車を掛けることになる。
菅前首相の無責任な「脱原発」路線と一線を画し、野田首相が原発輸出を推進するなど、現実を踏まえたエネルギー政策に乗り出したのは、当然である。
中国など新興国では、原発新設の計画が維持されている。より安全な新型原発を開発し、技術提供や専門家育成のノウハウと合わせて輸出することは、事故を起こした日本の信頼回復に役立つ。
「原発ゼロ」を標榜(ひょうぼう)すれば、原発輸出力は低下し、技術者の海外流出にもつながりかねない。
福島原発では、事故収束から廃炉まで30~40年を要する。並行して、原発技術を継承する人材を確保、育成しなければならない。
太陽光や風力などの電源に占める比率を高めていくにしても、国内で古くなった原発を高性能で安全な原発に更新する、という選択肢を排除すべきではない。
電力の安定供給、コスト、環境への影響などを総合的に判断し、電源の最適な組み合わせを見いだすべきだ。それが今後の電力危機を回避することに結びつこう。
消費税、沖縄、TPP、原発の各課題は、いずれも先送りできない。日本が「3・11」を克服し、平和と繁栄の方向に歩を進められるか。世界が注目している。
野球は中日ファンですが・・・