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故事成語類(実践問題その39)です。あと1回で「
世説新語」はおわりです・・・。参考書籍:「世説新語(1~5)」(井波律子 訳注 東洋文庫・平凡社) 前回よりはちょっと難かも・・・👋👋👋
難易度:よみ=
易 かき=
やや難
(よみ)
①「遂に庾公に致して曰く、「・・・真に
(海岱) の清子なり」と。・・・」
②「・・・此の契に預かる者は、沛国の劉伶、陳留の阮咸、河內の向秀、琅邪の王戎なり。七人は常に竹林の下に集い、肆意
(酣暢) す。故に世に「竹林七賢」と謂う。」 *肆意酣暢:思い切り酒を飲んで気晴らしをすること。
③~④「陶公は少(わか)き時、魚梁(ぎょりょう)の吏と作(な)る。嘗て
③(坩鮓) を以て母に
④(餉) る・・・」 *魚梁(ぎょりょう)の吏:魚梁(やな)担当の役人 坩鮓:壺につけたなれずしのこと
⑤陶公疾(やま)い篤きとき、都て
(献替) の言無し。朝士以て恨みと為す。仁祖之れを聞きて曰く、「時に豎刁(じゅちょう)無し。故に陶公が話言を貽さず」と。時の賢は以て徳音と為す。(注)豎刁(じゅちょう):春秋時代の斉の桓公に寵愛された宦官。斉の混乱をまねいた人物。
(かき)
①「玄は声に応じて慟哭し、傍らの人を酸感せしむ。・・・
(キクアイ) すること生む所に過ぐ。」(注)酸感:痛ましい思いにさせること
キクアイ:慈しみ可愛がること
②「王戎は児の万子を喪う。山簡往きて之れを省するに・・・簡曰く、「
(ガイホウ) 中の物、何ぞ此こに至らんや」と。・・・」
③「戴公は林法師の墓を見て曰く、「徳音未だ遠からざるに、
(キョウボク) 已に積む。・・・ 」」
④~⑤「祖車騎、江を過ぎる時、公私倹薄にして、好き服玩(ふくがん)無し。王・庾の諸公は共に祖に就き、忽として
④(キュウホウ) の重畳し、珍飾の
⑤(エイレツ) するを見る。諸公は怪しみて之れを問う。 (注)*「服玩」=服翫(衣服や日常愛用する身のまわりの道具)
「キュウホウ」:皮衣と綿入れ 「珍飾(ちんしょく)」:貴重な宝物
「エイレツ」:ずらりと並んでいるさま。
<回答・解説>はこのあとすぐ(^^)
<回答・解説>
(読み問題)
①
(かいたい) :ここでは海内(かいだい)、つまり天下の意。「岱」(タイ)の熟語関連はいろいろあります。代表的なものは、
「
東岱前後(とうたいぜんご) 」泰山の煙のように人の生命がはかないものである ということ。*東岱:中国、泰山の異称。五岳の一。
「
泰山/岱山/太山(たいざん)」中国、山東省中部にある名山。古来信仰の対象となり、秦・漢時代から皇帝が封禅(ほうぜん)の儀式を行った所。玉 皇廟など古跡が多い。1987年、世界遺産(複合遺産)に登録された。
「
泰山の安きに置く」:泰山のように、どっしりと安定させる。
「
泰山は土壌を譲らず」(「史記」)泰山が小さな土くれでも受け入れて大きな山となったように、大人物はどんなに小さな意見でも取り入れて見識を高めていくというたとえ。
「
泰山を挟みて北海を超ゆ」(「孟子」)泰山をわきにかかえて渤海湾を飛び越える。人間の力ではとうていできないことのたとえ。
「
泰山府君(たいざんふくん)」:中国の泰山に住むという神。道教では人の生死をつかさどる神で、日本では素戔嗚尊(すさのおのみこと)に配され、また仏家では、閻魔王(えんまおう)の侍者として人の善悪行為を記録するとも、地獄の一王ともいう。
「
泰山北斗(たいざんほくと)」泰山と北斗星。転じて、その道の大家として最も高く尊ばれる人。
泰斗。
余談ですが、「泰」の字は「中学…タイ 準1…やす(い)、やす(らか)、
おご(る) 」の読みがあります。このうち、「おご(る)」意の「泰(タイ)」には気をつけてください・・・確か、論語か何かの中で、そういう意味で使われている「泰」があったと記憶しています。
②
(かんちょう) :説明略。有名な「竹林の七賢」を紹介している所です。七賢:阮籍(げんせき)・嵆康(けいこう)・山濤(さんとう)・向秀(しようしゆう)・劉伶(りゆうれい)・阮咸(げんかん)・王戎(おうじゆう)・・・昔々、大学受験で覚えましたねえ・・・。
③
(かんさ) :坩:カン、つぼ、るつぼ(坩堝) 鮓:サ、すし
「鮓答・鮓荅(さとう)」牛・馬・豚・羊などの胆石や腸内の結石。解毒剤とされ、また雨乞いのまじないに用いられた。石糞。馬の玉。ヘイサラバサラ。ドウサラバサラ。まったくの余談ですが、「ヘイサラバサラ」って、宇江佐真理の何かの短編集で題材になってましたね(^^)
④
(おく) :餉:ショウ、かれい、かれいい、かて、おく(る)、かたとき
⑤
(けんたい・けんてい) :君主に正しく善いことを進言すること。
「けんてい」とも読むので気をつけておかないと・・・書き問題で「ケンテイ」となっていたら思い浮かばないかも知れない。「―を聴き或は其許諾を請う」〈津田真道訳・泰西国法論)
(書き問題)
①
(鞠愛) :意味は問題(注)のとおり。鞠:キク、まり、やしな(う)、とりしら(べる)、かが(む) *なお、「酸感」の意味は問題(注)のとおりです。「酸楚」なども訓読みだと同様に「つらい」意でしょうね。 酸:小学…サン 高校…す(い)準1…す、つら(い)
②
(孩抱) :抱きかかえる年頃の幼児の意。この短文だけではヒントがないとちょっと難しいかも。「孩」の関連熟語はたくさんありますね、定番の「
孩提(がいてい)」:2、3歳くらいの幼児。おさなご。みどりご。嬰児(えいじ)、「
生孩(せいがい)」:うまれてまもないこども、乳呑み児。「孩」は「ちのみご」。
「孩童」「孩児」「孩嬰」「孩孺」「孩子」 「幼孩」・・・。
「孩提(がいてい)」の語源は孟子の「孩提、二三歳、襁褓在り、
孩笑を知り提抱すべき者也」と思います。
③
(拱木) :墓場に植えた木。徳音(声音)がまだ残っているのに、墓の木はすでに歳月を重ね大きくなった・・・。拱:キョウ、こまぬ(く)、こまね(く) <参考>「墓木已に拱す」(春秋左氏伝):墓に植えた木が既に一抱えもあるほどに生長している。①死んでから長い年月を経ているということ。②本来ならそうなっているはずだという意味で、相手を長生きをして邪魔な奴だと罵って言うこと。<注>「拱」の字が「木へんに共」となっている底本もあるそうです・・・。
④
(裘袍) :問題文(注)のとおり。 裘:キュウ、かわごろも 袍:ホウ、ボウ、
わたいれ、ぬのこ、うわぎ
⑤
(盈列) :問題文(注)のとおり。これはあまり見ない熟語ですね。 盈:エイ、み(ちる)、あま(る)
では👋・・・次回、「世説新語」最終回です・・・