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漢検1級初合格をめざしている方々への特別シリーズ
①「
露簟清瑩として夜を迎えて滑らかなり」
*出題は「
露簟(ろてん)」の読み。
*出典は、白居易「池上夜境(ちじょうのやきょう)」または和漢朗詠集(の中にある、白居易の同詩)
*勉強になる語句がたくさんあるので全文紹介します(書下ろし文のみ)。・・・知っている人が多いかも知れませんが・・・。
「晴空の星月
池塘(ちとう に落ち 澄鮮(ちょうせん)たる浄緑(じょうりょく) 表裏に光る
露簟(ろてん)
清瑩として夜を迎へて滑らかなり
風襟(ふうきん)
蕭灑(しょうさい)として秋に先だちて涼し
人驚かす処(ところ)無きに
野禽下(くだ)る 新たに睡りより覚むる時
幽草 香(かんば)し
但だ問ふ
塵埃能(よ)く去るや否や
纓(ひも)を
濯(あら)うに何ぞ必しも滄浪(そうろう)に向かはんや」
*通釈:晴れた夜空の星と月の光が池の水に映り、澄み切った穢れのない木々の緑が翻って光る。露に濡れた
簟(たかむしろ)は清らかで、夜を迎えて滑らかになる。風は襟元にすがすがしく、はや秋を思わせる涼しさだ。人に驚くことなく、野鳥が地に舞い降りる。しばし睡りに落ち、新たに目覚めると、かすかな草の香りが芳しく漂う。ただ問いたい、私は俗世の塵を洗い落とせたかどうか。滄浪の水で冠の紐を洗うと言うが、この池でも我が身を浄めることはできるだろう。
*
清瑩:「せいけい」としている人が多いけど「せいえい」ではないかと思う。
瑩:エイ、あき(らか)、つや(やか)、みが(く)
*露簟:露の降りたたかむしろ。
清瑩:清らかで輝きを帯びていること。
風襟:襟首に風が訪れること。
蕭灑:さっぱり、すっきりしているさま。
*
纓:エイ、ヨウ、
ひも、むながい、まと(う)
②「余韻
嫋嫋として、 絶えざること
縷の如し」
*出題は「
嫋嫋(じょうじょう)」の読み。
*出典は、蘇軾の「赤壁賦」
*「客に
洞簫(どうしょう)を吹く者有り。歌に倚りて之に和す。其の声鳴鳴然として、怨むが如く慕うが如く、泣くが如く訴えるが如く、
余音
嫋嫋として、 絶えざること
縷(る)の如し。
幽壑(ゆうがく)の
潜蛟(せんこう)を舞わしめ、 孤舟の寡婦を泣かしむ。」
(その時客に洞簫を吹くものがあり、歌を歌ってこれに合わせた。その音色はむせび泣くようで、恨むようでもあり、慕うようでもあり、泣くようでもあり、訴えるようでもあった、余韻は細く長く続いて、切れ目のないのは細い糸のようである。それを聞いて深淵に潜んでいた蛟(みずち)は水から飛び上がって空に舞い、孤舟の寡婦は泣いたのであった。 )
*
洞簫=簫の笛、
縷=糸、嫋嫋:音声の長くひびいて絶えないさま
幽壑=深淵 蛟:想像上の動物で、洪水を起こす竜。
*「縷」は、目を凝らしてやっと見えるほどの細い糸の意。ここは、
「縷(いと)」と読んだほうが良い と思う。
縷:
ル、ロウ、
いと、いとすじ、ぼろ、くわ(しい)、こま(かい)
③「
儁傑にして議論今古に証拠す」
*出題は「
儁傑(しゅんけつ)」の読み。
*出典は、「唐宋八家文 韓愈 柳子厚墓誌銘 (四ノ一)」の一節。
*「・・・儁傑
廉悍(しゅんけつ
れんかん)、議論今古に
証拠(しょうきょ)し、経史百子(けいしひゃくし)に出入(しゅつにゅう)し
踔風発(たくれいふうはつ)、率(おおむ)ね常にその座人を屈し、名声大いに振るう。一時皆慕いてこれと交わり、諸公要人争って我が門下に出でしめんと欲し、口を交えてこれを
薦誉(せんよ)す。・・・」(俊才にして鋭く、議論の際には古今の論拠をあげ、経書・史書・諸子百家を自在に引用して言論風発、ほとんど同席の士を論破したので、大いに名を挙げた。一時はみな子厚と交際することを求め、身分の高い人は争って自分の一門に取り込もうとして、口々に誉めそやした。)←<寡黙堂ひとりごと>さんのブログ:「詩吟と漢詩・漢文が趣味です。火曜日と木曜日が詩吟の日です。花も酒も好きな無口な男です。」から借用させてもらいました。
*「踔風発」は四字熟語辞典にもありますが、対象外。
④「愚臣、
不諱の朝に処(お)る。」
*出題は「不諱(ふき)の読み。
*出典は「貞観政要」(求諌・第2章の中の一節):「愚かな私は、忌みはばからずに直言できる朝廷に居ります」という意。
*「不諱」:忌み憚ることなく言うこと、遠慮なく言うこと。(避けることができない意)死ぬこと。死。
「朝」は「朝廷」のこと。
⑤「異香
冉冉として春風に薫ず・・・」
*出題は「
冉冉(ぜんぜん)」の読み。
*出典は(おそらく)「花柳春話(かりゅうしゅんわ)」(明治初期の代表的な翻訳小説。織田純一郎訳。1878(明治11)~79年刊。リットンの「アーネスト=マルトラバース」と「アリス」を合わせて翻訳したもの。才子佳人の恋愛を漢文訓読体で描いて、のちの政治小説などに影響を与えた由。
*
冉冉:次第に進んでいくさま。徐々に侵し広がるさま。 「 異香冉冉として春風に薫じ・・・(花柳春話 純一郎)」
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