


熟語の読み・一字訓読(実践問題その16)です。回答はマウスを動かせば、すぐ見られるようにしてあります。参考までに、末尾に、解説や周辺知識等を記載しています。当面、1級対象漢字から整理していきます・
問題1 「揩」 ①揩鼓(カイコ) - 揩( す )る ②揩摩(カイマ) - 揩(こ す)る ③揩苔(カイタイ) - 揩(ぬ ぐ )う
問題2 「攘」 ①攘羊(ジョウヨウ) - 攘(ぬ す)む ②湯布院盆地の蝗攘(コウジョウ)祭 - 攘(は ら)う ③労攘(ロウジョウ) ー 攘(み だ)れる ④推攘(スイジョウ) - 攘(ゆ ず)る
問題3 「傴」 ①傴僂(ウ ル) - 傴(か が)む 、(つつし)む ②傴拊(ウ フ) - 傴(かわい)がる
<解説(周辺知識等)>
問題1 揩:カイ、す(る)、こす(る)、ぬぐ(う)
①揩鼓:「すりづづみ」のこと。雅楽の古楽器。二枚の革面を革ひもで締めた鼓。革面をすり、または打つ。鎌倉期頃までは舞楽の左方に用いられた由。もともとは、古代中国の鼓。答臘鼓(とうろうこ)とも言う。インド起源。奏法は左手で一革面をささえて、右手の指ですって鳴らすか、あるいは指弾するとの事。
②揩摩:「こすって磨くこと」と一般的には解されているので、「こす(る)」に対応するとしていますが、「揩摩」:「“揩”という意味は“ぬぐう”ということで、“摩”とは“こする”ということ」としている解釈もあります。
③揩苔:医学・診療用語で「刮苔、揩苔とは舌面の潤燥や舌苔が有根か無根かを、はっきり調べる必要がある場合に用いる方法。 刮苔は舌圧子など で・・・苔をこそぐこと、揩苔は指にガーゼなど を巻きつけて舌面をぬぐうこと・・・」とあるのを見つけました。「ぬぐ(う)」に対応する熟語は日本語ではあまり見かけませんが、中国語の日本読みでは「揩浄(カイジョウ):ぬぐいきよめる、きれいにふき取る意」「揩身(カイシン):漢民族の葬礼における行為で身を拭い浄めること」などがあるようです。また、「涙を拭う(揩う)」意味での「揩涙」・「揩泪」、「汗を拭う(揩う)」意味での「汗揩」、その他、「揩掉」(拭い落す、拭き取る)など、中国語の日本語読みならたくさんあります・・・そのうち、一般的になるかも(^^)
(参考)「揩油(カイヨウ)」:取り次ぎの者がもうけをピンハネして、うまい汁を吸うこと。 「揩抹器」:車のワイパーのこと。「揩嘴布」:ナプキンのこと。・・・すべて中国で使われている用語のようです。
問題2 攘:ジョウ、ぬす(む)、はら(う)、みだ(れる)、ゆず(る)
①攘羊:四字熟語「直躬証父(ちょっきゅうしょうふ)」の元となる故事(論語)から採りました。。「直躬」は「正直者の躬」の意味、「証父」は父親の罪を証言すること。楚の躬という正直者が、自分の父が羊を盗んだことを役所に訴え出た故事・・・葉公はその正直さを称賛したが、孔子は肉親の情を重んじ、子であるなら父の罪を隠すべきだ反論した。「攘羊(ジョウヨウ=ひつじをぬすむ」・・・他に、「攘窃(ジョウセツ)=ぬすむ。入りこんできたものをぬすむ。」
②蝗攘祭:穀物が豊に実りますようにと五穀豊穣を祈る虫追い行列。「はら(う)」意の熟語はわかりやすくて沢山あるのでちょっと変わったものを出しました(^^)。富士浅間神社の中祭(春祭、疫攘祭)にも同意の「攘」があります。他に、攘除、攘夷、攘斥、攘臂、掃攘(特に江戸末期、異国の侵略をはらいのける意)、攘災(わざわいをはらい除くこと)、 撃攘(敵をうち払うこと、撃退)、四字熟語:攘臂疾言、尊王攘夷、竜攘虎搏、攘災招福 ・・・など。
③労攘:つかれみだれること。労擾。「あくせくする。辛苦する」「気づかれ」と解釈している方もいます。例:「風花雪月は本より間なり、而れども労攘の者は自ら冗なりとす。」(菜根譚・・・)他に、論語の一節「北辰其の所に居りて、衆星の之に共ふが如し(論語 - 為政[1])」を解説した伊藤仁斎の言葉に「此れ政を為すに徳を以てせば、則ち無為にして天下之に帰するを言ふなり。若し夫れ政を為すに徳を以てするを知らず、徒に智力を以て之を持せんと欲せば、則ち労攘(ろうじょう)叢脞(そうざ)、愈(いよいよ)理めて愈、理まらず。」と出ています。他に、「攘攘(ジョウジョウ)=入り乱れ混乱すること」、「搶攘(ソウジョウ」 ・・・。四字熟語で、「熙熙攘攘 (ききじょうじょう):人が行き来してとてもにぎやかなさま」、「熙来攘往 (きらいじょうおう):←「熙熙攘攘」と同じ→「攘往熙来 (じょうおうきらい)」、「兵戈搶攘 :激しい戦いのさま。武器が乱れ動く意。「搶攘」は乱れるさま。」 ←「搶」は「槍」と書くほうが一般的かも。
④推攘:「攘位(=譲位)」では簡単なので、やっと見つけました(^^)、ちょっとわからなそうな、「ゆず(る)」意の熟語。町衆としての倫理道徳を説いた江戸時代の石田梅岩の復興の手法に「勤勉・分度(ぶんど)・推攘(すいじょう)」の3つがある由。このうち、 「推攘」とは、「推し攘(ゆず)ることで、まず個人生活においては家計を計画化・合理化して「今年の物を来年に譲る」という貯蓄の道であり、収入や身分に応じて生活を合理化し、余剰を生み出すこと。さらにもう一つ意味があって、この余剰を他に推し攘る。それは親戚や朋友のためであり、郷里や国家のためである。これは共同連帯・相互扶助の教え・・・これらの尊徳の思想の根底には、報恩(報徳)の思想がある」ということだそうです。先人ブロガー(専門家の方かも)に感謝します(^^)
問題3 傴:ウ、かが(む)、かわい(がる)、つつし(む)
①傴僂:字源に、「①せぐくまる ②恭敬のさま ③せむし=傴背(うはい)」とあり、「かがむ」以外に「つつしむ」という意味もあります。<参考>孔子世家: 「一命而僂、再命而傴、三命而俯、・・・」→(低頭、曲身、彎 腰、・・・)とある。
なお、「傴僂」は「せむし」とも「くぐせ(屈背)」とも読みます(広辞苑)。傴背(ウハイ)佝僂(クル):背中が曲がる病気。
②傴拊:いつくしむ。あわれみ愛する。字源「憐み愛する。:下位に居て在上者の憂に任ずるをいふ。」
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