尿が赤い。術後の出血が止まっていないからだ。
カップに排尿しトイレにある自分専用の容器に移していくのだが、真っ赤。まあ上品に云えばワインレッドだ。
毎日一回 量と色を確認する看護師さんも「赤いですねぇ」と云うので
「香りも良いですから、味わってみて」と云って苦笑された。
排尿する度に色を確認するのは、実は恐怖なのだ。
「まだダメか、赤いなぁ」の繰り返し。
(もしかしたら このまま出血死?) なんて縁起でもないことを微かに思う。
だから鉄入りヨーグルトなんてのを何本も飲んだ。
これでダメなら、錆びた古釘を舐めようと本気で考えた。
最悪の場合は、再検査と再手術か。
口いっぱいに管を頬張ったジェームスの痛々しい姿が よみがえる。
でも 気のせいか 昨日から少しだけ淡くなったような気配。毎回濃度が違うので記憶もあいまで、容器に移してしまうとワイン色に負けて隠れてしまう。
それで考えた末に、ヘンタイではないけれど デジカメ持参でトイレへ行くことにした。
回診の時に、いつも困惑顔の先生に画像を見せると「おっ、良いんじゃないですか」と久しぶりの笑顔。
そして今朝も、回診時に昨夜からの継時的な写真と状況説明をした。
まるで どこかの会社の会議に参加しプレゼンテーションをしているようなものだ。
それを食い入るように見つめていた先生二人。
「うん、いいね。いいですよね。退院です。」と即決。
急に聞こえ来た「退院」の言葉に耳を疑ったが まだ身体には自信がなく、
「まだ血が出ることがあるのですが・・・・」と言ったのだが
「大丈夫、大丈夫。退院」と裁決を変えない。
てなことで、急に退院となった。
紙オムツを脱ぎ去り、退院用に用意した勝負パンツに着替え、患者の証であるリストバンドをカットしてもらい、「まだ体をいたわり静かにすること」と云う注意を受け、
迎えに来たルンバとスリスリに荷物を全部持たせて、もう少しで添い寝ができるかと淡い期待を抱いていた天使達に挨拶し下界へ。
昼飯は、テレビのCMを見る度にヨダレを垂らしていたケンタのプリプリエビ。
ツルツル路面の道をケンタへ寄るように指示。草食で動きが鈍くなっていた口を蘇らせた。
しかし体調は下界の空気に馴れていないからか 良くはない。
自宅へ戻って着替えたら即ソファーで横になり爆睡。目覚めたら太陽は沈んでいた。
夕食はスリスリが頑張り、ルンバが監修した特製ラーメン。
さりげなく入っているモヤシと椎茸が良い。
野菜はやはり主張しすぎると敵になる。
あぁ・・・・・・我が家。
添い寝してくれる人は誰もいないけれど、それでもやっぱりここが一番落ち着くなぁ。