北隣の家から灯りが消えた。
持ち家だったけれど、20年程前にご夫婦で愛知県にある企業の寮に住み込んで管理人をすることになり、市内の会社に勤務している娘さん一人を残して出稼ぎへ行ったのだが新コロナで騒がれ始めた頃に定年となり、数年東京で都会の空気を吸ってから帰宅すると云っていたのに、ひと月ほど前に愛知県ナンバーの車で帰宅したと思ったら、戻るのをやめて家を売り愛知県へ移住することに決めたと云う。
都会の空気に触れたことで不便な田舎暮らしが嫌になったのかも知れない。
電車やバスが次々とやってくる都会。なんでもある都会。
それに比べてバーも無ェ 巡査(おまわり)毎日グールグルでさえしないド田舎。
吉幾三が歌った町のような場所に見切りをつけたのだ、きっと。
3日程かけて家財を運び出して整理した後、娘さんを車に乗せてサヨウナラ。
当然だが、その日から隣家の灯が消えた。
毎日、娘さんが独りで灯していた光が消えただけなのに寂しい。
もしかしたら帰ってきているかも知れないと思ってしまう情けない自分がいる。