このお二人はカップルではない。栃木県の藍染職人「大川」さんとお客様。藍染の浴衣に竹のハンドバッグ、山葡萄の草履、‥‥「歩く伝統工芸」と大川さんはからかっている。この人はお客様に「いらっしゃいませ」と言わずに「こんにちは」と挨拶する。これはデパートでの接客ではちょっと珍しいことである。良く知ったお客様に「こんにちは」と言うのは、全然おかしくないのだが、まったく新しいお客様に「こんにちは」というのは彼の人柄が言わせるのだろう。親分肌で彼を頼っている職人さんはたくさんいる。この3年ほどで藍染めの色目といい、デザインといい、どんどん変わっている。
いつも背筋を伸ばしてピンと立っている。きっとこの姿勢が彼の人生観を表しているのだろう。
前回紹介した山形県「しな織り」の石田さんのところにいる職人「加納」さん。スローライフを地で行っているような人だ。ゆっくりとした話し口、落ち着いた物腰、しな織りという自然素材を扱うには一番適した人かも知れない。私のところのお客様とこの「しな織り」のお客様は大変共通性があるようだ。彼が言うには「高江さんのバッグを持ったお客様に声を掛けると非常に高い確率で買って頂いている」そうだ。普段、デパートに出てこない時は、有機栽培のお米を作っている。彼の作る玄米団子は絶品である。加納米蔵と名前が示す通り、米作りに人生を賭けている。彼のスローライフの生き方がお客様をゆっくり、ゆっくり包み込んでいる。
昨年、私の長男が新潟の高校に学校見学に行ったとき、わざわざ新潟空港まで迎えに来てくれた。本人は「すぐ近くですから何でも言って下さい」と言っていたが、後で地図を調べたら、車で1時間以上掛かる所から来てくれていた。