名古屋フォレストクリニック。
南大高駅から、母親の手を引きながら雪の中を歩いた。
この日の情景は、きっと忘れることは無いだろう。
病院はまだ最近出来たのか?白に統一された美しい院内である。
受付を済ませ、暫くして診察していただいた。
診察している先生の写真を撮ることは出来ないので、ロビーに貼ってあった新聞記事だ。
河野先生、雰囲気は吉本新喜劇の「チャーリー浜」を少しふっくらさせた感じの、人懐っこい話し方をする先生だ。
最初は家族構成や、今までの患者の生い立ちなどを聞いている、母親も、敬語を使いびっくりするほどしっかりした受け答えである。
その後、腕を曲げて見たり、体力的な衰えを診る・・・
「桜・猫・電車」と書かれたプレートを見せ、「1分後に何て書いてあったか聞きますから覚えてください。」
その後、
「今日は何日?」
「今日は何曜日?」
「今は平成何年?」
ポンポンポンと早いテンポで質問していく。ゆっくり考える時間を与えないのが、ポイントのようだ
「6・3・8・2」 はい、今の数字を反対から言って
「7・9・5・6」 はい、今の数字を反対から言って
ところで、さっき三つの言葉を聞くからと言ったけど何だった?
「?・?・?」
「ピンクの綺麗な花は?」
「・・・・・・・?さくら?」
「そうそう、じゃあ、次の言葉は?」
「???」
「可愛い動物だよ」
「?? 猫?」
「そう、そうだよ、じゃあ最後の言葉は?」
「????」
「乗り物」
「???電車かな?」「お母さん、感が良いね~」
この後、「野菜を10種類言ってみて」など、幾つか質問をして
CTスキャンや採血を済ませ、もう一度診察を
「あぁ、大体判りました!普通の先生では判らないでしょうな」
「アルツハイマーです。」
CTの結果、小さな脳血栓も見つかった。
今まで、「自分は全然おかしくないのに、ボケ扱いされる」と云う疑問が、専門医によって、初期の認知症と判り納得できたのだろう。
私達家族も、本人の状況を本人に判ってもらうという、一番肝心の現状認識から、方向が決められるので、やっと、スタートラインにたった気持ちである。
病院からの帰り道、母親が「早いうちに判って良かったね!」と、にっこり笑って言ったのが実に印象的であった。