硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

上京雑記。

2018-11-11 20:26:11 | 日記
九段下の駅を降りて、神保町の文字を探しながら階段を上ってゆく。地上に出ると、そこもまたビル群の真ん中であった。ナビで現在地を確認して、神保町方面にむかう。徒歩の場合は、いろいろ見てゆきたいから、地図のように使い、行く方向だけ間違えなければよい。
しばらく歩いてゆくと、「南総里見八犬伝」の滝沢馬琴の硯の井戸の碑を見つける。こんなビル群の中にと、想ったが、馬琴さんは江戸中期の戯曲作家であるから、時代劇に出てくるような街並みがここにもあったのだと思うが、たった200年位でここまで街並みが変わってしまう科学の進歩には畏怖を感じられずにはいられない。川の上の首都高速が走る川を渡り、複雑な交差点を渡り、「もやもやサマーズで観たような風景の中を」しばらく行くと広い通りに出た、道路標識とナビを見て方向を決め歩いてゆく。いろんなお店があって、いろんなものを見せてくれるのだから、大変面白い。早速、レコードショップを見つけ入ってみる。懐かしいジャケットが並んでいる。お客さんはおじさんばかりである。
jpopsコーナーの中に、棄ててしまったレコードがないか探す。音源がCDに代わった時、坂本龍一さんがレコードを棄ててしまったというエピソードに真似て、棄ててしまったのだが、レコードが見直されている昨今、少し後悔している。
そのレコードはCDになっていない為、聞くことが出来ないので、出会ったら買おうかと探してみるも、ない。ないのである。自分のマニアックにあきれつつも、縁がなかったのだと諦め、再び通りを歩いてゆく。
街には古本祭りの登りが出ていてにぎやかであるが、まだ、本通りではない。それなのにたくさんの人がぞろぞろと歩いている。土曜日なのにお祭りのようである。
大きな交差点に出ると、いよいよ古本祭りの中心地、岩波ホールが見えた。ワクワクしながら露店に並ぶ古書を人ごみに押されながら観てゆく。見つけたら買おうと思っている本は、島崎藤村の「夜明け前」である。ネットならすぐに買えるのだけれど、敢えて古本をさがしてるのですが、僕の街では見つけることが出来ずにいた。しかし、ここならばと期待は高まる。岩波書店の本ばかりが陳列されているカフェにはいってみると、驚くほどのラインナップである。無論、夜明け前の上、中、下巻すべてそろっている。他にも気になる本がたくさんあるが、カフェが併設されているので、後ろで食事をしている人がいると思うとじっくりとはいかない。さーっと素早くチェックし店内を一周。すごくおしゃれすぎて落ち着かずそそくさとお店を出た。

それはさておき、神保町の古書店に驚くのは、県立図書館に大切に貯蔵してあるような本が普通に並んでいる事であった。これを個人が買うというのだから文化の高さも群を抜いている。
大きな本屋で、本を吟味する旅の思うのは、長い時間を掛けてい、あらゆる国籍の人達が、言葉を通して、あらゆる手段を講じて表現しているのに、世の中から貧困や争い事が無くならないのはなぜだろうかと考えていたのであるが、ここにきてはたと気づいた。
長い時間を掛けて、あらゆる国籍の人達が、言葉を通して、あらゆる手段を講じて表現しつづけてきたから、辛うじて今の世が成り立っているのだと。

そんなことを考えながら、少し歩いては立ち止まり、吟味し、また歩いては立ち止まり、吟味するという動作を繰り返し探し物する。時頼、面白そうな本に出逢い、手に取って購入を考えるも、ぶれてはいけないとゆっくり本に戻す。誰かが手に取り、購入し、読むかもしれない本であるから、丁寧に扱うのがルールであると思うのだが、本の好きな人が集まっているはずなのに時頼雑に扱う人がいる事にも驚きを隠せなかった。

アダルトDVD屋さんまできて、また、折り返し、見落としがないか店舗側の陳列棚もじっくりとみて、店舗にも入ってみた。しかし、なかなか出会えない。
これは無理かなぁと思っていると、長嶋書店さんの前で、陳列されているある本が目に飛び込んできた、その本には図書館で扱われていた印であるシールが貼ってあった。すごく気になる。何気に本屋さんを回っているとき、時々この衝動が襲ってくる、本が「読んでみて」と、語り掛けてくるという感じかもしれない。手に取り表紙を開き序文を読む。おもわず、「お~っ」と唸ってしまう。
最初は解らなかったけれど、背表紙を開いたところに値段が書いてあるのを知ったので、背表紙を開くと図書カードを入れる小袋がついていて、文教大学越谷図書館のシール、そして、300円の文字。ふむ、これは買わなければと、本を手に持ったままそのまま店舗の中のレジへ向かうと、学生位のお嬢さんがいらっしゃった。本を手渡すと、少し緊張した面持ちで、値段を確認し、レジを打ち、本を丁寧に紙袋に入れてくれたので、お礼を言って、本を受け取った。

紙袋。地方の本屋ではビニール袋しか見なくなりましたが、本屋さんの名前の入った紙袋ってほんとにいいですよね。

書店を出ると隣が日本工業大学らしく、無料でコーヒーが振舞われていたので、お言葉に甘えて、コーヒーを戴く。奥の席に座ると、紙で作る立体的なウサギのキットが無造作におかれていた。壁には大学の紹介がされているモニターと書籍が並べ有れていた。手作り感のある座席から、と切れることなく流れてゆく人をぼんやり見ながら、コクのあるブラックコーヒーを飲み一息。心と体が東京という土地になじんでしまっているのを実感。
このまま、家出。なんてできるわけないか。と苦笑い。しかし、この後どうしたものかと思案。行きたいところはまだまだある。とりあえず、東京駅に行くにはどうすればよいかと考え、天気も良いので、歩いてゆこうかと、ナビを開くと、付近に御茶ノ水駅がある事を発見。

「天気も良いし、時間もある」決まりだな。

ペーパークラフトも気になったが、コーヒーのお礼を言い、大学のフリースペースを出ると、人ごみの中を御茶ノ水駅に向けて歩いてゆく事にした。