今日一日だけ生きてみよう

卯月タラの日々のつぶやき

父との物語

2008-08-06 21:09:10 | タラの日記

こんばんは、卯月です。
今日はヘルパーさんとお掃除をしながら、「ポニョ」の映画の話で盛り上がりました。いつもいらしてくださっているヘルパーさんが、たまたま娘のもと同級生のお母さんということもあり、相性もよかったのか、とても仲良くさせていただいています。
それでも馴れ合いにならず、プロとしてすることはきちんときめ細かくしてくださるので、助かっています。

昨日、父のことを書いて、コメントもいただいたので、もう少し書いてみたくなりました。面白い話ではありませんが、お付き合いくださると幸いです。

私の父は、前にも書いたかもしれませんが、戦前大阪で一番大きかった病院の院長の家に里子に出され、そこ(父の叔母の家にあたった)の長男として育ちました。当然、病院を継ぐべく育てられたのですが、戦争で病院は焼け、阪大の医学部にいた父は事情があって大学を中退し、生家に帰りました。気難しい父は、最後の最後まで、継母に馴染むことも可愛がられた経験もないままだったようで、「ねえや」だけが心の支えの、寂しい少年時代だったようです。

愛情を受けずに育った父は、子どもを持っても子どもにどう愛情を注いでいいのかわからなかったようでした。
姉のことは溺愛していたように見えましたが、姉に聞くと「いつも完璧を求められて苦しかった。パパの娘なんだからできて当たり前と言われて、いつも無理をしていた」と言います。
それでも、可愛らしい顔立ちをしていて、父に似てできも良かった姉は、父の自慢の娘でした。父はどこへでも、姉を連れて歩いていました。

父は医者になる夢を子どもに託したかったようです。二番目は男の子、その子を医者にと考えていたようでした。
私が生まれた時、知らせを受けた父が最初に言った言葉が「また女か」というものだったこと、3日後に初めて私の顔を見て言った言葉が「こんな不細工な娘なら産まなきゃよかったのに」だったことを、ありがたいことに(?)、母は幼い私に言って聞かせました。
パパはお姉ちゃんだけが可愛いんだ。私が男の子じゃなかったから、顔が可愛くなかったから、いけないんだ。パパ、ごめんなさい、女の子に生まれちゃって。おまけにブスで。お姉ちゃんみたいにできなくて、恥ずかしい娘でごめんなさい。

父はまるで私がいないかのように、私を無視していました。ずっとずっと、私と口をきくことはありませんでした。
初めて父としゃべったのは、姉の結婚式の帰りでした。私は18歳になっていました。
「お姉ちゃんがいなくなったから、今度は私なの? そんな虫のいいことはさせない。私にはパパはいなかった。今更、父親面させるもんか。仲良くなんてしてやるもんか」私は思いました。

気難しい、こだわりの強いところがそっくりだった父と私は、その性格ゆえにぶつかり合っていましたが、やがて歳とともに、そうと相手には言わないままに、理解し合うようになっていったと思います。
どうしてそんな行動をとってしまうのか、言葉を発してしまうのか、わかってしまう自分がいました。

それでも「父に愛されなかった」という傷は癒えることはありませんでした。ずっとそれを、私は引きずっていて、父に素直に接することができないままでした。

本を出した頃、私は両親に、親の悪口を書いてある本を見せる勇気がありませんでした。ずっと、本のことを私は親や姉に隠していました。
何年かが経ったある時、ふと思いました。「このままでは私の回復は、成長は、ない。すべてを親に話すべきだ。喧嘩になっても罵り合ってもいい、それが必要なことなんだ。避けて通っちゃいけないんだ」。
私は、姉と両親に、本を送りました。「怒ってもかまわない、最後まで読んでほしい。その後で言いたいことがあれば何でも聞く準備はある」と手紙を添えて。
父が突然死したのは、本が届いたわずか3日後のことでした。

どうしてどうして、もっと早く素直にならなかったんだろう。これから分かり合えると思ってたのに、遅かった。間に合わなかった。
泣きじゃくる私に、姉が言いました。「タラは知らなかっただろうけど、パパはあの本を受け取ったときに、狂喜乱舞したんだよ。『あいつが本を出した! やってくれた! なんとしても自分の目で読み通して(父は目が不自由で、ルーペでやっと新聞の見出しを読む程度だったのですが)、読み終わったら最高の賛辞を贈るつもりだよ』って、電話で言ってたんだよ。本は間に合ったんだよ。タラは最後に、最高の親孝行をしたんだよ」と。

これが、私の、父との物語です。
今は、天国で、私の夫と一杯やっているでしょうか。

長々とお付き合いさせてしまってごめんなさい。
私は父を憎んで恨んで育ちました。でも、それでも父のことが大好きでした。

血がつながっているからつらい、そういうのってあるなあと思います。
うまくまとまりませんが、今日はここまでにします。
読んでくださってありがとう。
またいらしてくださいね、おやすみなさい。