かわずの呟き

ヒキガエルになるかアマガエルなるか、それは定かでないが、日々思いついたことを、書きつけてみようと思う

雨三日、つれづれなるままに、心にうつるよしなしことをなせば……

2011-05-14 | 気ままなる日々の記録

 5月10日(火)、朝の気象情報では、本州南岸に前線が停滞その上台風1号が前線に向かって北上中とのことで、東海地方の向こう3日間は雨とのことであった。私は「ああそうなの、のんびり読書だ」と呟きながらいそいそと書斎に向かったのだが、神の啓示か悪魔の囁きか、何処からか「クロス張りの椅子を直そう!」という声が聞こえてきた。読書好きを自任している私だが根はそれほどではないのかも知れない。

 「クロス張りの椅子」とは、テレビの部屋でもう30年も愛用しているものだが、綿生地が傷み見る影もない状態で、いつもはバスタオルを掛けて使っている。この椅子、買った当時はまあ上等品で、ほどよくリグライニング機能もあり廃棄をためらっていた。恥ずかしいが修理前の姿をお見せしよう。

 こうなると急にそわそわしだす私である。全部分解してクロスを張り替えその後また組み立てる、木部に傷が付いたらラッカーを吹きつけようとか、あのおもちゃのミシンはまだ使えるだろうか、その試運転から始めなければ、などなどいろいろなことが頭に浮かぶ。メジャーを取り出し簡単な図面を書いて資材購入計画を立てる。おもちゃのミシンを取り出し雑巾を縫ってみる。(家内や母が使っていたミシンは電動前の機種でベルトが切れているし分解掃除をしないと使えないことは分かっていた)

 上の写真が手持ちの道具のすべてである。私は雨の中を手芸店へ向かった。大手スーパーに入っている結構品ぞろえにいい店だ。店の中をうろうろする。何処に何が置いてあるかから調べなければならない。ついに「何をお探しですか?」と主任さんらしい中年の店員に不審尋問さえ受けてしまった。それでも結構楽しかった。迷った挙句買い求めた品は、豹模様の厚地綿布W幅3m(1m1,120円)と紐5m(1m200円少々)でトータル4,000円と少し。

 作業は予想以上に難航した。ミシンの糸がすぐに絡まり上糸がよく切れたからだ。ミシンの構造は熟知している。原因は扱う布に対して針のや糸が合っていないからだとすぐに分かったが、手持ちの針も糸もい一種類だけだ。布送りを手助けし少し縫っては止め、布を整えてはまた回した。

 上の写真は縫製を終えて、いそいそと椅子に掛けた時のものだ。ビラビラ下がっている紐はいずれも後ろへ回して縛るためのもので、構造は野暮なほど単純な仕上がりだが、単純こそが頑丈で修理がしやすいという信念でこのようにした。

 上の写真が完成品。要した時間は休憩なしの丸一日。作業中「また、何が始まりましたか?」と冷ややかな言葉を掛けて素通りしていた家内も、「よくなったわねぇ~」と久しぶりに褒めてくれた。自画自賛を得意とする私はもちろん、この椅子はいつ見ても笑いがこぼれてくる。この椅子に腰かけてテレビを見ると一段とくつろぐ。

 私は子どものころ、明治生まれの祖父の後をついて回っていた。その祖父は何でも自分で作る人だった。家には豊富な竹をはじめ古材の板も支柱も何でもあった。つまり、ガラクタと思えるすべてのものが保存されていて、再利用の出番を待っていたのだ。そのとき刷り込まれた「もの」に姿勢が今も私の中で生き続けている。いつか神の啓示を受けて、古いミシンの分解掃除をし、ベルトの修理を始めるかもしれない。

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿