お酒もごはんも蕎麦もお茶もおいしい季節になった。
うちのメニューでは、玉露を頼むと、「すすり茶」で出すことにしている。
久保さんに作っていただいた蓋付きの茶碗に福岡の星野村の玉露を入れ、温度を下げたお湯を
ひたひたにして、出す。それを中国茶よろしく、ずらして一煎。瞬間に毛細血管まで
玉露が浸透する感じ。お菓子は、同じく福岡の秋月の筑前葛でつくった蕎麦豆腐に餡をのせ、
久保さんの志野の茶碗で供する。玉露は三煎くらいを飲んだ後、茶葉をポン酢で食す、のがならわし。
一物一体の法則で、そのものをぜんぶ食べつくす、茶味禅味を彷彿させるようなメニュー。
この「すすり茶椀」をかぶせるような布を編んでいくのが、お仕覆。ふろしきと同じく、日本人は
古来より大切なものは、やさしい布や和紙で、包んで保管したり、持ち歩いたりしていた。
風光明媚な旅先で、旅茶碗にお茶を入れ一服、というのは旅愁と人生の機微を両方味わえてこの上もなく至福の時だ。
明日は「卒啄珈琲塾」と「無茶しぃの会」 珈琲の味も春夏秋冬があってしかるべき。人生の春夏秋冬によって味わい
も変わってくる。お茶もしかり。蕎麦や酒もしかり。新そばの風薫る里にぶらり旅