押上に天真庵を結ぶ前、池袋にいたころは、目白の
ヨネクラボクシングジムで10年ボクシングの練習をしていた。
東洋チャンピョンや日本チャンピオン、ランカーたちがひしめいていて、
試合ごとに後楽園ホールに応援にいった。
昨日は7年ぶりに、聖地へおもむいた。ボクサーというのは、平均で
3年くらいが選手寿命だと思う。デビュー戦を控えて、減量中に怖くなって
逃げ出したボクサーがいたり、デビュー戦でKO負けすると9割がジムに来なく
なるし、4回戦ボーイから6回戦ボーイにあがる時、相手も強くなるし、スタミナ
はいるし、限界を感じる大きな壁ができる。日本ランカーになると、ワンパンチで
KOされるような緊張感の中で試合をしなければならない。そしてうまくいって
日本チャンプになったりすると、それをスーと通りすぎ世界に飛翔していくような自分より強い相手
を相手にすることになる。そのそれぞれの段階で「負けてはいけない」スポーツであり、リングへあがると
どちらかが、リングから去る宿命を負うような過酷な戦いの場でもある。
うちの常連で、名にし負う動物病院の医院長が同じく無二のボクシング好きで、昨日
は汗が飛んできそうなリングサイドで並んで観戦。アラカンのふたりが、ボクサーよろしく
体をウェービングさせたり、拳をにぎりながらリングの戦いを観戦。
セミファイナルに小口幸太くんが青コーナーにのぼった。小西畳店の長男と、
漢字は違うけど、言霊では同じ。20戦8勝12敗。負けこんでいるけど、
応援団の数や人気がすごい。ヤジも温かいけど、よく知っている身内みたいな
あたたかさがある。リングに上がる時から「今日はいけそうな顔してるやん」
とか「ちゃんとやれ」「油断するな」
最終ラウンドまでもつれて互角のような感じがしたが、惜負。13敗めになったけど、
なんかすがすがしい気分になった。ファンが多いのは、彼の人柄によるものだろう。
またリングの上で9勝目を目指して戦ってもらいたいものだ。
メインイベントは、共栄ジムのランカー、白石豊土くんと三迫ジムの福本雄基くん。
白石くんは北九州戸畑出身。ぼくの大好きな戸畑提灯祭りがあるとこ。
少しガラの悪いところで、子どものころケンカをするのに、三白眼で
「キサン、クラッソ」みたいなことをいう。自分も生まれがそのあたりなので、小さい
ころからリングはなかったけど、クラシあった記憶がある。
北九州魂とパンツにプリントしている白石くんが勝った。
ボクサーも現役を退いた後の人生が長く、それをどう生きるかが大事だ。ぼくたちと同じで、
拳ひとつで命がけで戦っているのも、人生の縮図そのものだ。
ひさしぶりに大山の「岩本」にいきたくなった。同じ年で、元ヨネクラジムで
日本チャンピオン。今は日本でいちばん元気な鮨をにぎるチャンピオン。
毎年かみさんの誕生日に電話をくれ、リングで相手を倒すような勢いの
大きな声をはりあげ「おめでとうございます。」をくれる人だ。
久保さんの器も使ってくれているナイスガイ。