腕時計修理専門店・トゥールビヨン店主のブログです
腕時計の修理の詳細や腕時計のトリビア、店主の個人的な趣味の話などを気の向くままに書いております。
 



昨日のサブマリーナに引き続き、今日は“サブ”の親戚筋というか兄貴分の“シード”ことシードゥエラーのご紹介。



シードゥエラーが登場したのは1971年。初代シードゥエラーは風防がプラスチックにもかかわらず、610mの防水性能がありました。それが80年代に入り、サファイアガラスを採用してから4000フィート=1220m防水へと飛躍的な向上を見せます。
昨日のサブの写真と見比べていただいたら判るように、ガラス面にサイクロップレンズが付いていません。なぜか?ガラスとレンズの接合面が水圧に耐えられなくなってガラスが破損するのを防ぐ為です。なるべく凹凸は無くしたいってことでしょう。
もう一つ、シードゥエラーを語る上で欠かせないのが“ヘリウム・エスケイプメント・バルブ”です。
ちょうどリュウズと反対側(ケース左側)に付いているこれ↓

なにこれ?

海底調査や潜水を職業とするプロダイバーと呼ばれる方たちは、海底基地や潜水船で長期間生活します。その空気またはエアータンクには地上の空気よりもヘリウムガスの混合比率が高いエアーを使用しています。これはダイバーの体内のヘリウム濃度を人工的に飽和状態にしてから潜るいわゆる飽和潜水をする為です。飽和潜水の詳しい説明はこちら

で、この穴は何のために付いているかといいますと、このヘリウムガスと言うのは気体の分子構造が非常に小さいため、あらゆる計器の内部に浸透する性質を持ちます。もちろん時計の内部にも入り込みます。で、ダイバーが減圧室で減圧する際、内部に溜まっていたヘリウムガスが密閉した時計の圧力に耐え切れず「ボン!」とガラスを破損する事故が相次ぎました。原因はヘリウムだというのがすぐに判明した為、時計の内部に圧力がかかったら自動で内部のガスを逃がす穴を付けた、という訳です。
オメガのシーマスタープロフェッショナルにも10時位置に付いています。
これ↓

オメガの場合は手動でネジを開きます。今まで「何?このネジ?」と思っていた方もスッキリ解決。これで熟睡できますね。


二日間にわたって小難しい話になりましたが、御清聴ありがとうございました。
来週からガラリと雰囲気を変えて『下ネタ週間』にしようかと考えている腕時計修理専門店トゥールビヨン店主。
下ネタかよ!


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