腕時計修理専門店・トゥールビヨン店主のブログです
腕時計の修理の詳細や腕時計のトリビア、店主の個人的な趣味の話などを気の向くままに書いております。
 



台風の影響でしょう。

南からの湿った暖かい風が吹き込んで、昨日から蒸し暑い大阪。

寝苦しいったらありゃしない。

今朝は7時半頃から30分ほどだったが一時土砂降りになりました。

地元は今日からだんじり祭りなのに、雨は可哀想。

6時半頃ふと目が覚めたら遠くでトントトントントトンと小太鼓の音が聞こえていた。

風邪引かないでくださいね。


で、昨日の閉店間際に30代の男性客が電池交換で来店された時の話。

お客様「電池交換できますか?」

店主「どんな時計でしょう?」

鞄から出した時計はシャネルのJ12...のコピー品。

店主「できますよ。すぐ入れ替えますんで、座って待っててください」

お客様「時計本体の側面が割れてしまってるんですけど、これは直りますか?」

ケースの側面の黒いセラミック(陶器)部分がバッキリ割れていて欠損していた。

店主「これは無理ですねぇ」

お客様「じゃあ、とりあえず電池交換だけお願いします」

店主「かしこまりました」

と、店頭のベンチを勧めた。

5分足らずで電池交換が仕上がり、お会計を済ませた。

お客様「この割れた部分の修理はやっぱり正規店へもっていかないとダメなんですか?」

店主「あの~、これ、コピー品ですよ。パチモン」

お客様「えっ!?」

店主「コピーなので、正規店へ持って行っても取り扱ってくれませんね」

お客様「あぁ、そ、そうですか。 分かりました」

ちょっとショックだったようだ。

コピーと知らずに使っていたんだろうか...


と思いながら見送ったら丁度6時半になったので閉店作業に取り掛かった。

店頭に出している時計バンドの什器や備品を店内に仕舞い、シャッターを下ろしかけたその時、さっきのお客さんが小走りで戻ってきた。

お客様「す、すみません!この時計、どこでコピーと分かったんですか?」


コピー商品にもランクがあります。

ほとんど見分けのつかないスーパーコピー(Sランク)から作りの雑い超粗悪なB級品まで色々。

お客さんのJ12はB級品とまではいかないが、割と分かり易いランクの代物。


お客様「どこでコピーと分かったんですか?」

なめてもらっちゃ困る。

何年この業界にいると思ってんだ!(笑)

店主「全然違いますよ」

お客様「えっ!?」


コピーかどうか分からないという人は、本物を知らない場合がほとんどです。

なので「この部分が違う」とか、「この色がどうだ」とか言ってもピンとこない。


店主「一度、シャネルの直営店か百貨店のシャネルへ行ってみてください。ショーケースに時計がズラッと並んでますよね」

お客様「はい」

店主「時計を触るのはタダですから、『ちょっとこれ見せてください』って言ったら持たせてくれます。持ったら一発で分かりますよ」

お客様「はぁ」

店主「ビックリするくらい違いますから」

お客様「へぇ~」

店主「驚くほど違います」

お客様「驚くほど...あ、ありがとうございます」


閉店ガラガラ。


この場合、あの男性客は本物かコピーか知らなかった。

ということは誰かに貰った時計だということになる。

コナン君でなくてもこれくらいは分かる。


シャネルのJ12。

買えば30万か50万か。

そんな高級時計くれる人いてる?

貰った時点でコピー率8割5分。


しかし本物を貰うことも当然ある。

結納返しとかでブランド時計を贈られることも普通にある。

奇跡的に親戚のおじさんがZOZOTOWNの前澤社長ってこともないとは限らない。


でも殆どが大学のサークルの先輩が卒業する時に「おい、これやるよ」と言われて貰ったヤツとか、東南アジアの出張帰りの会社の先輩から「これ、土産」って貰ったヤツとか、専用BOXに入ってなくてプチプチに包まれたヤツとか、ブレス(ベルト部部)がどこから剥くのか分かりづらいピチ~ッとしたサランラップみたいなビニールに包まれたヤツとか...

上記のコピーの確率は12割。

間違いない。


本物か偽物か分からない場合はお近くのブティック(直営店)もしくは正規代理店へ行ってみましょう。

その際「この時計本物ですか?」などと持っている時計を見せるのはNG。

もしコピー品だったら大恥かきます。

時計は着けずに行きましょう。

そしていかにも買うつもりというオーラを出しながら勇気を出して「すみません、この時計見せてもらえますか?」と言ってみましょう。

ショーケースから出してもらった時計をジックリ触って感触を確かめ、細部に亘ってチェックしましょう。

その際、文字盤だけを注視するのではなく、ケース裏やケースとブレスの繋ぎ目、ブレスのバックル部分のヒンジの感じ、留め具合、駒のしなり具合、滑らかさ、質感などを記憶しましょう。

「Don't think. Feel」(考えるな、感じろ)とブルース・リーも言っています。

短時間でできるだけ感じてください。

更に店員さんにどんな付属品(箱、国際保証書、取扱説明書等)が付くのかなども聞くのもいいかもしれません。

で十分確認できたら「ちょっと考えます」「また来ます」などと適当に言って店を出ましょう。

その時、慌てて出たら怪しまれますので、ついでにジュエリーやバッグなんかもゆっくりと見て回りましょう。

そして店を出たら自分の持ってる時計をポケットから出してさっきの本物の感触が残っている間に比べてみましょう。


ね、驚くほど違うでしょ?

え!?

違いがよく分からない!?


無理してブランド品を持たないほうがいいかもしれませんね...(汗)


店員さんに「お取り置きしておきましょうか?」と言われても決してひるまないでもらいたいと思う腕時計修理専門店トゥールビヨン店主

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