明日12月27日から二泊三日の関西旅行です。交通費節約のために、車での移動です。姫路、京都、そして奈良へと、まるで昔の修学旅行ですよ。 . . . 本文を読む
孝男の勤める銀行においても、上司からの叱責に給湯室に駆け込む女子行員がいる。男子行員の殆どが、その上司に対して「そこまで言わなくても」といった顔を見せる。しかし孝男はそう思わない。どころか心内で、泣くぐらいなら手を出すなよ、と思う。己の能力以上のことに手を出して、結果失敗したとなれば叱責を受けて当然だ。過信は慢心だ、と思う。 . . . 本文を読む
言葉にするにつれ、すべてが消えていった。兄妹と口にした途端に、早苗が女に見えた。身内と口にした途端に、早苗が見知らぬ女に感じられた。好きか? と口にした途端に、激しい劣情が湧き上がってきた。涙目の早苗が、憂いを秘めた女に見えてきた。 . . . 本文を読む
「早苗の気持ちは嬉しいよ。でもな、僕たち二人は兄妹みたいに育ってきたじゃないか」
涙目の早苗にティッシュを手渡しながら、低いトーンでなおも続けた。
「早苗の気持ちは嬉しいよ。こんなステキな女の子に想われ続けて、ほんとに嬉しい。
これは、本心だ。でもな、だめなんだ。どうしても考えられないんだ」 . . . 本文を読む
彼の前にお膳を置いた早苗は、お屠蘇を差し出した。
「なんだよ、早苗がするのか? お母さんを待つよ」
「おばさんに、頼まれたんだもん。少し遅くなるからって、お願いされたもん。さあ、おじいさんが起きる前にすませようよ」 . . . 本文を読む
早苗は不思議そうな顔で、彼を見下ろした。
段差があるとは言え、早苗に見下ろされるとは、思いも寄らぬ彼だった。
“子供だ”と馬鹿にしてきた彼だったが、いつの間にか早苗の身長は伸びていることに驚いた。 . . . 本文を読む
昨夜の雪が嘘のような晴天だった。
道端に残っている雪が、大雪だったことを証明しているだけだ。
車の行き交う道路は、もう殆ど乾いている。
時折チェーンを巻いた車が走っている所を見ると、裏通りには未だ残っているのかもしれない。
彼が目覚めた時には、既に真理子の姿はなかった。
あの日のように、走り書きのメモがテーブルに残されているだけだった。
おはよう、タケシさん。
先に、帰ります。一緒に帰る . . . 本文を読む
やっとの思いで国道に辿り着いた。走行中の車はまばらではあったが、雪はシャーベット状になっていた。信号待ちの折に車から降りると、フロントガラスの雪を取り除いた。雪まみれになったコートを脱いで車に乗り込むと同時に、信号が青に変わった。 . . . 本文を読む
「雪道の経験、ないのよね。いつもお父さん任せだから」
「ゆっくり走れば、大丈夫さ」
心細げに言う真理子に、彼は励ますように答えた。何かアドバイス出来ればと考えてみるが、何も思いつかない。 . . . 本文を読む
突如、雄叫びが響いた。
神社の方角から聞こえた。
どうやら、新年を迎えたらしい。
「タケシさん、明けましておめでとう!」
「明けましておめでとう。今年も、よろしく!」
「わたしこそ、よろしくね。ねえ、タケシさん。前に、来ない」
「そうだね。バックミラー越しでは、話しにくいよね」
車外に出ると、雪が道路を覆っていた。
ホンの四・五分だというのに、五センチ程の積雪になっている。
雪は、間段なく降り . . . 本文を読む