イタリアワインかぶれの料理人

イタリアワインとコーヒーが大好きな料理人が、呆れるほど愉快に溢れるイタリアワインの魅力を伝えていきます。

クズマーノ社のピノネロ

2009-07-29 09:48:55 | インポート

先回のピノ ネロに続きクズマーノ社のピノ ネロを紹介します。このワインは、1週間ほど前のF社の試飲会に出されていました。当日は目当てのワインがなく、チェックを兼ねての試飲をする中に、ゆっくり1本に付き合いたいと思わせたワインがありました。そこで、担当者に無理を聞いてもらい、その場からこのワインを連れて帰る運びになり、10日間ほど落ち着かせてからの試飲をすることにしました。
シチリアのワインの良さを、理解が出来るようになると避けて通れないワインがネロ ダーヴォラ。これが難物で私を受け入れてくれるワインに中々巡り合えずにいるとネッレロから造られるロゼ ワインに急に心がときめかされ、ファーロとエトナ ロッソの美味しさに目覚めました。今回はこのエトナのセカンド ワインを見たくて来たのですが。しかし、当初よりクズマーノ社のワインがメインの試飲会であったために、今回出展はされてはいませんでした。
その中で目に止まったのがこのピノ ネロです。印象はサクランボ、桑の実、カシスの奥深く円熟した香りに、奥底にグスベリーの溌剌とした香り。まとまりのよい清楚な酸にシルキーなタンニン、しっかり構成された果実味にミネラリーな味わいが心地よく、フルーティーなアフターテイストに小さなため息を吐くような余韻を残します。このようなコメントを考えながら、いつものように、酩酊船に揺られながらベッドへ。


フリウリのピノ ネロ

2009-07-17 09:39:52 | インポート

今回のコンティ フォルメンティーニ社のピノ ネロは今年の春のM社の内覧会で購入を決めました。ブルゴーニュのワインを一番に挙げる人達には、面白くも何もないワインだと思います。フリウリ地方は北イタリアといえども日本の最北端の稚内市と近い緯度に位置しています。ブルゴーニュに比べるとよりたくさんの太陽を浴びます。そのために、仕上がるワインは当然のごとくポリフェノールの量も多くなり色が深くなります。

フリウリの印象に残っている春の訪れは、春先の温かさは寒さが去るのではなく、ミモザに誘われるように暖かさが景色を変えていくように思えたことです。その事を急に思い返され、これだけで購入を決めました。ミモザの香りがする訳ではありません。香りと味わいの印象が黄色に感じられ、春めいた気分にさせられたからです。

ブルゴーニュのワインによく言われるような、森の赤い果実の香りより、サクランボのような香りが第一印象に感じられます。とにかくフレッシュさが前門に出ています。内覧会の時にはすでに飲み頃になっていました。しかし、この飲み頃を迎えて、さらにじわっと後から酸が乗ってくる期待感を込めてセラーで抜栓を待っています。今回は到着してから1ヶ月ほどで試飲してみましたが。思ったようになっていません。同社のメルローも3年前にセラーにありますが。これは、酸が和らいではいるものの、ちょっとだけ期待をはずした感があります。

価格はワインショップで2000円前後、当店での抜栓価格は3500円です。


大七 木桶 純米キモト

2009-07-09 09:17:57 | 食・レシピ

日本酒に生酛造りというのがあります。生酛造りと乳酸発酵というキーワードだけを記憶に日本酒好きのSさんに、このことを話していたことがあり。その事を覚えていただいて、大七酒造の木桶で醸した純米生酛をわざわざ持ってきて頂きました。私の記憶にある日本酒は、味わいに酸があったような気がしています。かれこれ、30年以上も真剣に飲んだ事がないので、日本酒事情がさっぱりわかりませんが。この大七は甘さの中におぼろな輪郭の酸が後口の最終章をクリアーに締めくくっています。若かりし頃教えられたうまい酒は、このような味がしていたような気がします。燗もいろいろ試してみましたが40度以上に温度を上げると、苦みがざらつくような気がしました。私は緩々としたダラ燗が好きなこともあり、人肌に温もった頃か、室温が美味しく頂けました。酔いを楽しみながら、思いついたことは、ヴェルディッキオに雰囲気が似ているなと思ったことです。それよりも、プロヴェンツァ社のルガーナがより似ているかなと考えながら。そう言えば、ソアーヴェを灘の剣菱に例えていたことを思い出し、懐かしく思いながら。あの頃の若気のいたれり、とピュアーな自分、そして苦さと温もり。器の中の風景が語り掛けてくれることは、ほろ苦い思い出を酔い心地の良いお酒が、楽しいことばかりを記憶の書庫から取り出してくれます。