今回のイタリアワインは、キアンティ クラッシコ リゼルヴァ ヴィーニャ ディ フォンタッレ(Chianti Classico Riserva Vigna di Fontalle)1997です。抜栓し一口めは、フレッシュなブドウ ジュースを思わせる味と香り。色も老成した濁りはなく、透明感があり深遠なルビー色。味わいに複雑さはあるがアルコール感がなく、「あれれ」といった感じでした。
注がれたワインはグラスの中で大きくアクビをしています。淀みの中に浮かぶ泡沫のように、そろそろと浮かび上がりながら、果実味にエーテルのドライブ感を与え、そして、酸が加わりアンゴラのような滑らかなタンニンが実に気持ちのよい後味を残します。味覚がフェードインするように徐々に覚醒されます。バランス感覚が整然とした上品な味わいは、華奢な作りのフレームの中に、背景が鮮やかな絵画でも見ているような印象を深く残します。
スミレやアイリスの香りが、このキアンティにはあります。近頃のキアンティはプラムのような果実の香りに、ココアやチョコレートの香りのニュアンスを感じさせることがありますが。以前のキアンティに感じていた味わいや香りのニュアンスを思い出させてくれました。
キアンティの味わいや香りの表現方法の変化は能動的なのか受動的なのかは解りませんが。動きがあることだけは確かだと思います。最近リストに加えた2006や2007は5~6年から10年後が楽しみなワインです。しかし、将来の姿を言い当てることは難しく、確信がある訳ではありませんが。それにしても、趣向の変化を的確に捉え、趣向の変化に対応したキアンティならよいのですが。方向性を見誤ってほしくはないと思っています。長距離を走るマラソン ランナーがマッチョな肉体に作り上げることはしないと思います。
このイタリアワインは1997から随分と間が空きました。予算が潤沢にあれば毎年でも欲しいワインですが。思い通りに買い置きが出来ずにいます。間が空いたということもあり、なおかつケースでしか出荷しないこともあり、無理をしてケースごと買いました。
バローロ、バルバレスコはRenato Rattiの近代化の後に、Gayaのバリック(225リットル)樽で熟成する変革は、世界の目をランゲに向けさせます。それに刺激されるようにバローロ ボーイズの出現につながり、うねるようにネッビオーロから造られるワインを変えていきました。今はと言えば、元の大樽に戻したり、新樽の比率を下げたりと、グローバルからローカルなスタンダードに立ち返り、表現者としての側面を前面に出すことで、ワインの価値を高めていると思っています。
ミケーレ キャルロのバローロ チェレクイオをリストオンした1996から現在まで醸造方法は変わっていません。それ以前の醸造方法は資料がないので解りませんが。80年代からの評価を見ても、おそらく、この方法で一貫していると思います。
最近のバローロ、バルバレスコはリリースされると同時に抜栓しても、飲みやすいと感じます。5から10年かけてようやく開いてくれるワインはセラーの中で眺めているだけで楽しくなりますが。売り手としては無駄な期間と考えるか、有意義な時間と考えるかは、悩ましいことだと思います。
今回、ワインリストに加えた、Vini Buoni以外が高得点を付けたサンジョヴェーゼ ディ ロマーニャ スペリオーレ リゼルヴァ “プルーノ”(Sangiovese di Romagna Superiore Riserva “puruno”)2008です。この価格帯のワインがこれほどに高い評価をされたのは、あまりないことだと思います。試飲もせずにリストに加えましたが。5年後くらいが楽しみです。
このワインは、2012年2月にD.O.C.G.に昇格すると共に名称がロマーニャ サンジョヴェーゼ(Romagna Sangiovese)に変更になります。
ついでに、私事ですが。調理師試験に合格しました。今の食品衛生責任者のままでも仕事はしていけるのですが。去年、ソムリエ呼称認定の2次試験が不合格でした。再試験までのモチベーションを維持する意味合いもあり受けることにしました。
私の勉強方法は、最適な教則本を探すことと、過去の問題集を手に入れることです。今回は社団法人日本栄養士会編の調理師読本第16版を教則本に選びました。その中で意味が深いなと思ったのが、食文化に及ぼす調理の功罪「食文化による食物の価値判断は、食品の段階ではなく、必ず調理の段階で行われることになる。」です。料理の価値判断を調理の作業に見いだす。意味深長な問題であると考えるのは私だけでしょうか?
この教則本を勉強をしていて、解けた問題が一つあります。それは、サトウキビから味の素です。これは、「グルタミン酸菌が糖質と無機窒素からグルタミン酸を作る性質を利用して、化学調味料の製造に使われる。」です。製造の仕組みは解りませんが、作られ方を言われてみれば、なるほどといった感じです。それにしても、味の素溶液と昆布水の味わいを比べると似てないように感じますが。いかがなものでしょうか。
今回、ソムリエ呼称認定を受験したのは、日欧商事主催のJET CAPに出たいためです。それには、JSAソムリエの有資格者でないと出場が出来ません。
しかしながら、今回の勉強は無駄にはなっていません。見聞が広がり、他国のワイン見方が変わりました。
ソ-ヴィニヨン ブランをまず、取り上げると。2000年前後に醸造の最中に酸素と接触を遮断する醸造に切り替えることで、苦みを最適にすることが出来たのではと思っています。
この事はイタリアでもヴェルディッキオとソアーヴェに同じような現象が起こっています。この事は、以前ウマニロンキ社の講習会の中で、醸造設備の更新をした目的の説明があり。その内容が、この酸素との接触を完全に遮断することでした。その時に理解をしたことは造り方によって、何となく漂う好ましくない苦みを心地よく感じるか、まるでホップのようにワンポイントにおいしく感じる苦みなのか。苦みに対する印象は変わっていくのだと思いました。
以前ならばこれらのワインとゴルゴンゾーラのようなチーズとの相性は最悪だと思っていましたが。今はナッツのあま皮やローストした芳ばしさか、柑橘類のピールに違和感を覚えるようなことはないと思います。
ソーヴィニヨンに話を戻します。ウマニロンキ社の設備更新の話には、その前に富永教授の甲州とソーヴィニヨンの、これからの醸造の方向性について書かれた本の内容が記憶の中にあったからです。
本の形態は忘れましたが酸素との接触について書かれてあったと記憶しています。あまり深く考えずにいたので残念でなりませんが。理解を深めていれば、ウマニロンキの講習会はもっと有意義なものになったと思います。
オーストラリア、ニュージーランド、アメリカにも高い評価を得ているワインはありますが。ムスクや猫尿臭のような動物的な香りを、私はどうしても好感が持てません。好んで飲む人がいるのも事実ですが。これはワインの特性ではなく、完熟していないブドウに由来する香りらしいというのを聞きました。ではボルドーのソーヴィニヨンがすべそうであるかと言えば、そうではない。ワイン造りの方向性がどっちを向いているのか。そこが解らなければ、軽々しいことは言えないと思います。
去年からデキュシタン対策で数多くのワインを試飲しました。特にチリや南アフリカなどのワインは、思いこみでワインの印象を語ってはいけないと思いました。確実に造りは変化しています。これからもイタリア以外は買ってまで飲まないと思いますが。一人のワインファンとしてイタリア以外も注意深く、いとおしむ様に見守りたいと思います。
明日は吉報が来ますように。