鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

枝菊透図鍔 京正阿弥 Kyo-Shoami Tsuba

2015-12-07 | 鍔の歴史
枝菊透図鍔 京正阿弥


枝菊透図鍔 京正阿弥

 菊花を意匠しながらも構成に写実味よりも変化を見出した作。この背景には唐草文がある。菊は家紋のように単純化されているが、葉は見るからに菊の葉と捉えられる。説明は不要だ、素敵な美観が漂っている。このような構成の鍔に、古萩と分類される作品群がある。長州鍔工の先駆を成す職人群が遺したもので、透かしの線の太さは変化に富んでおり、似た構成ながら一際素朴である。とにかく面白い。このような作を遺した職人の構成感覚の確かさを、改めて思い知らされたように思う。

菊花透図鍔 赤坂忠時 Tadatoki-Akasaka Tsuba

2015-12-05 | 鍔の歴史
菊花透図鍔 赤坂忠時


菊花透図鍔 赤坂忠時

何て素敵な構成なんだろうかと、またもやつぶやいてしまう。菊花を放射状の線で表し、その所々に菊の葉を配して陰陽変化のある空間を演出している。ストレートに伝わり来る透し模様でありながら、複雑さ故に文様を目で追い、改めて陰影を確認し、その独特の切り口の様子に赤坂鍔の美観を再認識する。このような作品に粋を感じとっても良いだろう。

枝菊透図鍔 西垣 Nishigaki Tsuba

2015-12-04 | 鍔の歴史
枝菊透図鍔 西垣


枝菊透図鍔 西垣

 なんて素敵な構成なんだろう。江戸時代前期の肥後西垣派の作。肥後金工が茶の美意識を備えているとは言われる。鉄地に錆を活かした質素な風合いを主体とする美観があることから、なるほどそうだろうなとは感じる。それだけではない。本作のように雅な風情を漂わせる作もある。耳が菊花、透かしにも菊花があるも、傘、雁金などがあり、複雑な文様となっている。古作の耳と切羽台を風雅な文様で繋ぐという透鐔の変化形である。鍔の形は円に近いものではなく、すこし歪みのある鄙びた形。ここに西垣派の特徴がみられる。

文繋透図鍔 古赤坂 Ko-Akasaka Tsuba

2015-12-02 | 鍔の歴史
文繋透図鍔 古赤坂


文繋透図鍔 古赤坂

 耳と切羽台を様々な文様で繋いだ構成の図は、京透しや尾張鍔に間々見られるが、この鍔は江戸時代初期の赤坂鍔工が製作したもの。赤坂鍔工は、京都から江戸に移住した鍔工と考えられており、独特の新味のある風情を漂わせた鉄地透鍔を遺している。同時に古作を手本に製作しておりこのような尾張鐔に紛れる作もある。さて、この鍔の耳が菊花形になっているのは容易に判ると思う。この作例のように、菊花形の造形は時代を超えて好まれていたのであろう。切羽台と耳とを繋いでいるのは雅な文様であり、菊花とは全く無関係な事物だ。ここでは扇子、茶筅、抱茗荷紋、雁金、円弧文。これらにより素敵な陰影が生み出されている。古赤坂とは、赤坂派の中でも初、二、三代までの時代の上がる工のこと。

菊花透図鍔 越前住記内 Kinai Tsuba

2015-12-01 | 鍔の歴史
菊花透図鍔 越前住記内


菊花透図鍔 越前住記内作

 越前に栄えた記内派は、鉄地地透の手法で製作する鍔工の中では、図柄構成が様々で頗る面白い存在である。這龍など刀身彫刻で知られているが、鍔もたくさん残して江戸時代末期まで知られている。この鍔は頗る簡潔な表現からなる菊花だ。先の古金工と同じだが、鍔の造形を角形にしている。天地左右に角部を設けているため、伸びやかに見え、すっきりとしている。