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財務省は来年度の予算編成に向けて、高齢化で膨らみ続ける医療や介護などの社会保障費を抑える見直し案を明らかにしました。

2017-10-26 14:38:06 | Diaries
逝く間際の「Thank You」のために 

第4章 マザーテレサが教えてくれたこと どんな時で人は笑顔になれる 渡辺和子 108~111ページ

 講演の最後に、質疑応答を受けることになった時のことです。「質問のある方は?」と申しましたら、男の方が一人手を挙げて、こう尋ねました。
 「私はマザーをとても尊敬していますが、一つわからないことがあってお伺いします。マザーのいらっしゃるところは、たしか医療が十分ではない。医薬品、それから人手も十分でない。なのに、なぜ、その足りない薬や人手を、それをあげたら今までよりも良くなるであろう人にではなく、手を差し伸べても助からないかもしれない瀕死の人たちに与えるのですか?」
 医療には「トリアージ」という考え方があります。それは、主に大規模な災害や事故現場などで多数発生した患者に対し、限られた数の医師や医薬品を最大限に活かせるように、緊急性や重症度に応じて治療を優先する患者を決める方法です。その優先順位は、赤、黄、緑、黒という別色の紙を患者につけることでも知られています。

 医師や薬を使うのであれば、早く手当てをすれば良くなる確率の高い人を優先するという考え方に私も納得していましたので、この質問へのマザーの答えを私もお聞きしてみたいと思いました。
 すると、マザーはわりにきびしいお顔でおっしゃいました。
「I don't think so.私はそうは思わない」
 そしてこう続けられたのです。
「私のところに連れてこられる人たちというのは、まず、望まれずに生まれてきた人たちが多いのです。母親が中絶するお金も、代わりに育ててくれる人を捜すあてもなく、育てる手立てを見つけることができないまま、産み捨てられた子どもたちです。
 そして、生きているあいだじゅう、『邪魔だ、汚い、臭い』と言われて、居場所もなく阻害された人たち。あげくの果てに病気になり、臨終が近くなっても誰も診てくれません。
 だから私たちは連れて帰るのです、その死を待つ人たちを私たちの家に。
 今まで飲んだこともない薬を与えられ、今まで一度も感じたことのない優しさで包まれ・・・・・やがて死にゆく時が訪れると、ほとんどの人が、『Thank you.ありがとう』と言って逝くのです。中には笑顔さえ浮かべて逝く人もいるのですよ」

 愛されずに
 一生を終えようと
 している人を
 愛で包む。


  生まれてはじめて貴重な医薬品と手厚い看護を与えられた人は、恨み言ではなく、感謝の言葉と笑顔を見せてくれる。