国府弘子ライブ 於)STB139(六本木)
STB139は、東京六本木にあるレストランだ。様々なミュージシャンの生演奏を聞きながら食事をする。煉瓦造りの建物はいかにもシックな印象がして、音楽の生演奏に相応しい。
国府弘子のライブは毎回驚かされる。一度目は、宇崎竜童の素顔と本音をしり、二度目は、コンビを組んでいる岩瀬立飛(ドラムス)がピアノの名手であることを知った。毎回驚きと感動があるので、息の電車の中でも、思わず表情が緩むのがわかる。
ライブは、何時もの通り、二部構成だった。
第一部。ジャズをはじめ、ビートルズのナンバーを、おそらく国府が編曲したのだろう。次々と演奏する。この頃涙腺が弱くなった僕は今回も泣いてしまった。国府弘子(ピアノ)、八尋洋一(ベース)、岩瀬立飛(ドラムス)のコンビが最高だ。演奏中、お互いの音をよく聞いている。その表情が尊敬の眼差しだ。三人が三人とも一流のミュージシャンだから、当たり前といえば当たり前だが、その真剣さは感動ものだ。
国府弘子はいつもの様に、軽快なトークで観客を笑わせたが、演奏中の彼女の二の腕は、筋肉がピクピクしている。顔は笑っているが、「腕は壮絶な戦いをしている」と思った。そして三人が、演奏中笑顔でいるのが、印象的だ、音楽を楽しんでいる。おそらく蔭では、懸命の練習をしているのだろうが、それを観客には見せない。これがプロというものだろう。
ドラムスの岩瀬立飛。普通ドラマーというのは、演奏の最中に後ろから見られるのを嫌うそうだ。理由は技を盗まれるからだ。ところが彼は、後ろからの映像を撮って、無料動画サイトに公表していると言う。若いドラマーに技を伝えたいそうだ。こういう事も一流なればこそ出来るのだろう。「盗めるのなら、どんどん盗め。俺を越えて見ろ」岩瀬立飛の顔がそういっているように思えた。
第二部。まず、普段はドラムスの岩瀬立飛が、ピアノを披露。満場の拍手を受けた。そして、民謡歌手の木津茂理との共演。洋楽と邦楽の共演だった。ピアノ、ピアニカ、ベース、ドラムス、和太鼓、三味線、民謡の独唱。これらが一丸となって、見事に一つの世界を作っていた。リズムも音程も異なるものを見事に統一していた。それぞれの演奏者が一流なればこそ出来ることなのだろう。
「民謡は日本のソウルミュージックです。」と国府は言う。そういえばフォークギターの名手が、尊敬するギタリストとして、津軽三味線の高橋竹山を挙げていたのを思い出した。一流の音楽に国境はない。
そして、これが僕にとって一番大きかったのだが、「芸術というのは人を感動させるもの」というのを、毎回のライブで確認させてもらっている。これは短歌にも共通することだろう。
感動のあまり、涙を拭いたハンカチを席に置いて来てしまった。
