短歌研究社の「短歌年鑑」に五首首えらばれた「短歌」に寄稿した六首からのもの。いずれも「相聞」だった。・汝(なれ)はいま大人の表情見せたりき紫式部のいろ淡き日に・舗道(しきみち)を踏みしめ歩く真昼間に奈美の言葉を思いいずるも・夜の道に吹き寄せられし落葉踏み乾ける音が夜道に響く・わが心すさんでいるのがありありと会話の中にあらわれ悲し・氷雨降る駅のホームに汝(なれ)を待つ別離を告ぐる言葉さがして【奈美と . . . 本文を読む
今年は「相聞」を三首出詠した。・お互いの呼吸のさまを感じつつ峠に立ちて琵琶湖見下ろす・住み慣れぬ異国の地にて暮らし居る女(おみな)二人を愛おしむわれは・汝(なれ)はいま大人の表情見せたりき紫式部のいろ淡き日に 難解ではなかろう。知り人を思いやる三首だ。 相手が男女どちらでも、年齢に関わらず「相手を思いやる」のが「相聞」である。 . . . 本文を読む
「星座α」は30号を記念して「誌上歌会」を掲載した。それへの僕の出詠歌。・戦場に迫れる小さき村にいて祈るのみぞとマリは伝え来 LINEを使うようになって、知人が増えた。その中に、戦場で医療に携わる人もいる。 毎夜毎夜、爆撃があるという。非戦闘員なので。「祈る」のが唯一の手段。 これは「相聞歌」であり「社会詠」である。 . . . 本文を読む
・眩しかる舞台の上のダンサーは憂い漂わせ裾るがえす 知人のフラメンコの舞台を幾たびも見た。フラメンコは流浪の民の楽曲。そのせいだろうか憂いに満ちた表情をして舞台で踊るのを見た。場所と時刻は「捨象」した。 ・会いたしと汝(なれ)よりメールが届きたり紫陽花の咲く6月の夜に 「相聞歌」。知り人から「会いたい」とメールが届いた。男女の別、時刻は「捨象」した。・報道に心の曇る一日(いちじつ)は清楚なるはな . . . 本文を読む
わが父のなし得ざりしを今われがなすは楽しき行為と言わん 「星座α」 幼いころから、父は大きな存在だった。だが今考えると、家父長的でもあり、横暴な面もあった。父は65歳で亡くなったが、僕もその年齢に近づいた。 あれぼど大きく、こえられないと思った父が出来なかったことを今僕が行っている。それも様々な分野で。これは楽しい。それを率直の詠んだの . . . 本文を読む
・戦争のありさまつぶさに見る時に意外な人より電話かかり来 ウクライナ戦争が始まった直後に詠んだ作品。僕は戦後世代だが、戦争をこれほど身近に感じたの、未だかつてない。・自らを僕と呼びたる女性歌手男の心を歌いあげたり FBを始めて友人が増えた。詩人、歌人、俳人、作家、ピアニスト、歌手、音楽家、政治家、労働運動・市民運動に関わる人。様々だがその中のひとり。・朝刊の一面に開戦の記事のありくまなく読みて丁寧 . . . 本文を読む
・出窓より街を見ながら微笑める美緒を見たりき路上のわれは・アラブ馬に頭(ず)を垂れ居たる汝(なれ)のことわれは見守る厩舎にありて・冬空を見あぐる美緒の横に立ち心あたたかしこの夜もまた・ゆらめきて色ゆたかなる羽根のごとフラメンコダンサーのドレスの裾は・冬となり毛皮の帽子を手放さずロシア生まれの若き女(おみな)は 難解歌はないと思う。読んだまま受け取っていただければよい。「アラブ馬」に関して「何でアラ . . . 本文を読む
・あたたかき秋の日差しが降りたりき二人で祭りを見たりしかの日は ・今宵また地酒を飲みて過ごしおりやや辛口の越後の酒を ・夕暮れの汝(なれ)の家より帰りゆく散りし桜の敷積む道を ・湧きあがる雲には秋があると言う汝(なれ)の瞳は青く輝く ・敷道を踏みしめ歩む真昼間に奈美の言葉を思いいずるも 相聞5首である。二首目は心理詠だが、一首目の人を思って詠んだ。三首目は北原白秋の「君かへす朝の敷道さくさきと . . . 本文を読む
・うつむきてため息をつく汝(なれ)にしてわれは言葉なく佇むのみぞ 知り人がため息をつきうつむいていた。何か人に言えない悩みがあるらしい。僕は、無言で見守るだけだった。・寝室の壁にもたれてもの思う由衣の背中に秋の日が差す 由衣が誰なのかは問題ではない。知り人が深刻なさまでうつむいていた。彼女の背中には、秋の日が静かに差していた。・山門の開かぬ扉に身を寄せてうつむく汝(なれ)は何を思うや 寺の山門に身 . . . 本文を読む
憲法九条を守る歌人の会の合同歌集に今年も応募した。合同歌集に収録された作品2首。・戦争は知らないうちに始まると母は言いたりいくたびとなく 「星座」に発表した一首。校正の場で、「星座」の尾崎主筆から「やや観念的」と言われたが。そのまま掲載された。尾崎主筆も戦争を厭うのに心は同じだ。東京大空襲の焼け跡で赤子の黒焦げの死体をまたいで避難したというはなしを何度も聞いた。・飲み込みし言葉のいくつ噛みしめて辺 . . . 本文を読む
・夕暮れに汝(なれ)の家より帰りゆく散りし桜の敷積む道を 北原白秋の「君帰す朝の敷道さくさくと雪よ林檎の香のごとく降れ」を意識した一首。相聞だが、アララギならこう詠むぞと、勢いて詠んだ一首。・逃れ得ぬジレンマ重く抱えつつ爪切ることも忘るる日々よ 心理詠である。だがこの一首は相聞と連動している。ジレンマがあるから恋をするのだ。そしてこれは相手と会う前日に詠んだ作品。・湧きあがる雲には秋があると言う汝 . . . 本文を読む
奈美との時間(3首抄)・汝(なれ)はいま大人の表情見せたりき紫式部のいろ淡き日に 奈美は匿名だが、僕よりかなり年下。まだ幼い。その表情は時に大人びてくる。その奈美とどういう関係かは問題ではない。・夜の道に吹き寄せられし落葉踏み乾ける音が闇夜に響く これは叙景歌にはいるだろうが、心理詠と考えてもらっていい。僕の心が荒んでいるのだ。・氷雨降る駅のホームに汝(なれ)を待つ別離を告ぐる言葉さがして 奈美 . . . 本文を読む
「星座α」26号:相聞5首・不意に思う悲しい思いをしていないか女(おみな)の顔を思い出しつつ 初句が6音の短歌を詠んだのは初めてだ。初句が7音のものはある。咄嗟に口からでたもので意図的なものではない。違和感がないのはそのためだろう。かえって6音で不安定な感情が表現できたかと思う。・あといくど奈々子と会える日があるか胸に秘めつつ夜空をあおぐ 奈々子はもちろん仮名。相手どういう関係かも問題 . . . 本文を読む
コロナ禍の歌・駅近く路上生活の人あふれコロナ禍の街に吹く風寒し コロナ禍の歌を詠んだことはなかった。今回の現代歌人協会の歌集に収録するのに初めて詠んだ。なぜ詠まなかったか、いや詠めなかったのだ。余りにも切迫している。身辺もあわただしい。 「星座α」の尾崎主筆が言う、「あなた方、地震の激しい揺れの中で箪笥を押さえながら歌が詠める?詠めないでしょう?」という言葉が耳に残っていたからだ。コロ . . . 本文を読む
「星座α」25号:相聞5首(抄)・夕暮れに汝(なれ)の家より帰りゆく散りし桜の敷き詰む道を 北原白秋の作品(君かへす朝の敷道さくさくと雪よ林檎の香のごとく降れ)を意識した作品。素材は同じだが、表現方法が違う。「アララギ」ならこう詠むだろう。・故国へと帰りし麗子を思う夜静かな部屋にコップ酒飲む 人名は架空。だが事実に基づいている。空想ではない。 ・人を待つあたたかき日のさす真昼遠き . . . 本文を読む