・自らの制御の出来ぬもの作り滅びてゆくかホモ・サピエンス 雁部貞夫(新アララギ) 福島第一原発。事故によりメルトダウンどころかメルトスルーを起こした。灼熱の燃料棒が原子炉の底を突き破ってしまった。安全ではなかったのか、5重の壁があったのではないか、津波は壁を越えないのではなかったか、電源喪失は起こるはずがなかったのではないか。 原子炉の底を突き破った . . . 本文を読む
・膨大に増える軍事費出る度によみがえりくる空襲のおののき 黒崎美芳・広島に特殊爆弾落されたとひそひそ話は袋田村まで 小永井嶽・戸籍なく飢え死にしたる老い人ありいまに救えぬこの国を恥づ 小林登紀 戦争体験の作品を3首挙げた。作者はもう90歳以上 . . . 本文を読む
・戦争は実はそこまで来ていると赤とんぼ空中にとどまりて言う 久々湊盈子・危機感を煽り国を憂うるポーズにて臆面もなく言う「敵基地攻撃」 津田道明・とりわけ自衛隊明記をとなえ平和憲法失せてはならじ 山本司 様々な結社(文学集団)に所 . . . 本文を読む
・どこまでが人の領域どこからが神の領域弥生11日 沖ななも「燠」 東日本大震災は自然災害である。原発対応の問題で人災とも言われるが、ここは自然災害と捉える。 震災の映像は、どれも衝撃的だった。防波堤を怒涛のように越える波、陸にのりあげた大型漁船、浜にのこった一本松、被災地に容赦なく降る雪。 自然災害ではあるが、「神の手」が働いたと感じた人も多かったことだろう。この作品 . . . 本文を読む
・あちこちで泥噴き上げてゐたりけり液状化現象わが家の周り 池田はるみ(未来) 地震による地盤の液状化現象は話に聞いたことはあった。だが身近の目の当りにするのは、あまりなかった。 新潟地震で鉄筋コンクリート造りのアパートが倒壊した写真を見たのみだった。マンホール、地割れ、下水。あらゆるところから、土砂が大量の地下水とともに、噴き出す。これが建造物の下で . . . 本文を読む
現代歌人協会編「東日本大震災歌集」より。崩壊の景に降る雪映しおり瓦礫の山に踏ん張るテレビ 秋葉静江(白南風) 東日本大震災の時の雪の映像は衝撃的だった。 地震と津波で、家を失った人々と、廃墟となった街とに、容赦なく白い雪が降る。これほど震災の被害の大きさを、実感させるものはなかった。 「朝日歌壇」にも、被災地に降り続く雪を詠った作品があった。 東日本大震災の被 . . . 本文を読む
・結界はいずこぞ妻子奪いたる青澄む海に漁師頭(ず)を垂る 青木陽子作(国民文学) 2011年3月11日の東日本大震災は12都道府県で18.425人の死者、行方不明者を出した。 掲出の一首は死者を悼む作品だ。結界とは「ある特定の場所へ災いを招かないために作られる宗教的な線引き」(注連縄や葬儀の幕がそれにあたる)。 震災に妻子を奪われた漁師。男性だがその漁師が、青 . . . 本文を読む
左翼の闘士と呼ばれる坪野哲久。プロレタリア短歌の歌人としても知られています。その作者が戦争中に友人の出征を歌った作品があります。昭和15年【1940年)に刊行された歌集に収録された作品です。 . . . 本文を読む
齋藤茂吉と並ぶ近代短歌の大家、釈迢空。戦死した若者を悼む歌を残しています。戦時中は表立って戦争に反対することはありませんでしたが、内心では戦争に反対し、弟子筋の歌人によく話したそうです。迢空の弟子筋の歌人に、社会派の歌人が多い理由でもありましょう。 . . . 本文を読む
折口信夫(釈迢空)の最後の弟子。岡野弘彦。戦争を体験したこの歌人が、アメリカによる、空爆下のバグダッド市民に心を寄せた作品を、一冊に収録した歌集を出版しています。それが『バグダッド燃ゆ』です。 . . . 本文を読む
石川啄木の親友として知られる土岐善麿。若い時は土岐哀果という筆名を使っていました。早稲田大学で教鞭をとっていたとき、早稲田短田短歌会の指導にもあたり、篠弘の師としても知られています。その善麿が、戦後の新時代を短歌に詠みました。当時の人びとの気持ちを知る、手懸りになります。 . . . 本文を読む
朝日歌壇の選者だった島田修三。宮柊二に師事しましたが、みずからの結社も創立しました。そんな彼は、海軍兵学校の生徒でした。将校の予備軍だったのです。「兵士になる」ということは「人を殺す」ことを覚悟する」ことです。この記憶が作者の脳裏からはなれなかったのでしょう。そんな心情を表現した短歌を御紹介します。 . . . 本文を読む