岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

短歌研究が選んだ五首:作品自註

2022年12月19日 01時03分36秒 | 岩田亨の作品紹介
短歌研究社の「短歌年鑑」に五首首えらばれた「短歌」に寄稿した六首からのもの。いずれも「相聞」だった。・汝(なれ)はいま大人の表情見せたりき紫式部のいろ淡き日に・舗道(しきみち)を踏みしめ歩く真昼間に奈美の言葉を思いいずるも・夜の道に吹き寄せられし落葉踏み乾ける音が夜道に響く・わが心すさんでいるのがありありと会話の中にあらわれ悲し・氷雨降る駅のホームに汝(なれ)を待つ別離を告ぐる言葉さがして【奈美と . . . 本文を読む

飛翔する鳥の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月18日 21時42分48秒 | 多摩高20期同窓会
・望まざる地上の戦史みおろして飛翔する鳥または魂 2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ 先ずは「戦史」東京大空襲で、赤子の死体を跨いで避難したという作者ならではの視点。 地上の「場所」鳥の「種類」の「個別具体的」なものは表記されて佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、さ作者の言う「言葉の削ぎ落し」。第一・下の句への転換は「転」「急」である。第二・「起承転結」の初句は「起」二句か . . . 本文を読む

春玉葱歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月17日 23時23分08秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・独りよりふたリはよしと春玉葱のスープ盛りつつ言葉はいはず「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ「ひとり」の表記に「独り」が使われているのにまず注目した、作者はそれほど孤独だったのだろうか。「短歌を『戦い』という作者ならありうる。またこの作品は「相聞」である。「相聞」はパートナーだけではない。知り人への「思いやり」の歌だ。 相手の「名前」、スープ . . . 本文を読む

孔雀の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月16日 23時29分57秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・炎天の檻に飼はるる孔雀ゐて檻を宇宙なしたる威厳「尾崎左永子八十八歌」所収2015年開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 どこに飼われているのか「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。  佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 上の句から下の句への転換は「転」「急」だ。 第一、初句が「起承転結」の「起」、二句が「承」、下の句への転換は「転」下の句全体が . . . 本文を読む

霊(こころ)の力のうた:尾崎左永子の短歌

2022年12月15日 18時00分04秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・かまくらや草木蟲魚もろもろの霊(こころ)の貸したまへわれに 「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。 「結句」が印象的が「結句で勝負せよ」と言う作者らしい作品だ。 上の句全体が「起承転結」の「起」「序破急」の「序」であり下の句への転換は「転」「破」である。                                                         . . . 本文を読む

幼のこゑの歌:佐藤佐太郎の短歌

2022年12月14日 18時00分35秒 | 佐藤佐太郎の短歌を読む
・さわだちて林をおほ風の下ひと日幼のこゑを憐れむ「アンソロジー海」所収。 この作品には自註がある。 「八月の数日山中湖畔のくさや(源本は漢字)にすごしたときの作。林中の小屋だから風の日は騒がしい。風音に対して幼女の声はやさしい。だから「憐れむ」といった。「ひと日」は一日だが軽く或る日くらいに受け取ってもらっていい。」 山中湖畔で詠った作品だが「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。また「幼」 . . . 本文を読む

蘇鉄の赤き実の歌:佐藤佐太郎の短歌

2022年12月13日 17時51分00秒 | 佐藤佐太郎の短歌を読む
・高倉の床に蘇鉄の赤き実を干せり古代の風ふくところ 「アンソロジー海雲」所収。 この作品には自註がある。「安木屋場という部落に着くと、高倉という床の高い建物があった。南方系の様式で、日本の古代をしのばせる。床に蘇鉄の実が乾してあった。紬を織る機の音が聞こえていた。」  これは佐藤佐太郎50歳の5月に奄美大島で詠んだ作品だ。  奄美大島の高倉の復元家屋を見たことがある。方形の高床式倉庫で農作物を乾燥 . . . 本文を読む

夕かげりの歌:佐藤佐太郎短歌

2022年12月12日 18時27分18秒 | 佐藤佐太郎の短歌を読む
。青々と晴れほとほりたる中空(なかぞら)に夕かげり顕つときは寂しも「アンソロジー海雲」所収。『群丘』 この作品には自註がある。「冬の晴れた夕空に影のやうなもの見えることがある。底もなく晴れた青空に見えるのを私ははじめて注意して一首にした。森鷗外の『大発見』といふ小説があるが私にとってかういうものも発見であった」 短歌は抒情詩だが「発見」が必要と「運河の会」でよくいわれた。年を重ねても発見はたえずあ . . . 本文を読む

独りのむ酒の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月11日 18時08分53秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・独りのむ五勺の酒にありありと花ある過去に還りなんいま「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「五勺の酒」とは「一合」の半分だ。作者は日本酒を好む。僕も何度かお相伴したが、料理には必ず日本酒が伴っていた。量は多くない。味の良い日本酒を少量呑む。ある歌人の話では、「飲み方」が洒落ているそうだ。 その酒を呑みながら「花ある過去に還ろう」という。年齢を . . . 本文を読む

残雪の富士の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月10日 21時02分24秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・残雪の富士の片身が昏れてゆく車窓に渾身の一日が終わる・「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「車窓」は新幹線だろうかその「個別具体的」な「こと」は「捨象」されている。佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 また、下の句への転換は「序破急」の「破」、「始承転結」の「転」。つまり、上の句全体が「序」、下の句への転換は「破」、下 . . . 本文を読む

花の香の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月09日 23時49分42秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・影のごとつき(原作は漢字表示)くるものは人ならず闇に沈丁の香を曳く「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この時点の代表歌だ。「美しい叙景歌」だ。「沈丁」は「沈丁花」のこと。咲いている「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。また。上の句から下の句への転換は「序破急」の「破」、「起承転結」の「転」つま . . . 本文を読む

遠白波の歌:斎藤茂吉の短歌

2022年12月08日 18時10分04秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
・まかかよふ真夏なぎさに寄る波の遠白波の走るたまゆら「あらたま」所収。この作品には「佐藤佐太郎の『茂吉秀歌』」、「塚本邦男の『茂吉秀歌・あらたま』、長澤一作の「斎藤茂吉の秀歌」にも記載はない。 しかし僕には印象的な作品だ。「遠白波」という造語に惹かれるのだ。斎藤茂吉の作品には「造語」がいくつかある。「逆白波」「遠のこがらし」。「造語」を作れるのは、言葉にたいする「感性」が敏感なのだ。「美しい叙景歌 . . . 本文を読む

さくらの散る歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月07日 18時57分34秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・とどろきて風過ぎしかば一呼吸おきてさくらはゆるやかに散る「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「美しい叙景歌」だ。さくらの散る「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 また、上の句から下の句への転換は、「序破急」の「破」、「起承転結」の「転」である。次に「初句」が「起」承転結」 . . . 本文を読む

高速路の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月06日 18時28分44秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・高速路の下の運河に雪の積む舟いくつありこの年の冬「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 作者は「運河」を頻繫に詠む。「運河の会、にはいっているからではない」と度々言うが、「運河」には「都市の抒情」がある。 「高速路」の「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。「美しい都市詠」だ。 . . . 本文を読む

如是我聞の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月05日 16時36分33秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・如是我聞黒つぐみ啼くから松の風の動きに何を知るべき「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 初句の「如是我聞」とは「自分はこのように伝え聞いている」の意。 「風の動きに何かを知る」と伝え聞いたのだろうか。 「から松」の「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 作者は博学だ。短歌はもちろん . . . 本文を読む