岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

春玉葱歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月17日 23時23分08秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・独りよりふたリはよしと春玉葱のスープ盛りつつ言葉はいはず「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ「ひとり」の表記に「独り」が使われているのにまず注目した、作者はそれほど孤独だったのだろうか。「短歌を『戦い』という作者ならありうる。またこの作品は「相聞」である。「相聞」はパートナーだけではない。知り人への「思いやり」の歌だ。 相手の「名前」、スープ . . . 本文を読む

孔雀の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月16日 23時29分57秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・炎天の檻に飼はるる孔雀ゐて檻を宇宙なしたる威厳「尾崎左永子八十八歌」所収2015年開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 どこに飼われているのか「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。  佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 上の句から下の句への転換は「転」「急」だ。 第一、初句が「起承転結」の「起」、二句が「承」、下の句への転換は「転」下の句全体が . . . 本文を読む

霊(こころ)の力のうた:尾崎左永子の短歌

2022年12月15日 18時00分04秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・かまくらや草木蟲魚もろもろの霊(こころ)の貸したまへわれに 「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。 「結句」が印象的が「結句で勝負せよ」と言う作者らしい作品だ。 上の句全体が「起承転結」の「起」「序破急」の「序」であり下の句への転換は「転」「破」である。                                                         . . . 本文を読む

独りのむ酒の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月11日 18時08分53秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・独りのむ五勺の酒にありありと花ある過去に還りなんいま「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「五勺の酒」とは「一合」の半分だ。作者は日本酒を好む。僕も何度かお相伴したが、料理には必ず日本酒が伴っていた。量は多くない。味の良い日本酒を少量呑む。ある歌人の話では、「飲み方」が洒落ているそうだ。 その酒を呑みながら「花ある過去に還ろう」という。年齢を . . . 本文を読む

残雪の富士の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月10日 21時02分24秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・残雪の富士の片身が昏れてゆく車窓に渾身の一日が終わる・「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「車窓」は新幹線だろうかその「個別具体的」な「こと」は「捨象」されている。佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 また、下の句への転換は「序破急」の「破」、「始承転結」の「転」。つまり、上の句全体が「序」、下の句への転換は「破」、下 . . . 本文を読む

花の香の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月09日 23時49分42秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・影のごとつき(原作は漢字表示)くるものは人ならず闇に沈丁の香を曳く「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この時点の代表歌だ。「美しい叙景歌」だ。「沈丁」は「沈丁花」のこと。咲いている「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。また。上の句から下の句への転換は「序破急」の「破」、「起承転結」の「転」つま . . . 本文を読む

さくらの散る歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月07日 18時57分34秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・とどろきて風過ぎしかば一呼吸おきてさくらはゆるやかに散る「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「美しい叙景歌」だ。さくらの散る「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 また、上の句から下の句への転換は、「序破急」の「破」、「起承転結」の「転」である。次に「初句」が「起」承転結」 . . . 本文を読む

高速路の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月06日 18時28分44秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・高速路の下の運河に雪の積む舟いくつありこの年の冬「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 作者は「運河」を頻繫に詠む。「運河の会、にはいっているからではない」と度々言うが、「運河」には「都市の抒情」がある。 「高速路」の「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。「美しい都市詠」だ。 . . . 本文を読む

如是我聞の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月05日 16時36分33秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・如是我聞黒つぐみ啼くから松の風の動きに何を知るべき「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 初句の「如是我聞」とは「自分はこのように伝え聞いている」の意。 「風の動きに何かを知る」と伝え聞いたのだろうか。 「から松」の「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 作者は博学だ。短歌はもちろん . . . 本文を読む

うそ鳥の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月04日 18時29分32秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・うそ鳥はさくらのつぼみを食むというわれは菜の花の色わかきを食む「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。上の句から下の句への転換は、「序破急」の「破」、「起承転結」の「転」だ。 「華麗なる歌」ここに作者の独自性がある。これは余人を寄せ付けま . . . 本文を読む

曇天の野茨の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月03日 22時50分45秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・地にもどる掟拒みて曇天の野茨の実は冬を超えたり「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。初句が印象的。植物の果実は、大地に戻り子孫を増やす。それを「自然の掟」と捉えて、野茨が、その「掟」を「拒む」と作者は捉えた。いかにも作歌を「闘い」と捉えた作者らしい作品だ。「個別具体的」な「場所」「時刻」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作 . . . 本文を読む

風の隼の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月30日 18時59分42秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・ひとたびは空駆けのぼり直線に敵ふくす(原作は漢字表記)べし風の隼「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年の「色紙展」の出品作。この段階の代表歌だ。 「風の隼」は鳥類の「風に羽ばたく隼」だろうか。上の句の勢いが効いている。「敵ふくすべし」は歌壇で闘ってきた作者の「自己投影」だ。 とにかく作者は自分の作品には厳しい批評眼を持っている。そんな作者の作歌姿勢がわかる作品。また「個別具体的」な場所は「捨象」 . . . 本文を読む

あぶら菜の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月29日 00時11分24秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・あぶら菜に似る黄の花を踏みしだきわれは天空の下の一点「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「あぶら菜に似る黄の花」の「個別具体的」な植物名は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。「天空の下の一点」という「結句」が効いている。「結句で勝負せよ」と言う作者だが、それを実現した一首である。また、上の句から . . . 本文を読む

雨の日の桜の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月27日 21時25分01秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・雨の日のさくらはうすき花びらを傘に置き地に置き記憶にも置く「尾崎左永子八十八歌」所収 2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。 「花びら」を主語とした擬人法だが違和感がない。それは下の句のリフレインの効果だろう。「擬人法」はわざとらしく、また俗になりやすい。リフレインの心地よさが、それを帳消しにしている。ここは極めてうまい。「短歌の90%は技術だ」と作者は佐藤佐太郎に言わ . . . 本文を読む

立春の歌:尾崎左永子の短歌

2022年11月27日 00時06分51秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・立春の日を浴みゐたり目に見えぬ花を心に蓄ふるごと「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。「目にみえぬ花」とはなにか。「個別具体的」な花の名は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。 「目に見えぬ花を心に蓄える」という表現は幻想的だ。「幻想歌」と名づけようか。 佐藤佐太郎に学びながら、全く異なる「感受」。 . . . 本文を読む