岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

短歌・日本語・斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・社会・歴史について考える

遠白波の歌:斎藤茂吉の短歌

2022年12月08日 18時10分04秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
・まかかよふ真夏なぎさに寄る波の遠白波の走るたまゆら「あらたま」所収。この作品には「佐藤佐太郎の『茂吉秀歌』」、「塚本邦男の『茂吉秀歌・あらたま』、長澤一作の「斎藤茂吉の秀歌」にも記載はない。 しかし僕には印象的な作品だ。「遠白波」という造語に惹かれるのだ。斎藤茂吉の作品には「造語」がいくつかある。「逆白波」「遠のこがらし」。「造語」を作れるのは、言葉にたいする「感性」が敏感なのだ。「美しい叙景歌 . . . 本文を読む

赤茄子を詠う:斎藤茂吉の短歌

2022年07月18日 09時54分43秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
・赤茄子の腐れてゐたるところより幾程もなき歩みなりけり 「赤光」所収。 「赤茄子」はトマトの旧称。作者は道を歩いている。おそらくは道端に腐ったトマトが転がっていた。潰れていたかも知れぬ。 そこを通り過ぎて、程なく、作者は何らかの感慨を受けた。どのような感慨か。それは作者にも判然としなかったらしい。  斎藤茂吉の「作家40年」のなかでも「何らかの」と述べるにとどめている。 だがこの不思議な . . . 本文を読む

斎藤茂吉『赤光』の作品を巡って(歌人に問われているもの)

2014年12月19日 23時59分59秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
斎藤茂吉の第一歌集『赤光』。茂吉の代表歌集ですが、この歌集の作品や、詠風を巡ってしばしば、議論となります。詩人も、この歌集の作品を、評価していますが、歌人の言い様と、詩人の評価が、必ずしも一致しません。これは詩人から、歌人への問いかけ、問題提起と思います。 . . . 本文を読む

齋藤茂吉の戦争詠の一側面:15年戦争の歌

2014年04月12日 23時59分59秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
斎藤茂吉は戦時中の言動を問われて、敗戦後、歌壇の一線から退きました。戦争を煽ったからです。私はこれを「茂吉の負の遺産」と考えています。このことは、『斎藤茂吉と佐藤佐太郎』の中で叙述しました。いずれ、評論として纏める積りですが、ここで少し試論を書きたいと思います。 . . . 本文を読む

「赤光」の「狂人守」をめぐって

2013年12月23日 23時59分59秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
「赤光」は、言わずと知れた、斉藤茂吉の代表歌集です。この歌集に「狂人守」の一連があります。斎藤茂吉が精神科医としてかかわった患者たちを詠んだものです。この「狂人守」という言葉が差別であるというとんでもない事を論じているブログがありました。まるで「言葉狩り」のような論述には賛成できません。 . . . 本文を読む

行く春の歌:斎藤茂吉の短歌

2012年05月10日 23時59分59秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
斎藤茂吉の第12歌集「寒雲」。日中全面戦争が始まった年からの作品が収められていますが、戦争詠以外に叙景歌のすぐれたものや、連作の実験的なものがあり、見るべき作品が多くあります。まだ戦争一色ではなかったのです。いわば茂吉の作品のうち、戦中の良質な部分といえましょう。 . . . 本文を読む

春の暮方の歌:斎藤茂吉の短歌

2012年04月13日 23時59分59秒 | 斎藤茂吉の短歌を読む
「寒雲」は斎藤茂吉の第12歌集ですが、次男の北杜夫が高校時代いたく感動たと言います。そして、「大学進学にさしさわりがあるから、短歌作りはやめよ」と茂吉から言われるまで作歌を続けたそうです。あまり一般には知られていませんが、「『暁紅』における抒情的色調は・・・次第に安定の状態に到っている」と岩波文庫の解説にあるとおり、見るべきものがある歌集です。戦争詠がなければ、もっと評価が高かったでしょう。そこから春を詠った作品を選びました。・・・ . . . 本文を読む