岩田亨の短歌工房 -斎藤茂吉・佐藤佐太郎・尾崎左永子・短歌・日本語-

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独りのむ酒の歌:尾崎左永子の短歌

2022年12月11日 18時08分53秒 | 尾崎左永子(長澤一作・川島喜代詩)の短歌を読む
・独りのむ五勺の酒にありありと花ある過去に還りなんいま

「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。

「五勺の酒」とは「一合」の半分だ。作者は日本酒を好む。僕も何度かお相伴したが、料理には必ず日本酒が伴っていた。量は多くない。味の良い日本酒を少量呑む。ある歌人の話では、「飲み方」が洒落ているそうだ。

 その酒を呑みながら「花ある過去に還ろう」という。年齢を重ねても十分「花」があると思うのだが、若いころはもっと「花」があったのだろうか。

 結句の「還りなんいま」は漢詩の「帰りなんいざ」を意識しているのだろう。

 この作品にも「起承転結」「序破急」がある。
 また呑んでいる「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。

 「結句で勝負せよ」という作者だが、結句が印象的な作品だ。


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