・独りのむ五勺の酒にありありと花ある過去に還りなんいま
「尾崎左永子八十八歌」所収。2015年に開催された「色紙展」の出品作。この段階での代表歌だ。
「五勺の酒」とは「一合」の半分だ。作者は日本酒を好む。僕も何度かお相伴したが、料理には必ず日本酒が伴っていた。量は多くない。味の良い日本酒を少量呑む。ある歌人の話では、「飲み方」が洒落ているそうだ。
その酒を呑みながら「花ある過去に還ろう」という。年齢を重ねても十分「花」があると思うのだが、若いころはもっと「花」があったのだろうか。
結句の「還りなんいま」は漢詩の「帰りなんいざ」を意識しているのだろう。
この作品にも「起承転結」「序破急」がある。
また呑んでいる「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。佐藤佐太郎の言う「表現の限定」、作者の言う「言葉の削ぎ落し」。
「結句で勝負せよ」という作者だが、結句が印象的な作品だ。