・さわだちて林をおほ風の下ひと日幼のこゑを憐れむ
「アンソロジー海」所収。
この作品には自註がある。
「八月の数日山中湖畔のくさや(源本は漢字)にすごしたときの作。林中の小屋だから風の日は騒がしい。風音に対して幼女の声はやさしい。だから「憐れむ」といった。「ひと日」は一日だが軽く或る日くらいに受け取ってもらっていい。」
山中湖畔で詠った作品だが「個別具体的」な「場所」は「捨象」されている。また「幼」の名や作者のとの関係も「捨象」されている。
佐藤佐太郎の言う「表現の限定」だ。「夏の一日」が鮮明に詠われている。