今年は戦後70年だ。だが政治の世界では大変な事が起こりつつある。ファシズムの脅威が迫っているともいえる。かつてなく日本が戦争の当事者となる危険が高まっている。
9月19日に成立した安全保障関連法。戦争法と呼ばれる。憲法学者、弁護士、最高裁長官経験者、歴代の内閣法制局長官がこぞって憲法違反だという法律を安倍内閣は成立させた。
この法律の制定理由の正当性はもはや存在しない。安全保障環境の変化と首相は言った。だがその具体的変化として挙げられたものはすべて根拠をうしなった。
「ホルムズ海峡の機雷封鎖」。名指しで危険だとされていたイランがアメリカと手打ちをしてしまった。「海外の在留邦人が危険にさらされたときに日本人が乗ったアメリカの艦船を自衛隊が守る」。これは国会の審議のなかで否定された。最後に出て来た「中国脅威論」。これは戦争法の最初の適用が南スーダンであることで、根拠がないのが明らかになった。
南スーダンには中国の石油の利権がある。その利権を守るのに南スーダンに中国人民解放軍がPKOで展開している。その中国軍の展開する地域に「後方支援」「かけつけ警護」に自衛隊が派遣されるのだ。これは日中の共同作戦に他ならない。また中国の貿易の相手国の一位、二位はアメリカ、日本だ。この中国が攻めてくるというのはデマに近い。政権の放ったプロパガンダだ。
この法律は立憲主義と民主主義、憲法の平和主義に反している。多数決と民主主義は=ではない。議会で多数をしめていても、全権を委任しているわけではない。白紙委任でもない。また時の多数派がつねに正しいとは限らない。そこで多数の横暴を防ぎ民主主義を担保するのに立憲主義があるのだ。多数派も憲法を逸脱した政治運営、憲法を逸脱した法律を制定してはならない。「立憲主義は専制君主の時代の考え方だ」という首相の言い分は間違っている。
つまり民主主義、立憲主義、平和主義が脅かされているのだ。
フランスでテロがあった。多くの死傷者が出た。テロは許しがたい。だが戦争でテロはなくせない。戦争や空爆でテロが無くせるなら、アメリカ、フランス、イギリスといった軍事大国のテロは根絶されているはずだ。戦争は新たなテロを誘発する。テロの根絶には、テロ組織の資金源を断つ、テロ組織に新たな人材が加わるのを防ぐ、テロの温床となる国際的な不平等、貧困、差別をなくすために国際社会が共同行動をすることが必要だ。
テロを理由に、戦争法を正当化したり、憲法に非常事態条項を入れるのは許されない。非常事態条項は自民党の改憲案によれば、非常事態が宣言されると、内閣の一存で法律に変わる政令が作れる。法律、議会が停止させられる。そして基本的人権が禁止される。これは戒厳令であり、ナチスの全権委任法に匹敵する。
この動きを黙視はできない。「戦争法」が国会に上程されたとき、僕は生涯一度の意思表示をしたが、この意思表示はこれから長期間にわたって続くだろう。
(続く)