ペンギン保護、サラリーマンのような習性を利用
逃亡生活はあっけなく終了――。東京都江戸川区の都立葛西臨海水族園から今年3月に逃げ出したフンボルトペンギンが24日、同園から北東9キロの江戸川付近で保護された。
東京湾で80日余りにわたって自由を謳歌(おうか)していたはずのペンギンが、なぜあっさり捕まったのか。識者は、フンボルトペンギンの「習性」がカギと指摘する。
午後10時30分過ぎに同園が開いた記者会見では、冒頭に保護された脱走ペンギンが公開された。オリに入れられておびえた様子だったが、ケガなどはないという。
同園によると、この日昼前に江戸川の行徳橋周辺で目撃情報が複数寄せられ、職員2人が現場に急行。午後4時20分頃、河川敷で休んでいるところを 近づいたが、気付いたペンギンは川の中に姿を消した。しかし、約1時間後に反対岸に上がったところを、今度はゆっくり距離を詰め、最後は素手で取り押さえ た。ペンギンは無抵抗だったという。
逃走したペンギンはこれまで、江戸川から東京湾・晴海付近など広い範囲で目撃されており、湾内を自由に行き来していたという。ただ時速30キロで泳ぐペンギンを海中で捕獲するのは困難とみられていた。
研究者らでつくる「ペンギン会議」(千葉県船橋市)の上田一生研究員によると、フンボルトペンギンは早朝、海に出て魚を取り、日没後に陸上のねぐらに戻るという規則正しい「サラリーマンのような生活」が特徴。こうした習性が今回の捕獲劇につながったとみられる。
東京湾はエサとなる小魚も多く、天敵のサメやアザラシなどもいないが、湾内は船の往来も多く「スクリューに巻き込まれてケガをする恐れもある」。 陸では野良猫に襲われる可能性もあり、上田さんは「東京でペンギンが一人ぼっちで生き延びるのには危険が多すぎる。保護されて良かったのでは」としてい る。