原発20キロ圏内、人の気配なく=牛や犬徘徊、壊された自販機
時事通信 4月6日(水)14時25分配信
福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)から20キロ圏内に避難指示が出されてから約3週間。避難生活が長期化する中、「ひと目わが家を見たい」「大切な ものを取ってきたい」と、危険を承知で一時帰宅する人が相次いでいる。そこで目にする光景は、変わり果てたふるさとの姿だった。
第1原発10キロ圏内の富岡町。左官をしていた男性(47)は、夜中に友人の車で避難先の同県郡山市から自宅へ向かった。体がすっぽり隠れる雨がっぱに ゴム手袋、マスク2枚を重ねて着けた。途中で警察官2人から「どちらへ」と尋ねられ、30キロ圏外の村の名前を挙げて「家畜に餌をやりに」と答えて切り抜 けた。
町にたどり着くと、人の気配はなく、牛や犬が徘徊(はいかい)していた。「真っ暗で怖かった。みんな、死んじゃうから放したんだね」とぽつり。自宅から は健康保険証や息子の写真を持ち帰った。「放射線は目に見えないから怖い。でも、大切なものは全て家に置いてきた。できればもう一度戻りたい」と話す。
一方、郡山市に避難している自営業の男性(48)は、第1原発20キロ圏に入る葛尾村の自宅に3回、荷物を取りに戻った。「外に人が歩いている姿はな かった。店は閉まっていて、自動販売機は壊されていた」と振り返る。男性は自宅から戻るたびに被ばく状況調査(スクリーニング)を受けている。それでも 「たまには家の様子を見たい」とつぶやいた。
こうした動きに対し、福島県は20キロ圏内への一時帰宅の自粛を呼び掛けている。放射能で汚染された可能性のある物品を持ち出すことで、さらなる汚染の広がりが懸念されるためだ。県は国に対し、立ち入りを強制的に制限できる警戒区域の設定も要請している。
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