「偽装出生」氷山の一角 大半が中国人 子どもは出国
偽装結婚した外国人の女が、子どもに不法に日本国籍を取得させる「偽装出生」の摘発に、警視庁が苦心している。大半は中国人で子どもを帰国させて いるケースが多く、立証に必要なDNA型鑑定が壁となり、摘発は容易ではない。捜査関係者は「摘発は氷山の一角で、広がる恐れがある」と警戒を強めてい る。 (山内悠記子)
警視庁組織犯罪対策一課は二〇一〇年十月、中国人女=当時(28)=と日本人男=当時(51)=が偽装結婚したとして、電磁的公正証書原本不実記録・同供用容疑で二人を逮捕した。
同課によると、二人は〇七年三月に大田区役所に婚姻届を提出。その四カ月後、女は、荒川区内で同居していた中国人の男=当時(28)=との間に生まれた女児を、日本人男との嫡出子として届け出た。
日本人男は出産育児一時金三十五万円と児童手当を年間六万円、詐取。中国人女は、当初「留学」の短期在留資格だったが、偽装結婚で「日本人配偶者」の在留資格を得て働き、実際には中国人男と親子三人で生活した。
三年後、偽装結婚の摘発を機にDNA型鑑定した結果、日本人男と子どもの間に親子関係がないと立証され、中国人女と日本人男は偽装出生で摘発された。
偽装出生では、うその出生届を出したことが法律に違反し、偽装結婚の場合と同じく電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪となる。
捜査関係者は、偽装出生は資格のない外国人が日本で長く働き続けるための手段とみる。法務省によると、外国人の女が、偽装結婚を解消しても、日本 人の子どもの親として「定住者」の資格を得て長期在留ができる。さらに、中国人の女が子どもの実父の中国人の男と再婚すれば、実父も養育を考慮して「定住 者」の資格が得られるケースもある。
しかし、偽装出生の摘発には困難が多い。偽装結婚の摘発が前提だが、時効は五年間。母親が働きやすくするため、日本国籍を取得した子どもを本国の祖父母らの元に帰国させるケースも多く、親子関係の立証に必要なDNA型鑑定ができない。
こうしたハードルを越え、警視庁は〇六年以降計十一件の偽装出生を摘発。うち九件は中国人だった。
警視庁幹部は「以前摘発した中国人の偽装結婚では、日本国籍の女児を福建省に帰国させていた。子どもが出国していて摘発できなかったケースは摘発できた件数よりはるかに多い」と指摘する。
捜査関係者は「容疑者の調べで、福建省などに偽装出生で日本国籍を持った中国人の子どもが、多くいるとみている。一人っ子政策の中、働き手が必要な農村部では、日本国籍の子どもが重宝しているという話も聞いた」と言う。
偽装出生を摘発するには偽装結婚を摘発するしか手はなく、捜査幹部は「引き続き摘発に取り組む」と話している。
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